「通販の秘密」『Big tomorrow』連載第69回(2014年3月号)

 「ドモホルンリンクル」「ニンニク卵黄」「キューサイの青汁」…。テレビや新聞広告でおなじみの通販商品。売っている会社は違うが、これらの本社はぜんぶ九州にある。いったいなぜ九州に多い?


九州と通販、健康食品、新聞広告…の意外な関係とは?
あまり知られていませんが、九州には有名な通販会社がズラリ(右下の表参照)。いったいなぜ?
「九州は東京に比べ人口が少なく、市場が小さいため、作った商品を自分たちの地域で消費する“地産地消”が難しい。そのため、東京などの大都市圏に販路を広げざるを得ない。それが理由の1つです」
と語るのは小川孔輔先生。
ただ、気になるのは健康食品が多いこと。どうしてなのか?
「九州は、健康食品の材料になる野菜や畜産物の生産量が多いんです。気候が温暖なので、青汁に使われるケールなど珍しい野菜がたくさん採れる。材料の調達しやすさを考えると、九州に健康食品メーカーが多いことに合点がいきます。また、健康食品は日用品と違い、ふだんの生活で数が多く売れず、スーパーやコンビニでは棚を取りにくい。かといって自社で店舗を全国展開するにもコストがかかりすぎる。そこで残ったのが通販。健康食品という商品の特性と通販という販売手法がマッチした結果、九州には健康食品の通販会社が多くあるのだと思います」

売り込み電話が多く必要な理由とは?
九州に通販会社が多いのには、コールセンターにも秘密があります。コールセンターには、インバウンド(商品の注文を受ける電話)と、アウトバウンド(商品の売り込みのためにかける電話)の2種類があり、九州ではアウトバウンドの比率が高いとか。
「アウトバウンドはインバウンドに比べて電話をかけるオペレーターの人数が多く必要。じつは九州は人件費が安いのです。実際、九州経済の中心地である福岡県でも、サラリーマンの平均年収は全国21位と低め。人件費の安さが通販会社を支えている面があります」
では、なぜアウトバウンドが多いのか?
「九州で採れる原料を使えばいいので、健康食品は作りやすい。わざわざ他の地域から原料を調達しなければいけないような別の商品をあえて作る必要がない。すると当然のごとく、主力商品は1つだけになる。商品のラインナップが多い場合はお客さんにカタログを送り、あとは注文の電話がかかってくるのを待つ戦略でいい。しかし、主力商品が1つしかない場合は、資料請求してきたお客さんに『効果はいかがでしたか?』と電話をかける攻めの戦略が必要になる。だから、アウトバウンドが多いわけです」

新聞ばなれが進んでいるのに、なぜ新聞広告なのか?
「健康食品通販の広告費は、売上高の20~30%。トヨタは2~3%、化粧品メーカーでも10%前後ですから、健康食品系は突出しています」
ただ、やみくもにお金を注ぎ込んでいるわけではありません。
「若者の新聞離れによって新聞の広告料は下がっていますが、高齢者が主な顧客層である健康食品にとって、新聞はまだ魅力的な広告媒体なのです」
高齢化で、ますます成長しそうな健康食品通販。九州からは今後も目を離せません!

九州に本社がある通販会社はこんなに!
九州にはテレビや新聞広告でおなじみの通販会社がたくさん。しかも健康食品が多い!
ふくや(辛子明太子)、ヴァーナル(洗顔石鹸)、再春館製薬所(ドモホルンリンクル)、健康家族(にんにく卵黄)、ジャパネットたかた(家電製品)、アスカコーポレーション(化粧品)、キューサイ(青汁)、やずや(健康食品)、エバーライフ(皇潤…飲む美容液)、アサヒ緑健(緑効青汁)、トーカ堂(宝飾品)、はぴねすくらぶ(食品他)