「検定ビジネスの秘密」『Big tomorrow』連載第47回(2012年6月号)

 検定といえば、昔はそろばんか英検くらい。が、いまは夜景、競馬、温泉ソムリエと、じつにさまざまな種類がある。それにしても、取得する人はどれだけいるのか?主催者はどれくらい儲かるのか?


意外にも、誰でも主催者になれる!検定ビジネスの仕組みとは?
 「阪神タイガース検定」「三国志検定」など、最近はやたらマニアックな検定が登場。少数のマニアに向けたものが、はたして利益が出るのでしょうか?
 「検定ビジネスには、検定料の他にも収益源があるんです」
と解説するのは小川孔輔先生。
 「検定には、実技が伴うものと、純粋に知識だけを問うものの2種類があります。実技が伴う検定は検定料が高めで、一般的には1万円以上のところが多い。見逃せないのが、主催者が開設する受験用の講座、それに付随する問題集などの物販です。検定料以外にこうした収益源があるため、成立するのです」

ブームが去っても、生き残っているワケは?
 知識系の検定も、基本的には同じ。検定料は3000~5000円前後と安めですが、出版社と組んで専用テキストを販売。その印税も主催者の利益になります。黒字になるかどうかは、集客次第。
「予算1000万円を用意している知識系の検定主催者がいるとしましょう。検定料+印税でお客1人あたり3300円の売上があるとしたら、受験者数3000人で売上は約1000万円。黒字で運営しようとするなら、最低限それだけの集客が必要になります。ただ、試験はマニアックな知識が問われるため、市場は小さく、集客にも限度があると思います」
 これまでブームで数多くの検定が誕生しましたが、消えていったものも…。では、生き残っている検定は、どうやっているのでしょうか?
「うまくいっている検定は、1~3級程度にステージが分かれています。進級制度があれば、同じ人が継続して検定を受けることになるので、小さな市場が何倍にも膨らむ。もちろん技術や知識体系が薄っぺらいのに、ムリにステージ分けをしてもダメ。奥が深いジャンルだからこそ成り立つ戦略です」
 しかし、奥がそれほど深くなさそうなのに、立派に生き残っているものも…。カギを握るのは主催者の目的です。
「NPOや社団法人など団体系が主催する検定は、啓蒙や業界振興を目的としているものが多く、そのための予算もあるため、ムリに黒字化しなくてもいいのです。一方、企業が主催する検定はマーケティングの一環であることが多い。ファンを増やして商品やサービスの売上増に結びつけることが目的なので、検定そのもので利益を出さなくてもいいわけです」
マーケティングに行きづまっている会社は、自社の業界の「○○検定」を展開するのも手かもしれません。

こんなおもしろ検定も!
日本さかな検定:1~3級。魚の旬や目利きから産地、おいしい食べ方、魚食文化まで幅広い問題が出題される
バーベキュー検定:初級、上級、マスターの3段階。バーベキューとアウトドアの知識・技術が身につく
三国志検定:1~3級、赤壁。興味を持ち始めたレベルから学術的知識まで三国志の知識が問われる