「カラオケの秘密」『Big tomorrow』連載第68回(2014年2月号)

 お客さんがカラオケで歌うと、店は曲の著作権料を支払うことになっている。ただ、著作権者の数は曲目リストに載っている歌の作詞者・作曲者だけでも千人以上にも及ぶ。いったいどうやって払っているのか?


カラオケ料金に含まれている曲の著作権料はどのくらいなのか?それを分配する仕組みとは?
 一発でもヒット曲を出せば、その後にヒットが続かなくても、作詞者や作曲者はカラオケの著作権料で一生食べていける。そんな都市伝説を聞いたことがありませんか?
「一生食べていけるかどうかは別にして、カラオケの定番曲になれば、それなりのお金が分配され続けることはたしかです」
 と語るのは小川孔輔先生。私たちが支払ったカラオケ料金は、どのような流れで作曲者などの著作権者に渡るのか。まず仕組みから解説しましょう。
 管理している著作物の著作権料を集め、分配するのは、日本音楽著作権協会(JASRAC)。JASRACは、カラオケボックスなどの店舗と利用許諾契約を締結します。その場合に店が払う著作権料は、部屋の定員数や部屋数などで変わります。たとえば定員10名以下の部屋の月額使用料は4000円。20部屋ある店なら、月8万円になります。
JASRACは店の他に、カラオケを店に配信する事業者(第一興商やエクシングなど)とも契約を結びます。通信カラオケ事業者が支払う使用料は、配信される曲数によって異なります。10万曲の配信なら、基本使用料は950万円。さらに利用単位使用料として、通信カラオケ事業者がカラオケ店から得ている情報料の約10%をJASRACが徴収します。

1回も歌われない曲でも著作権料は分配される!
 注目したいのは、集めた使用料の分配方法です。通信カラオケ事業者がJASRACに支払った著作権料は、歌われた回数に応じて分配されると思われがちですが、それは通信カラオケ使用料の72%にとどまります。残りの10%は、配信するために新しく複製した楽曲に対して支払われ、あと18%は品揃え楽曲に対して支払われます。品揃え楽曲とは、配信リストに載っている曲のこと。つまり集計期間中に一度も歌われないマイナーな曲も、リストに載っているだけで使用料が支払われるのです。この仕組みが「一発当てれば安泰」という噂を生んでいるようです。

市場はピークの6割に縮小 二極化戦略で生き残りを!
 しかしながら、カラオケ市場は縮小傾向にあります。市場は1996年の6500億円から現在は約4割減に。
 市場が縮む中で、カラオケ店も生き残りをかけて必死。その方向性は2つあります。
「まず売上高首位シダックスのような、“居酒屋化”。同社は給食事業をやっていたので、食料調達や調理のオペレーションは得意。その強みを活かしてフードを強化。二次会需要を取り込んで客単価を上げる戦略です」
 もう1つは、価格を抑えて店舗の回転率を高める戦略です。
「カラオケ店は空室をいかに減らせるかが勝負。昼間のアイドルタイムに主婦層やシニア層に来てもらえるよう、低料金を売りにするチェーンもあります。店舗数1位のまねきねこは、この戦略で急成長しています」
 カラオケ産業が今後どう巻き返しに出るか、注目です。