「駐車場ビジネスの秘密」『Big tomorrow』連載第19回(2010年2月号)

駅前や繁華街では駐車場を見つけるのにひと苦労。そのため、パーキング代が少々高くても、空きがあるだけマシと、つい駐めるハメに。貸す側にとってはじつにオイシイ商売。いったいどのくらい儲かる?


駐車違反の罰金とパーキング代の意外な相関関係とは? 
 街のあちこちで見かけるコインパーキング。料金は分単位が主流だが、なぜ細かい時間で設定されているのか?
「じつは、分単位のコインパーキングは、月極めの駐車場より5倍おいしいビジネスなんです」
と解説するのは小川孔輔先生。
「都内の場合、月極めで3万円の駐車場を時間貸しにすると、昼なら(8~24時)400円/60分、夜なら(24~8時)100円/60分に相当します。1台の駐車スペースにつき1日最大7200円の売上ですが、利益率を7割として、1日5040円。月30日なら、月売上15万1200円で、月極めの約5倍になる計算。月極めで貸すより、ずっと儲かります」

儲けの発想は、ラブホテルと同じだった!
 時間貸しのように、本来ならまとまっているサービスを細かく分割して販売する手法を“小口化”といいます。
「ラブホテルと同じ発想です。通常は1泊のところを時間貸しにして回転率を上げれば、1泊料金以上の利益が得られます。駐車場も小口化して回転率を高めたほうが儲かるのです」
コインパーキングは、土地のオーナーが運営会社に高めの月極めで土地を貸し、運営会社が小口化して時間貸しをするのが一般的なビジネスモデル。
 オーナーは回転率にかかわらず一定の収益があるが、運営会社は回転率が命。そのため、回転率を高めるような時間設定がされている。
「同じ地域のコインパーキングでも、15分単位の駐車場があれば、40分単位の駐車場もありますよね。これは、駐車場から駅や繁華街まで出かけて用事を済ませて帰ってくる平均時間をもとに時間単位を決めているからなんです。たとえば駅に近い駐車場なら15分単位で、2コマ30分で往復する計算。このように立地に合わせて細かく時間を設定すると、空き時間が少なくなり、回転率も上がります」

罰金とパーキング代、どっちがおトクか? 
 月極めの5倍も収益が見込めるなら、もっと安くして欲しいと思うのが利用者のホンネ。が、駐車場側の強気な料金設定には、もう一つの背景が…。
「駐車料金は、駐車違反の摘発率とも関係しています。放置駐車違反の罰金は1万5000円~1万8000円。20回に1回摘発されるような取り締まりの厳しい地域では、1時間600円の駐車場料金を支払っても、600円×20回=1万2000円で、罰金より安く済む。駐車場は、この関係が逆転しない範囲で料金を設定しています。つまり駐車場料金は原価(月極め料金)から算出されるだけでなく、罰金との兼ね合いからも計算されているのです」
 路上駐車がいけないのは当然だが、損得を考えても、駐車場の利用が賢い選択かも!?

駅に近いほど料金設定は細かくなっている!
JR中央線阿佐ヶ谷駅 
月極め料金が同じ地域でも、駅に近い駐車場ほど時間設定が短めに設定され、高回転・高収益に!
■ A社8時~24時 5分単位(駅に最も近い)
■ B社8時~24時 20分単位(駅にA社の次に近い)
■ C社8時~24時 25分単位(駅にはA,B社に次いで近い)
■ D社8時~22時 40分単位(駅から最も遠い)