【巻頭言】「花業界の課題は山積み(下):異常気象、品質保持、過剰品質、物流問題」『JFMAニュース』2024年10月20日号

今回は続編になる。先月号の論点をまとめておく。花業界の課題を2つの要因に分けて論じた。①外部環境の変化と②花業界内での問題である。外部環境要因は、前提条件として受け入れた上で、それに対して対応を考えるしかない。

1 外部環境の変化(気候変動と物流問題への対応)
 地球温暖化で夏期の気温が上昇して、栽培環境が大きく変化した。品目によっては栽培時期と栽培場所を変えるタイミングまで来ているとの意見が出されていた。夏場の気温の上昇で、従来は高冷地と言われていた場所で花栽培が困難になってきている。苗物などでも、国内での栽培を諦めざるをえない品種も出てきた。9月の理事会で三好社長が発言している。その部分を引用する。

「高温対策としては、1.以前の環境に戻せるような設備投資をするか、2.植えつける時期を変えるか、3.栽培する場所を変えるか、4.栽培する品目を変えるか。この4つしかないと思います」。
三好さんは、流通する品種・品目が変わっていくだろうと述べている。「例えば、従来は涼しいので栽培できなったトロピカルな植物などが国内でも生産できて、市場流通に乗るかもしれない」など。

 2つ目は、物流問題である。ドライバーの残業時間規制により長距離輸送ができなくなったことと、配送頻度が落ちていることである。運賃が割高になったことで、輸送方法を工夫すること(例:海上輸送)や積載効率を高める努力をしないと、輸送問題の2重苦(高い、運べない)は解決しないだろう。
待機時間短縮のための台車、パレット導入も進めていかなくてはならない。また、在庫期間が長くなったことで鮮度劣化が起こっている課題に対して、冷蔵保管とコールドチェーンの確率が必須である。

2 業界の内部要因:鮮度保持と価格問題の解決に向けて
 鮮度保持の重要性については、ほとんどの理事が指摘していた。東北地方の草花類の生産者や西日本のランの栽培業者で、品質劣化が起こっている原因に気づいていない生産者が多い。なぜいまクレームが多くなったのかについて、札幌の花屋さん(薄木さん)から示唆的な話を伺った。
 薄木さんは、クレームに対する方針を根本的に変えたという。従来は大きな箱で大量に購入していたので、多少の品質劣化には目を瞑ってきた。クレームを入れないようにしていたのは、相互理解と総合的なコスト計算の結果である。しかし、それでは(採算面で)花屋さんのためにも、(課題の解決面で)出荷者のためにもならない。そのために、出荷者にはきちんと問題点を指摘するようにすることにした。
なお、クレームの原因は、気温上昇に伴う輸送時の蒸れ、更には輸送時間の延長と混載によるエチレン濃度の上昇などによるようである。
 それとは対照的な問題点が、理事会では議論された。それは、日本の花が過剰品質(オーバースペック)になっていないのかという論点だった。
 海外からやってくる花業界人が日本の花屋さんで驚くのは、素晴らしい品質水準である。ところが、立派すぎる品質への要求が、生産段階から消費段階までで余分なロスを生じさせている。また、ホームユース用のニーズの高い短茎の花もなかなか出回らない。この点を見直さないと、花産業の生産性が高まらない。
 この問題が解決できれば、コスト低減だけでなく、市場流通できなかった規格の花が流通して、新しい需要の開拓が可能になるだろう。

コメント