9月末から10月上旬にかけて、2週連続で有機農業関連の展示会を視察した。「BIOFACH JAPAN2025」(9月26日~28日)と「オーガニックライフスタイルEXPO(OLE2025)」(10月2日~4日)である。久々に2つの有機農産物の展示会を視察することにしたのは、花き業界でも、資源多投入型の施設栽培が後退して、環境に優しい露地栽培が増えていることの背景を考えてみたいと思ったからである。
BIOFACHの主催者は、ドイツの会社「ニュールンベルグ・グループ」である。日本以外では、ドイツや中国などでも展示会が開催されている。一方、OFJが主催者のライフスタイルEXPOは、今年で10年目を迎える。わたしの友人たち(秋元一宏氏と徳江倫道氏)が中心となって、国内の若手有機農家と加工業者を組織して始めた展示会である。
どちらの展示会も盛況である。遅ればせながら、日本の有機農産物市場が緩やかに拡大しているからである。大手量販店のイオングループとライフコーポレーション(以下、ライフ)が本格的に有機農産物を取り扱い始めたのが10年前である。2016年に、イオンがオーガニック業態の「ビオセボン」を出店した。2023年で、27店舗に店舗網が拡大している。
同じ時期に、ライフは、大阪で「ビオラル」の出店を開始した。ビオラルは厳密な意味でのオーガニック業態ではないが、“ナチュラル、ローカル、サステナブル”を標榜している。ライフは店舗数を増やすこと(現在3店舗)より、ビオラル・ブランドの浸透を狙っている。現在、ライフ全店舗(316店舗)でビオラルがコーナー展開されている。売上は好調で、現在31億円まで伸びている(6年間で売上が約10倍に、ビオラル事業は黒字転換)。
ところで、展示会で興味深かったのは、BIOFACHの初日のセミナーである。日本人(農水省の担当者)とドイツ人(主宰者)のマネージャーが、日本と世界のオーガニック市場についてデータを紹介してくれていた。内容を要約すると、以下のようになる。
農水省が「みどりの食料戦略」(2021年)で、2050年までに日本の有機農業の割合を25%にすると宣言している。農水省のセミナーでは、推計値の根拠となるデータが紹介されていた。現状は、有機農産物が全体に占める割合は0.8%である。農水省(NOAFの活動)が8年前に目標に設定していた1%に近づいている。2009年で、有機農産物の消費規模は1300億円(推計値)であるが、2024年にオーガニックの市場は2240億円に拡大している。15年間で約1000億円を積み上げているから、年率では3.5%で成長していることがわかる。
2番目の主催者セミナー(カタリナ・ノイマン氏が講師)では、オーガニック市場の世界的な動向がデータで示されていた。詳しい説明は、小川の個人ブログを参照していただくとして、世界最大のオーガニック市場は米国で、消費金額が約10兆円(2024年)。有機農産物の消費市場は、年率5.2%で伸びている。二番目はドイツで、市場規模は約3兆円(2024年)。オーガニックの市場が、年率5.7%で成長している(2024年)。
後編では、日本の花き市場に話題を転じてみる。切り花の消費額はマイナスだが、耕作面積では露地栽培のシェアが高まっている。つまり、有機農産物の市場拡大と同様に、環境フレンドリーで資源低投入型の露地栽培の割合が拡大しているのである。その意味と花き市場の未来を、後編の「資源低投入型農業の未来」では展望してみたい。


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