「ロングセラーの秘密」 『Big tomorrow』連載第17回(2009年12月号)

コンビニの店舗はじつにシビア。売れなければ、1週間で棚から外される。そんな激しい競争のなかで、20年以上もずっと定位置をキープ!そんなロングセラー商品の“強さ”の秘密を探った!


お客に飽きられない工夫、長く売れ続ける秘訣とは?
 ポカリスエット、ポッキー、ポテトチップス…。これらは子供の頃から私たちの身近にある。競合商品が出回るなかで生き残り、長く愛される理由はどんなところにあるのか?
「ロングセラー商品は、“ローテク”で作られているという共通点があります」
と語るのは小川孔輔先生。
「ハイテクで作られたモノは、次々と新しい技術が生まれてくるため、半年前に新しかったのが、すぐに古くなって陳腐化します。が、ローテク商品は昔の技術が現在でも通用する。だから、必然的に商品寿命が長くなるのです。例外はあるものの、ほとんどがあてはまります」

追随する他社との競争にどうやって勝つのか?
 でも、ローテクということは、他社にマネされて市場を食われてしまうのでは?
「いえ。たとえば、バンドエイドやセロテープなどは、商品名そのものがカテゴリの代名詞になっていますよね。じつは、バンドエイドもセロテープもそれまで市場にはなかったモノ。これらが“新カテゴリ”を創り出した。つまり、先行品なのです。ですから、後から出てくる商品と技術的に大きな差がなくても、先行品ゆえの認知度の高さでロングセラーになっているのです」
ロングセラーにはもう1つ、欠かせない条件がある。それは値下げをしないこと。
「“マルボロ・フライデー”という事件を知っていますか?タバコのプレミアムブランドであるマルボロが1993年に、他社に合わせて値下げしたところ、売り上げが激減。その影響で株価もダウン。この事件からもわかるとおり、値下げをするとイメージが低下してブランドの寿命を縮める可能性が高いのです」
 とはいえ、競合が値下げをしたら競争力は落ちるはず。どうやって対抗すればいい?
「競争力を保つためによく行われる手法は2つあります。1つは、新しいトレンドを取り入れてマイナーチェンジすること。ロゴやパッケージをリニューアルしたり、原料を『~産100%』と銘打つ方法。もう1つは、ラインナナップの拡張。たとえばポッキーがさまざまな種類を展開しているように、味を増やすことで消費者が飽きない工夫をするのです」

たった15円の値上げでもお客の心は離れていく!
 
ロングセラー商品は、値下げだけではなく値上げもタブー。カップヌードルが昨年、卸売価格を15円値上げしたところ、売り上げは値上げ前の月のマイナス52%に。「値上げによる消費者離れを防ぐには、先に挙げたマイナーチェンジやラインナップの拡張が有効。カップヌードルは今年4月、肉の具材を変えてリニューアルしましたが、それを昨年の値上げ時に行っていれば、売り上げが落ちるのを回避できたかもしれません」
 お客は、商品の“変化”には敏感。味や値段をヘタに変えると命取りになるのが、ロングセラーの宿命だ。