『プレジデントネクスト』 2015年8月号を掲載する
ファミリーマート『FAMIMA CAFE』の「フラッペ」が好調だ。フラッペはかき氷が入った専用カップにコーヒーマシーンで飲み物を注いでつくるフローズンドリンクで、種類は「カフェフラッペ」と、今年新たに発売された「抹茶フラッペ」、「マンゴー&オレンジフラッペ」の三つ。5月17日の発売以降、新商品が予想以上に売れて品薄状態が続いている(6月2日現在)。どうしてフラッペが人気なのか。小川孔輔先生は、「日本人は季節商品に目がない」と指摘する。
「海外にも季節商品は存在しますが、通年商品に比べて割合は少なく、陳列期間も長めです。一方、日本は季節商品が占める割合が大きく、数週間で入れ替えられます。これは、日本の消費者が季節の移り変わりを感じたいというニーズを強く持っているから。フラッペが人気なのも、夏を感じたい消費者が多かったからでしょう」
そもそもフラッペのもとになるコーヒーや抹茶は、季節を問わない通年商品。それをフラッペにして〝季節商品化〟するのも日本的発想といえる。
「欧米では一年中コーヒーをホットで飲みますが、日本では夏にアイスコーヒーを飲む習慣が早くから定着していました。最近では冷やしラーメンが人気になったり、氷点下のビールが飲める『エクストラコールドBAR』が流行るなど、日本人は冷やした商品が本当に大好き。フラッペが品薄になるのもうなずけます」
ただ、フラッペの発売は5月。夏を感じるには早すぎないだろうか。
「季節商品を数カ月前倒しで店頭に並べるのが、最近の小売りのトレンド。もともと少しでも早く季節を感じたいという消費者のニーズはあったのですが、以前は旬の素材が旬にならないと手に入らず、ニーズに応えることができませんでした。しかし近年は栽培技術の進歩により、季節を先取りして供給できるようになりました」
たとえばすだちの旬は8~10月だが、近年はハウス栽培で3月ごろから手に入る。その恩恵を受けて、すだちを薬味として使う冷やしそうめんも早く店頭に出せるようになった。
「フラッペは野菜や魚を使っていないため、とくに販売時期に制限があるわけではありません。ただ、季節商品全体が前倒しになっている中で、本格的に暑くなるまで店頭に並べるのを待つ理由もない。早めに販売開始するのは自然な流れです」
ただ、早く店頭に並んだからといって、ずっと主役を張れるわけではない。
「季節商品が前倒しになるということは、秋冬商品も早く店頭に並ぶということ。コンビニでおでんが売られ始めるのは、残暑が厳しい8~9月。そのころには夏向け商品も、次の季節商品に棚を明け渡さざるを得ません」
日本市場において季節商品はドル箱的存在だが、それだけに棚の奪い合いも激しい。早めに売り出して早めに稼ぎ切ることが、季節商品で儲けるコツだ。
マーケのヒント
・通年の定番商品も、冷やすことで夏の季節商品になる
・季節商品は早めに売り出して、早めに稼ぎ切る