『PRESIDENT NEXT 』(ダイヤモンド社)での連載第二回目。
人口減少に伴いさまざまな市場の縮小が予想されるが、そうした流れの中でも将来を有望視されているのが健康食品市場だ。法政大学経営大学院の小川孔輔教授はこう解説する。
「いま減っているのは現役世代の人口であり、六五歳以上の高齢者人口は今後も当面は増え続けます。高齢者世代の関心は健康と美容。この二つの市場が成長するのは間違いないところで、なかでも食べて健康になる、あるいは食べて美しくなるというニーズは高まっていくはずです」
ただ、ヘルシーさを打ち出せば何でも売れるわけではない。消費者のハートをつかむためには、今後、健康食品市場で起きるだろう3つのトレンドを押さえる必要がある。
まず一つは、サプリ市場の伸長だ。
「これまでサプリはじっくり食事ができない忙しい人が補助的に飲むものでした。しかし、高齢化の進展に伴い、食事量が減って摂れなくなった栄養をサプリで補うというニーズが高まります。サプリの利用シーンは、いま以上に広がるでしょう」
二つ目はカスタマイズ化。これまで健康食品はテレビや雑誌で取り上げられたことをきっかけにヒットするパターンが多かった。しかし今後はマスに売れる商品ではなく、一人一人のニーズに合わせた食品が支持される。
「いまアメリカでは簡易的な遺伝子検査サービスを受ける人が増えています。こうした診断技術の発達で、自分に必要な栄養素なども見えてきます。それに合わせて、顧客の献立を個別に考える専属栄養士サービスが普及するかもしれません」
三つ目のトレンドが、いま私たちが普段食べている食品のヘルシー化だ。
「健康食品を補助的に食べるというより、主食やおかずそのものがヘルシー化していくと思います。たとえば動物性の食品は使われなくなり、植物性のものにシフトしていくでしょう」
今回、注目したローソンのブランパンは、三つのうち二つのトレンドを押さえている。ブランパンの開発は、糖尿病患者やその予備軍向けに開発された商品。もちろんそれ以外の人にとってもヘルシーだが、特定の疾患をターゲットにして開発したのは、カスタマイズ化の流れに沿っている。また、パンは従来の健康食品カテゴリーには入らない食品だが、ブランパンはパン自体をヘルシー化させた。
これでブランパンのヒットは約束されたもの! と思いきや、最後に小川教授は条件をつけた。
「いくら体に良くても、おいしくなければ食品として支持されません。かつてケロッグ社はオールブランを日本で売り出しましたが、味の面で受け入れられず定着しなかった。ヘルシーさに魅かれて試した人が、もう一度食べたくなる味なのかどうか。ブランパンの命運は、そこにかかっています」
食品として味がいいことは必須条件。トレンドを押さえつつ、基本を忘れないことが大切だ。
マーケのヒント
・トレンドを読んで商品開発する
・商品に求められている基本なニーズを忘れない