高級ディナーやブランド物が激安で買える“共同購入クーポン”が、空前のブームだ。ネット上で注文できる時間帯が限られているため、あっというまに売り切れてしまう。なぜここまで安くできるのか?その秘密を探った!
お客の購買心理を巧みに利用。“いまスグ欲しい!”と思わせるテクニックとは?
「フランス料理のコースが64%オフ」など、大幅割引が自慢のクーポン系サイト。その特徴は、制限時間内に購入希望者が一定人数集まると取引成立となる“フラッシュマーケティング”という手法を取り入れていること。
「その考え方は、空席になりそうな座席を事前に割引販売する格安航空券と同じ。また、共同購入によって固定費を引き下げるという意味では、近所の人を集めて配達コストを下げる生協のサービスとも似ていて、基本的な仕組みは変わりません」
と指摘するのは小川孔輔先生。
クーポンが売れるほど赤字に!それなのに、なぜやるのか?
では、なぜいま注目に?
「フラッシュマーケティングは従来の共同購入の仕組みに比べて、極めて短期間で申し込みを締め切ります。そのため『他の人にも早く声をかけて人数を集めないと、安く買えないかも』という消費者心理が刺激され、割引き情報が拡散するのです」
なかには、その心理を利用して、わざと「残り1時間!あと3人」といったあおりを加えるところもあるとか…。
それにしても気になるのは、半額以下があたりまえという割引率。1万円のコース料理を50%オフで100人に販売するケースを試算してみましょう。
半額5000円で100人利用なら、売上は50万円です。そこから引かれるのは、クーポン系サイトへの販売手数料25万円(相場は売上の50%)。また飲食店の一般的なFLコスト(食材費・人件費)は40%前後なので、100人分のコストとして40万円がかかります。この2つを売上から引くと、なんと15万円の赤字に…。
「心配は無用です。1万円のコースなら、飲み物代として平均3000円の追加購入が期待できるからです。飲み物分の利益は1人1800円なので、100人分で18万円。クーポン利用だけなら15万円の赤字でも、追加購入を計算すると、3万円の黒字になります」
さらに大きいのがリピートの効果。クーポン系サイトの草分けである『グルーポン』では、リピート率は22%だとか。100人中22人が再来店すると、(コース1万円+飲み物3000円)×22人×利益率60%で、17万1600円の利益が出る計算に。1回目と合わせれば、約20万円の利益です!
「顧客のリピート率は一度に限りません。価格の安さで勝負するのではなく、品質を知ってもらえばリピーターになってもらえるという自信のあるサービスなら、店にとって利用価値は大きいはずです」
ただし、共同購入クーポンはどちらかというと初めてのお客向き。店にとっては、正規の料金を払う常連客に不公平感を与える恐れがあるからです。そのため、クーポン購入客と正規料金のお客とではサービスを差別化するのが重要です。