コーヒーといえば、ドトールやスターバックス、タリーズ、マックの100円コーヒー…と、すでに市場は飽和状態に思える。それなのになぜ、コンビニエンスストアはあえて淹れたてコーヒーに参入したのか?
手頃な値段で淹れたてコーヒーを店頭販売できる理由とは?
最近コンビニ各社が力を入れている淹れたてコーヒー。たとえばセブン-イレブンは、コーヒーサーバーサービス「セブンカフェ」を2600店で展開中。今年夏までに1万5000店に拡大予定です。なぜいまコーヒーなのでしょう?
「コンビニにとって、コーヒーは1回で2度儲かる魅力的な商品だからです」
と解説するのは小川孔輔先生。
「まず単体の商品として利益が見込めます。コーヒーの原材料費は、価格の2~4割程度。コーヒーサーバーの他に設備投資は必要なく、他の商品に比べて利益率は高い」
さらにコーヒーの販売には、もう1つの秘密が。
「スターバックスの売上を支えているのは、コーヒーと一緒に買われるケーキ類。コンビニも同様で、コーヒーと一緒にサンドイッチやデザートを購入するお客さんが2割います。つまりコーヒー単体だけでなく、お客のついで買いを促して、ダブルで儲けているのです」
コーヒー豆相場の下落でコンビニが続々と参入!
ダブルで利益が見込める魅力的な商品なのに、なぜこれまで導入していなかったのでしょう?
「コンビニで取り扱う商品が飽和状態になり、現場のオペレーションが限界を超えていたのではないかと推測されます。チキンやコロッケなどのホットフードの販売はあたりまえになり、さらに去年あたりから野菜や果物などを取り扱う店も増えてきました。コーヒーはセルフ方式で販売するとはいえ、メンテナンスなどの手間を考えると、簡単には導入できなかったのだと思います」
いまもその状況は根本的には変わっていないはず。なのに、なぜいまになって急に始めたのでしょう?
「じつは近年、コーヒー豆は供給過剰で価格が下がっています。投機マネーが別の商品に移ったこともあり、コーヒー豆相場は2年前の約半分に。粗利益率がさらに高まることで、導入の決断をしたのだと思われます」
激戦地と化したカフェ市場!勝ち残るのはどこか?
いまコーヒー業界は、ドトールやスタバなどのカフェチェーン、マックやモスなどのファストフード、そして新たに参入したコンビニが三つ巴になってお客さんを取り合っています。
「コーヒ自体は成熟産業なので、品質や加工技術で差別化するのは難しい。勝負を分けるのは、コーヒーと一緒に頼むサイドメニューの品質。従来、ケーキはカフェチェーン、調理パンなどのフードはファストフードに分がありましたが、いまはコンビニも負けていない。とくにデザートはコンビニ各社が力を入れているジャンル。このままでは、カフェチェーンはコンビニに食われてしまう可能性も…」
カフェチェーンも指をくわえて見ているわけではありません。いまカフェ業界では、セルフではなく店員が注文を取りに来るフルサービス店が復活の兆しを見せています。
代表的なのは、名古屋を中心に成長を続けるコメダ珈琲。老舗の銀座ルノワールも、ミヤマ珈琲というフルサービスの新業態を始めています。
「テイクアウトせずに席に座ってくつろぎたいが、マックでは若者の声が気になるし、スタバではおしゃべりしにくいという高齢層にフルサービスがウケています。この業態は、高齢化とともに今後も成長が見込めると思います」
コーヒー業界の頂点に立つのは、はたしてどこか。今後も目が離せません!