商品イメージを高める戦略といえば、まっ先に広告が思いうかぶ。が、それ以上に訴求力が強いのが、ネーミングだ。ちょっと工夫するだけで、同じ商品でも売上がアップするとか。さて、その工夫とは?
商品のイメージを左右する“売れる地名”“売れない地名”とは?
銀座コージーコーナー、新宿高野フルーツパーラー、築地寿司清…。これらに共通しているのは、店の名前に地名がついていること。いったいなぜ?
「地名をつけるのは、ハロー効果を狙ったネーミング。それによって売上が2~3割増す場合もあります。」
と語るのは、小川孔輔先生。
「ハロー効果とは、本来以上の評価を得られる後光効果のこと。たとえば予備校に『東大』や『早稲田』『慶応』といった名前がついていると、なんとなく合格できそうな印象を受けるはず。地名の場合も同じ。ブランドイメージがいい地域の名前をつけることで、消費者の評価を上積みしているわけです」
群馬の企業が築地の名を借り全国規模のチェーンに成長!
地域ブランドを積極的に活用しているのは飲食業界。
カレーやラーメンなど食べ物に産地の名前をつけることで、「おいしそう」「新鮮そう」というイメージを想起させる戦略をとっています。
「その一例が『築地銀だこ』を展開する㈱ホットランド。築地や銀座を想起させるネーミングで急成長しましたが、意外なことに1号店は築地でもなく銀座でもなく群馬県。もし『群馬群だこ』と名乗っていたら、いまほどの知名度にはならなかったと思います。ちなみに同社はその後、銀座に本店を置き、現在では本社を復興支援のために宮城県に移しています」
地域ブランドの活用はファッション関連でも見られます。たとえばメガネの三城は『パリミキ』で、海外にも多数の店舗を展開。パリのおしゃれなイメージを後光として使うことで、ブランド力をアップさせています。
ただ、いくら有利になるからといって、地名を勝手につけてもいいものでしょうか?
「地名は原則的に商標登録できません。だから直接関係のない地域の名前も、自由につけることが可能です。ただ、地名プラス商品名で商標登録していたり、事業協同組合などが地域団体商標を取得しているケースもあり、その場合は、紛らわしい名前をつけると商標権侵害になる恐れもあります」
ブランド力トップは北海道 下位には北関東がズラリ…
では、実際にブランド価値の高い地域はどこなのでしょうか?地域ブランド調査(ブランド総合研究所)によると、都道府県別の1位は北海道で、以下京都、沖縄、東京と続きます。
「上位に入るのは、気候風土、文化・歴史、先進性のいずれかで特色のある地域。とくに文化や歴史は短期間に作り出すことができません。それらを人為的にマネできないからこそ、ブランドとして評価されるのです」
逆にブランド力が低いのは、下から群馬、茨城、佐賀、栃木。北関東が軒並みランクインしていますが…。
「群馬なら草津、茨城なら水戸など、北関東にもブランド力の高い町はあります。しかし県共通のイメージがなく、印象に残らない。それが低評価の原因だと思われます」
『築地銀だこ』が『群馬群だこ』と名乗らず、あえて築地と銀座の名をつけたのも、このデータを見ただけでうなずけます。
新商品のネーミングを考える際は、こうした地域名の影響力も一考してみてください。
ブランド力の高い地域名トップ5
都道府県名①北海道②京都府③沖縄県④東京都⑤奈良県
市町村名 ①札幌市②京都市③函館市④横浜市⑤神戸市
食べ物がおいしそう、歴史的な名刹が多い、気候がいい、都会的…といったプラスのイメージがある県名が上位に。市町村名は、「ラーメン」「カレー」をつけてみるとしっくりくるように、○○名物の食べ物が多い。