「ペットビジネスの秘密」『Big tomorrow』連載第25回(2010年8月号)

最近は、犬やネコ用の服どころかマッサージ、ネイルアートまで出現。ペット市場の広がりには、目を見張るものがある。ペットビジネスは、どのくらい儲かるものなのか?その現場を取材した!


店頭の犬やネコの値段は、どうやって決められている?
 ペットショップに並ぶかわいい仔犬・仔猫たち。人気のある犬種や血統書つきだと、やはり値段も高い。が、店頭で15万円するものでも、生産者(ブリーダー)価格は2~4万円ほど。利益率からすると、ペットショップはボロ儲けのように思える。「ところが実際の粗利は1~2割で、あまり儲からないんです」
とは、小川孔輔先生。
「ショップはブリーダーから直接仕入れるのではなく、卸業者やせり市を通して仕入れるケースが多いんです。そのぶん中間マージンが上乗せされるため、仕入原価も跳ね上がります」 
 また、商品が生き物であることもペットショップにとっては大きな負担。
「仕入れた動物が病気になったり死亡すると商品にならず、仕入れぶんは丸損です。また、日本人は成犬より仔犬好き。成長するにつれて商品価値が落ちるため、一定期間を過ぎるとディスカウントが始まります。モノの場合は在庫になってもスペースをとるだけですが、生き物は在庫期間中、飼育コストがかかる。それが利益を圧迫するのです」
 儲からないビジネスなのに、では、ペットショップはどうやって利益を出しているのか?

ショップが赤字覚悟で犬や猫を売る理由とは?「ショップの収益源は生体販売だけではありません。それ以上に大きいのは、餌や首輪などのペット用品販売と、トリミングやペットホテルなどの関連サービス。サービス部門は専門技術や設備が必要ですが、ペット用品は粗利率が3~4割と高く、スペースさえあれば簡単に販売できる。ショップの経営が成り立つのも、犬や猫を買ったお客がリピーターとしてペット用品を買ってくれるからです」

年間約28万頭の犬や猫が殺処分されている!
 が、小川先生はペットの流通そのものに疑問を持っている。
「欧米はブリーダーが消費者に直接販売する形が主流ですが、日本のように卸や小売が存在すると、どうしても“生きた在庫”が発生します。売れ残り在庫を廃棄するために、業者が個人を装って保健所や動物愛護センターに引き取らせるケースもあると聞きます。引き取られた動物たちは、1週間程度で殺処分に。まさに流通が生んだ悲劇。いずれ社会問題化するのではないでしょうか」
 ちなみに、日本で平成20年度に行政施設で殺処分された犬猫の数は、約28万6000頭(地球生物会議ALIVE調べ)。それに対し、欧州では非常に少ない。「流通側だけでなく、ペットを飼っても安易に捨ててしまう飼い主側にも問題はあります」
 と指摘するのは『犬の飼い主検定』を行っているNPO法人動物愛護社会化推進協会(http://www.happ.or.jp/)の大西正也さん。
「日本では毎年90万頭以上の動物が市場に供給されています。また、その約1/3にあたる数(迷い犬・猫も含む)が殺処分に。自治体によって違いますが、東京都の場合、費用は3000円。小さいころ十数万出してお店で買った動物を、成長して手にあまると、わずかな額を払って処分してしまう。何かおかしいですよね?」(大西さん)
ペットは大切なパートナー。動物の命の値段をもう一度考えてみませんか?