原油価格の値上がりは一段落どころか、1バーレル当たり60ドルを切りそうな気配を見せている。一時期はリッター160円を超えていたレギュラーガソリンの価格も、130円台に落ちてきている。だが、人手不足の方は、基調に変化はない。もはや、シニアと女子と外国人労働者にもっと活躍してもらわないと、生産・流通の現場はもたなくなっている。
花の物流でも、その影響は出ている。全国各地で生産物流センター(産地や卸市場)やトラック便ルートが統合される気配を見せている。人件費が上昇して、これまでの運賃レートではモノが運べなくなっているからだ。
こうした不測の事態に、花業界としてはどのように対応すべきだろうか?突き詰めて考えると、対応策としては、①経費の合理化を進めるか、②新しい方策を考えだすか、しかない。①の合理化に関しては、(A)物流の作業効率を上げる方法と、(B)在庫場所やルートを組み替える方策が考えられる。どちらも既存の枠組み内で実施できる。作業効率を上げるには、たとえば、産地(集荷場所)や市場(物流センター)からの出荷のタイミングと出荷量を調整する方法がある。
「OR理論」(オペレーションズリサーチ)によれば、保管場所や金利コストが変わらずにいるのだから、配送頻度を落とし(輸送回数を減らして)、トラックの積載効率をあげることが有利になる。(A)輸送コストの削減に努めることになるのだが、それでは鮮度保持のために対しては、輸送効率の向上がマイナスに働くことになる。
(B)二番目の輸送ルートの組み替え(出荷・在庫場所の変更)は、すでに始まっている。単独でのトラック輸送がペイしなくなった産地は、配送ルートを統合するしか手がない。そもそも輸送手段を確保できなくなっている。多くの出荷先(卸市場や量販の搬送センター)をキープできなくなるので、ひるがえって市場の統合が促進される。すでに一つしか市場がなくなってしまった「オランダ現象」である。つまり、物流上の事情から、ますます力のある市場しか生き残りが出来なくなってしまっている。
輸送コスト増により、長距離輸送が引き合わなくなったのだから、たとえば、②に対応する例として、近場(直売所や地方スーパー、地元の加工センター)に新しく販路を求めるようになる。あるいは、これまではタブーだった野菜との混載や他の雑貨品との共同配送を試みる事業主体も出てくるだろう。
物流費用の高騰は、最終的には、20世紀の潮流だった「輸送園芸」の終焉というパラダイムシフトを加速することになるだろう。逆説的だが、その結果として、近距離輸送を促進して、切り花の鮮度が良くなるかもしれない。また、長距離を常温トラックや航空便ではなくて、冷蔵の船便や鉄道車両で運ぶという解決策もある。副産物ではあるが、輸送費の高騰は、この産業にとってすべてが悪いわけではない。そこに、新しいイノベーションの芽が生まれる可能性もある。
人間の働き方も変わるだろう。いつまでも24時間365日、無理を通して働いている時代ではない。そのような職場には、良い人材は集まらない。従業員に対する待遇がよくないと、トラックドライバーの採用などもままならない。つまりは、集客ができない店舗が消えていくのと同じ理屈で、雇用の確保できない職場は消えていくのだ。外食産業ではすでにそれが起こっている。いわんや、花産業でおや。