従来のテレビゲームとは異なり、ハード機とソフトを買わなくてもインターネットでプレイできる。しかも無料なのが、ソーシャルゲームの特徴。無料なのに、年々その市場規模は拡大。いったいどうやって儲けているのか?
ユーザーの心理を巧みについた“アイテム課金”の仕組みとは?
携帯やスマホのブラウザで手軽に遊べるソーシャルゲーム。無料で遊べることも人気の理由の一つですが、タダなのに、どうして利益が出るのでしょうか?
「ソーシャルゲームの多くは、“フリーミアム”といわれる戦略で利益を得ています」
と説明するのは小川孔輔先生。
「フリーミアムは、基本サービスを無料提供することでユーザーを獲得して、上位レベルのものを求める人に有料サービスを提供して稼ぐビジネスモデル。ソーシャルゲームも基本は無料で遊べますが、ゲームをより楽しむためには武器や薬、洋服などのアイテムが必要で、それらを販売することで儲けているのです」
バーチャル世界の有料くじに数十万円つぎこむユーザーも
この仕組みはアイテム課金制とも呼ばれています。なかでも利益が大きいと噂されているのが有料くじ。たとえば人気ゲーム「探検ドリランド」では、レアカードを手に入れるためのガチャ(くじ)を1回300円で提供しています。レアカードすべてを集めるためには何回もくじを引く必要があり、なかには数十万円つぎこむユーザーもいるとか。
「ソーシャルゲームは他のユーザーとコミュニケーションを取りながら遊べることが魅力の一つで、レアなアイテムを持っていると仲間から尊重されて、承認要求が満たされる。いわば自尊心を買っているようなものです。また、くじは確率の世界なので、少ない投資でレアなアイテムを手に入れられる可能性もあります。現実には多額の投資をしないとアイテムが揃わないケースが圧倒的に多いのですが、そうしたギャンブル性がユーザーをひきつけてしまうのかもしれません」
ただ、たとえ自尊心が満たされるからといって、どれだけの人が仮想アイテムに万単位でお金を使うものでしょうか。
「課金ユーザーの分布は、ロングテールになっているはずです。平均単価は月1万程度でも、過半数は無料ユーザーで、1~2割のユーザーが数千円、そしてごく一部のヘビーユーザーが十万円前後をつぎ込んでいるというイメージです。100人の中に数人、ハマりやすい人がいれば成り立ってしまうところが、このビジネスモデルの特徴です」
ソーシャルゲームはメーカーのメリットも大きいといいます。
「従来のゲームソフトは、一度完成させてパッケージ化したら改良が不可能で、在庫を抱えるリスクもありました。一方、ソーシャルゲームは試作版で出して、ユーザーの反応を見ながら逐次改良したり、場合によっては徹底してもいい。開発費も回収しやすくなっているはず」
最後に小川先生は次のように警鐘を鳴らします。
「一種の中毒性があり、一部の熱狂的なユーザーが狙い撃ちにされているという面もあります。社会問題化すれば、課金に上限が設けられるなどの規制が入る可能性もあります。課金に上限が設定されると、ロングテールの収益モデルは成り立たない。その時、業界がどう対応するか問われたとき、業界がどうするのか見守りたいですね」