「天気と売上げの秘密」『Big tomorrow』連載第16回(2009年11月号)

「値下げ、増量、キャンペーン…。アノ手コノ手を打っても、売り上げはイマイチ…」というキミの会社、肝心なものを忘れてない?それはズバリ“天気”。売り上げを左右するこの第三の要素を活用すれば、業績は上向くはず!


天気予報を活用して、業績を伸ばしている企業とは?
 今年は記録的な冷夏。ビールやアイスなどの苦戦が伝えられていますが…。
「じつは牛乳のように季節に関係なく売れる商品も、気温の影響を受けています」
と語るのは小川孔輔先生。
「スーパーで、牛乳の売れ行きと気温を調査したところ、最高気温が1度上がると、お客さん1000人につき1.8本多く売れるという結果が出ました。その売り上げ額は、1本あたり1.3円値下げした場合と同じ。つまり、最高気温が1度低い日には1.3円の値下げをしないと売り上げを維持できないことがわかったのです」

天気に影響されずに利益を確保するにはどうしたら? 
 とはいえ、気温が低いからと値引きをしては利益率が下がります。では、どうしたら?
「気温に合わせて価格を調整するよりも、仕入れの数を調整して売れ残りを減らしたほうが得策」
 そこで重要な役割を果たすのが天気予報。
「気温だけでなく、降雨量や台風も売り上げを左右する重要な要因です。そのためスーパーやコンビニでは、天気予報をもとに仕入れ計画を策定。暑い日に売れるもの、涼しい日に売れるものなど仕入れを天気予報に合わせてコントロールし、天候による影響を最小限に抑えているんです」
 ただ、一般に天気予報は外れることもあり、あまりアテにならない気が…。
「たしかに一般的な天気予報は予報エリアが広く、時間も1日単位なので、ビジネスには活用しにくい。そこで、天気の影響を受けやすい業種では、キメ細かい予報を専門の気象情報会社から買うようになりました」

天気予報で利益を伸ばした企業とは?
 日本にはウェザーニューズという世界最大の気象情報会社があります。創業は1986年。もともと海運や交通事業者向けの情報サービスで、当時は一般企業が天気予報を買うという発想はありませんでした。そんななか真っ先に手を挙げたのは、意外な企業でした。
「それは屋根つきのドームができる前の後楽園球場。雨が降って試合が中止になったり客足が落ちると、球場では大量の廃棄弁当が発生します。以前は天気予報名人が空模様を見て発注量を決めていたそうですが、それでも月に150~300万円の弁当のロスが出ていました。そこでウェザーニューズの設立を機に、月額30万円で天気予報を買うように。実際、ロスが大幅に減って大助かりだったそうです」
 そう解説するのは、ウェザーニューズの石橋会長。
 天気予報の活用がいかに利益に結びつくのか、よくわかるエピソードです。飲食店、百貨店、映画館、書店…などほとんどの業種は、晴れか雨かによって、客足が大きく変わります。それをあらかじめ予測し、先手を打てば、売り上げが落ちるのを防ぐことも可能。明日の空模様だけでなく1週間後、1か月後のチェックも心がけたいものです!