「タウリン1000㎎」「アルコール0.00%」…。何気なく目にしている商品ラベル。じつは、こうしたラベルにはお客が思わず買いたくなるような仕掛けが…。数字と消費者心理の謎を探った!
商品の価値をより高く見せたり、よりおトクに見せるために、どんな演出がなされているのか?
「5%引き」の10万円の商品と、「5000円引き」の10万円の商品があったとします。
どっちがおトクだと思いますか?じつはコレ、どちらも同じ。値段は9万5000円です。なのに、なぜか「5000円引き」のほうをおトクだと感じます。どういうことなのでしょうか?
「人は一般的に、小さい数字よりも大きな数字で表示したほうをおトクだと感じるんです」
と解説するのは小川孔輔先生。
ドリンク剤の有効成分は、なぜ「g」ではなく「㎎」?
このように同じ内容を示しているのに、表現を変えるだけでお客に与える印象は大きく変わります。
たとえば栄養ドリンクの成分表。「タウリン2000㎎」と、わざわざ㎎単位で表示しているものがあります。これは、「タウリン2g」と「g単位」で表示するよりケタ数が多くなり、成分がたくさん含まれているような印象を与えるからです。
「逆にニコチンやタール、糖分などの目立たせたくない成分は、ケタ数を小さくしたり小数になる単位を用います。たとえば『100㎎』より、『0.1g』。これだと、同じ分量でも微量な印象を与えることができます」
商品券や割引クーポンでも、数字を大きく表示したり、クーポンの紙のサイズそのものを大きくすることで、おトク感を演出できます。最近は携帯画面を見せるだけで安くなる電子クーポンが普及していますが、紙のクーポンがなくならない理由の1つはこういう点にもあるのではないでしょうか。商品券などが、わざと実際のおカネと同じくらいの大きさにしているのも、値打ちを高く演出するためです」
本来は同じなのに、表示によって受け手の感じる価値が変わってしまう。それを理論化したのが、ノーベル経済学賞を受賞したカーネマンのプロスペクト理論です。
100円の損得には鈍感だが、1000円の損得には敏感!
プロスペクト理論では、人の心理の2つの傾向が明らかになりました。1つは、同じ金額でも得する場合と損する場合では感じる価値が変わり、損する場合のほうが金額の重みを感じるというのです。
「2万円もらうときのありがみが100なら、2万円を失うときの痛みは200になる。簡単にいうと、得する場合は過小評価、損する場合は過大評価されるのです。だから、得する情報はより目立つように強調して表示し、損するものは小さく表示するほうがいい。あたりまえのことのようですが、ノーベル賞学者によって理論的に裏づけられているわけです」
もう1つ、人は少額のうちは損得に対してありがたみや痛みに鈍感ですが、額が大きくなるにつれて敏感になる傾向があります。
「100円もらっても、たいしてうれしく感じませんが、1000円になると10倍以上喜ぶことになります。100円の得に人は鈍感ですが、ある額を超えるとそれ以上ありがたみを感じるものです」
人の心理とはじつに面白いもの。買い物の際は、こうした表示のトリックが隠されているのを見抜くのが、新たな楽しみになるかもしれません。