「格安お菓子の秘密」『BIG tomorrow』連載第23回(2010年6月号)

  多くの小売店が苦戦しているなかで、急成長している企業がある。みのやが運営するお菓子の専門店「おかしのまちおか」だ。首都圏に106店舗を展開しているが、スーパーやコンビニより安い。では、どうやってその安さを実現しているのか?


スーパーやコンビニとはひと味違う“商品陳列”。一体どう並べてる?
 首都圏を中心によく見かけるお菓子専門店「おかしのまちおか」。最大9割引きという安さが人気の秘密です。でも、そんなに安く売って利益は出るの?
「おかしのまちおかでは、仕入れた商品を段ボールに入れたまま陳列しています。これで什器の費用はほぼゼロ。出店コストは大幅に抑えられるはずです」
とは、小川孔輔先生。
「段ボール陳列はチープ感があって高単価の商品には向きませんが、お菓子のような定単価商品なら、安っぽさがマイナス要因になりにくい。日本でもディスカウントショップでよく見かけますが、それも安さを売りにする業態だから可能なのです」

チープに見えても侮れない段ボール陳列の実力とは?
 とはいえ、段ボールで出店コストを下げたくらいで、そこまで安くできるのか疑問です。
「段ボールは陳列を自由に動かせるので、仕入れに臨機応変に対応できます。たとえばメーカーが不良在庫を抱えていると聞けば、定価格で仕入れてすぐ店頭に並べることも可能です。一方、コンビニやスーパーは棚割を数カ月前から計画的に決めているため、何らかの事情で安く仕入れられる商品があっても、柔軟に対応しづらい。ちなみに、段ボール陳列なら、他の店で売れている人気商品をすぐ仕入れて売ることもできる。この身軽さが段ボール陳列の強みです」
 段ボール陳列のおかげで、店頭はいつもフレッシュ。それがお菓子という商品の特性にも合っているとか。
「いつも特定ブランドを買うのではなく、毎回ブランドをスイッチする消費行動のことを“バラエティシーキング”といいます。日常的に使うのに、いつも同じでは飽きやすいドリンクやドレッシングは、バラエティシーキングで選ばれる代表的な商品ですが、お菓子もその一つ。こうした商品は、品揃えが豊富で、なおかつ店頭がフレッシュであるほうが売れやすい」
 おかしのまちおかは専門店だけあって、多い店では2000種という品揃え。さらに段ボール陳列で商品の入れ替えも早い。まさにお菓子を売るのに最適な戦略をとっているのです。

卸と小売の機能をくっつけてマージンや物流コストを削減 
 「おかしのまちおかは、問屋から小売に進出。ベンダー・リテイラーという卸と小売を合体させた業態です。商品流通はメーカー「製造」→ベンダー「卸」→リテイラー「小売」という流れが一般的ですが、それぞれの段階でマージンや物流コストが上乗せされるため、もともと安い商品も店頭ではそれなりの価格になります。そこで台頭してきたのが、ベンダー・リテイラーのように複数の機能をくっつけた業態。間を省けるので、価格面でグッと有利になります」
 たとえばユニクロは製造と小売り合体させた“メーカー・リテイラー”。この連載で以前紹介したお酒のカクヤスは“ベンダー・リテイラー”で、どちらも安さが魅力の企業。こうした業態も不況に強い秘密です。

商品名          おかしのまちおか コンビニエンスストア スーパー
カルビー/ポテトシップスうすしお味  99円      148円    79円
グリコ/ポッキーチョコ      119円      150円   145円
ロッテ/プリッツ          109円      118円   118円
伊藤園/お~いお茶        93円      125円    98円