「ユニクロの花:日本一花を売るチェーンになる予感」『JFMAニュース』2022年2月号

 ユニクロ東京店(有楽町の旗艦店)の花売り場を視察した。2月9日午後の訪問だった。2022年5月発行JFMA編『お花屋さんの仕事基本のき(新版)』(誠文堂新光社)の執筆のためである。

 

 ユニクロの花のコンセプトは、「日常の花」である。UNIQLO FLOWER、Life Wear(普段着)と同じコンセプトである。店内のコンセプトボードには、「服を選ぶように花を選んでほしい」と明示されている。MD(商品政策)では、季節感を訴求することが謳われている。洋服は工業製品だが、花は農産物(=自然界からの産物)である。それでも、日常の花としてのポジショニングは、服の商品コンセプトと変わることがない。

花の価格付けも、服と同じである。バンドル販売が基本である。1束390円、3束990円、6束ブーケ1980円で値付けされている。入り本数で価格は調整している。そして、値段がわかりやすく買いやすい。午後14時から1時間ほど、売り場に立ってお客さんを観察していた。2か所あるレジに並んでいる女性客は、ほぼ途絶えることがなかった。

 売り場づくりは、垂直陳列とカラーバリエーションを基準に構成されている。基本的に、花の陳列方法も洋服と同じ考え方で統一されている。店ごとに陳列は少しずつ違っているように見えるが、色ごとにグルーピングして、垂直方向に花色を揃えるルールは同じである。

 花売り場がある店舗は現在、国内14店舗。台湾と中国でも花の扱いが始まっている。花の売り場が一般客にも浸透してきたので、取扱店数も増えてきている。花売り場を担当しているのは、ふだんは服を売っている店員さんである。花に関しては「素人」が取り扱うことにプラス面もある。一般人の目線から売り場を作ることができるからである。

 

 おもしろいと思ったのは、鮮度保持のために、エコゼリーを使用していないことである。浅く水を入れたプラスチックのバッグに、買い求めた花を挿すように入れて持ち帰るようにしている。もともとは、レジ前に行列ができるのを避けるために考えたアイデアだったという。廃棄物が出ないから、こちらの方がゼリーを使うよりもエコである。

 顧客の9割はF1層(20歳~35歳の女性)である。花を買うために来店する顧客がほとんどで、衣料品の関連購買は思ったよりも少ない。店頭で観察していると、ショッピングバッグは花だけという顧客が多い。好調に推移している花の売り場には、地方の店からも取り扱いのリクエストが来ている。ユニクロの全店で花が取り扱われるようになると、日本でいちばん花を売る小売りチェーンは、ユニクロやGUになるかもしれない。