地球上に住んでいる脊椎動物は、3つに分類できる。①人間、②家畜、③野生動物である。このカテゴリーは、生物学的な分類ではない。動物たちを人間に対する役割(有用性)で分類した区分である。つまり、家畜と野生動物の違いは、農作業や輸送といった経済活動や、食べ物(食肉)として供されるため、彼らが人間の生活圏の際にいるかどうかの違いである。
ところで、地球上の脊椎動物の重量シェアを推計したデータがある。オランダ自由大学のハリー・エイキング博士のインタビュー(2019年10月)で、このデータの存在を初めて知った。2018年時点の重量シェアは、人間(30%)、家畜(65%)、野生動物(5%)である。2050年ごろに、重量シェアがそれぞれ、27%、70%、3%になると推測されている。家畜のシェアが高くなるのは、中国などの新興国が経済成長で肉を食べるようになるからである。
この比率は、100年前にはどうだったのか?詳しい計算式は省くが、小川の推論(2022年4月13日のブログ参照)では、人間(7%)、家畜(3%)、野生動物(90%)となっている。当時の人口は18億人で、いまの5分の1である。しかも人類は「草食」だった。家畜は農耕や輸送に使われていたから、人間と家畜の比率が逆転しているのは当然のことである。
この先に、野生動物がさらに減少していく。そのことは、生物多様性にとって大きな意味を持っている。たとえば、コロナウイルスやなどパンデミックに対処するための創薬は、森林や原野で育っている植物や野生動物に由来するウイルスやバクテリアの成分からなる。
二番目に、畜肉(とりわけ牛肉)をたくさん食べることは、地球温暖化にマイナスの影響を与える。飼料のトウモロコシなどを家畜に再投入することで、エネルギー効率が悪くなるからである。大豆やトウモロコシから、タンパク質などを人間が直接摂取すれば、CO2の排出量が10分の1に減らせることがわかっている。貴重な水を浪費することもない。
というわけで、いまや欧米では、「Meat-Free Monday」(週一回は、肉を食べない日)が叫ばれている。マクドナルドなどでは、大豆ミートや植物由来の人造肉などが、ハンバーガーのパテの代用品として使用されている。地球環境を守るために、動物性タンパク質から植物性タンパク質への代替が起こっているのである。これは自然な流れである。
わたしは、20年前からこの現象を「植物の時代」の再来と呼んできた。人類はふたたび、食べ物の中心に「植物」を配置するようになる。そして、植物には別の効用がある。それは、自然の森林や野原、公園や庭(植栽)が人の心理に与えるプラスの効果である。
ちなみに、植物の有用性については、宍戸純さん(大田花き)が、次のような「花と緑の効用」(医植同源)を整理してくれている(「2022年度フラワービジネス講座」から)。
(1)癒し(ヒーリング)の効果、(2)花色による効用、(3)ふれあいによる効用、(4)香りの効用、(5)物理化学作用。
(1)は、森林の中で受けるフィトンチッドのような植物全体の効用であるが、その他は、五感(視覚、触覚、嗅覚)に訴える植物の作用である。
産業革命(工業化)と食の西洋化(文明開花)を超えて、わたしたちは、ふたたび「植物の時代」に回帰していく。