「お墓参りの復活」『JFMAニュース』(2020年8月20日号)

 2年前(2018年)の本コラムで、「墓参りの花の未来」(8月20日号)という記事を書いています。3年ぶりに秋田に帰省して、中学校の同期会に出席しました。その時に見かけた「墓参り渋滞」の観察記録でした。今年のようなコロナ感染騒動とは無縁で、東京人が自由に帰省できたお盆休みでした。わずか二年前のことで、昔日の感があります。

 

 あの時は3年ぶり、父親の墓参りでした。寺町近辺の国道を通りましたが、墓参のための車が数珠つながりに連なっていました。地元の食品スーパーに花を買いに立ち寄り、青果売り場の手前に仏花が山のように積みあがっていました。5本入りで580円から980円。小菊やカーネーション、リンドウが中心でどんどん売れていました。
 
 私の実家もそうですが、両親の墓守ができなくなりかけています。地元で呉服屋の商売を継承した弟には子供がいません。あと10年もすれば、首都圏に移住した私たちの兄弟は帰省ができなくなります。そうなると、仏花が確保してきたふたつの「花の座」(お墓と仏壇)が失われるとういう趣旨のコラム記事でした。
 ところが、今年は墓参りに異変が起こっているようです。JFMAメンバーの「(株)翌日配達お花屋さん」の小川順子社長からは、お盆の最終日に、「今年のお盆は絶好調です」とメールが届きました。「今年は、“コロナで帰れないのでお花を送ります”というメッセージがかなり多かったです。コロナバブルです。箱がなくなって走り回りました」(小川さん)。
 1ヶ月先には「敬老の日」(9月21日)が控えています。お盆と同様に、私のような老人は、コロナ感染が危ないので故郷には受け入れてもらえません。関西に住んでいる子供たちとも、感染が危ないので会えないでしょう。笑い話ではないですが、小川順子さんからは、「次回(敬老の日)は、花も箱もきちんと仕入します!」とのお返事がありました。

 お盆が終わった8月17日、もうひとりのJFMAメンバー、金沢市在住の佐藤常男さん(「㈲フラワーランド」)から、LINEにメッセージが届きました。
 「金沢のお盆は、自宅の墓には花を、親戚の墓には“きりこ”(金沢独自のコミュニケーションツール)をお供えする風習があります。きりこは、先行で購入されるため墓参りの動向のバロメーターになります。先日ご連絡させていただいた“墓参りが伸びる”との予測がドンピシャ!でした」(佐藤社長)。
 佐藤さんは、お盆やお彼岸の仏花を産地と契約取引しています。「今年は、地元スーパー、セルフ販売店舗で1日の売り上げが、対前年比20%増の店もありました」(佐藤さん)。実店舗でも、量販店の仏花販売は好調のようです。結局のところ、遠くには行くことができないので、地元に残った皆さんも、近場の墓参りに行ったと思われます。「能登方面に配達に行ったのですが、県外ナンバーは減って、地元金沢のナンバーがほとんどでしたね」(佐藤さん)。

 この傾向は、アフターコロナの日本で、今後も続くものなのでしょうか?
 2年前の予見(主張)は次のようなものでした。私としてはめずらしく、花産業と仏花の将来予想に迷いを感じています。
 「切り花の将来を考えると、仏花の代替需要を開拓する必要がある。日々の生活とパーソナルギフトで花の需要を開拓するしか、花産業に未来はない」(2018年8月20日号、小川孔輔)。それでも、花産業の新しい未来を拓くお手伝いを続けてはいます。