大手企業や公的機関で組織のトップが交代するシーズンを迎えている。個人的な話になるが、わたしは大学院の研究科長をこの3月をもって退任する。法政大学に就職してから4回目の組織の長が任期満了になる。経営学部長を1回、大学院学科長(専攻主任)を3回も経験した。わたしの後継者は、選挙で選ばれた若手の教員である。若いとはいっても、情報科学が専門の52歳の教授である。
この人事は、いわゆる「禅譲」の形での平和な政権移行である。先々週、百貨店最大手の三越伊勢丹内部で起こった大西洋社長の辞任劇とはちがう。経営のかじ取りが難しい合併組織の内部では何が起こっていたのだろうか。いろいろと勝手に想像を働かせてしまう。
数年前のブログに書いたが、「社長はつらいよ」の世界なのだろう。少し前には、大塚家具の父娘による株主議決権争奪戦があった。二年前に日本経済新聞に連載された「私の履歴書」で、似鳥昭雄会長が母子の確執を赤裸々に語っていた。誰が社長の椅子に座るにせよ、社長職はうわべの派手さとは異なり、案外と辛いものなのに違いない。
そんなわけで、数年前に、「社長のしんどさランキング」というリストを作ってみたことがある。友人の某大手流通企業の2代目社長が、同窓生と会食したときの小話をもとに作成したランキングである。その時の結論は、社長の精神的な「しんどさ」のランキングは、ワーストから順に、①創業者の娘婿、②サラリーマン社長、③二代目経営者、④創業経営者となっていた。その後になって、このごろ脚光を浴びているプロ経営者などの場合はどうなるのだろうかと考え、「社長のしんどさランキング」を改訂しようと思った。
わたしの知り合いは、かつては創業経営者がほとんどだった。惣菜企業「ロック・フィールド」の岩田弘三社長、「俺の株式会社」の坂本孝社長、「ファーストリテイリング」の柳井正社長など。ところが、このごろ急にプロ経営者の友人が増えてきた。例えば、来年度から法政大学の経営大学院で客員教授に就任していただく「カルビー」の松本晃会長。松本さんは、商社マンから「ジョンソン&ジョンソン」の社長を経て、フルグラの「カルビー」にスカウトされた。同じく、柳井さんの下でユニクロの社長を務め、現在は「ローソン」会長の玉塚元一さん。わたしが『マクドナルド 失敗の本質』で取り上げた原田泳幸会長などは、その後の「ベネッセ」では専門経営者として大変そうだった。
それでは、わが花業界の社長さんたちは、「しんどさのランキング」ではどの位置にランクされるだろうか?また、経営者としてのパフォーマンス(業績)は客観的にどの程度に評価されるだろうか?
JFMAの会員でトップを務めている経営者には、なんとなく2つのタイプが存在していることがわかる。④創業者タイプと③二代目経営者タイプである。前者の典型的な例は、「青山フラワーマーケット」の井上英明社長。後者の代表的なケースは、「ヌーボー生花店」(長野県)の山崎年起さんと「花恋人」(奈良県)の野田将克さん。三人とも、しんどさランキングでは良好な位置につけていることになる。
最近になって、花業界でも、その他カテゴリーの社長さんが登場している。②生え抜きのサラリーマン社長さんと、⓪専門経営者タイプである。わたしの知る限りでは、①娘婿の例はない。さて、興味深いのは、花業界では一般社会の「しんどさランキング」に変動があるかどうかである。ご自身の会社の状況を、わたしにこっそりと内通してみてください。