「もっとおいしくなりました!」「よりクリアな味になりました!」リニューアルしたことをアピールするのは売上アップにつながると思いきや、逆に裏目に出る場合も…。いったいなぜ?その意外な理由を解き明かす!
お客さんに長く愛される商品を作るために行っている、陰の企業努力とは?
リニューアルって、商品の売上が落ちてきた時にやるものだと思っていませんか?
「それは思い込み。売れている時にやるリニューアルもあるのです」
と語るのは小川孔輔先生。
「というのは、たとえ売れている商品でも、何もせず放置すると消費者に飽きられて少しずつ売上が落ちてくるからです。そうなる前に、定期的にリニューアルをするケースがあるのです」
ただし、過去にはこんな失敗例も…。
「いまから約20年前、ある食品メーカーが人気商品の味を変えて裏目に出たことがありました。味はおいしくなったのですが、従来の味に満足していたお客さんが離れ、かえって売上が落ちたのです。消費者は食に関しては保守的で、変化を歓迎しません。受け入れられるリニューアルの表現は、せいぜい『製法を変えました』程度。それ以上の変化をアピールすると、たとえよい方向への変化でもお客さんが離れます」
コカ・コーラが長く愛される意外な秘密とは⁉
しかし、まったく変化がなくても飽きられます。このジレンマをどう解消したら?
「ドラスティックに変えないことが大事。具体的には、機能を改善させるとか、パッケージを少し変える、量を少し増やすといった程度の変化がいい。マイナーチェンジがポイントです」
そう考えると、究極のリニューアルとは変化を消費者に気づかせないことかもしれません。
「コカ・コーラが長く愛されているのは、時代に合わせて少しずつ味を変えているからだという噂があります。味を変えたと断定できないのは、コカ・コーラ社が公表していないから。じつは同社は1985年に味を改良して、『ニュー・コーク』を売り出しました。市場調査の結果は上々だったのに、イザ売り出すと非難轟轟で大失敗。それ以来、同社は味を変えたかどうかを秘密にしています」
なぜいま『氷結シリーズ』がリニューアルに着手したか?
最近の成功例を見てみましょう。小川先生が注目しているのはキリンの氷結シリーズです。
「商品に手を加えず、『~味』とラインナップを増やしていくブランドマネジメント手法を“ライン拡張”と言います。2001年発売の氷結シリーズは、徐々にフレーバーを増やすライン拡張で、消費者を飽きさせない工夫をしてきました」
それに加えて、今春にはリニューアルを実施。
「味は『さらに飲みやすく、スッキリしたおいしさへ』で、従来の味を継承していることをアピール。パッケージデザインも大きな変更はありません。ドラスティックではないリニューアルです」
じつは今回のリニューアルで、商品名を『キリンチューハイ氷結』から『キリン 氷結』へと変更。ささいな変更に思えますが、小川先生は「新展開の布石ではないか」と指摘します。
「同じカテゴリーの中で種類を増やす“ライン拡張”に対して、ブランドを他のカテゴリーで展開することを“ブランド拡張”といいます。『企業名+カテゴリー名+商品名』の3階建てのネーミングからカテゴリー名を除いて『企業名+商品名』だけにしたのは、氷結ブランドでカクテルなど他のカテゴリーにブランド拡張する準備かもしれません。それを見据えたうえでのリニューアルだとしたら、キリンはブランドのコントロールが相当に上手ですね」
先生の予想通りなら、そのうち、キリン氷結カクテル、なんて商品が登場することもあるかも⁉