松島さん(JFMA事務局長)と今朝がた(5月13日)、母の日の動向について意見を交換した。ほぼ毎年、わたしは全国の花関係者に電話調査をしているが、その「答え合わせ」のため、松島さんには母の日の翌日に連絡をとらせてもらっている。
松島ブログに「母の日」(5月12日)という記事が掲載されている。その記事を15分ほどの電話会議のあとで再読してみた。「母の日前のお花屋さんの店頭を見る限りはどこも賑わっていてホッとする。もっとも見たところは駅ナカや駅ビルなどの人通りが多い恵まれた立地のところばかりで母の日云々を言ってはいけないとは思うが」(松島ブログより)。
松島さんが指摘するように、鉢物でカーネーションがアジサイに主役交代した感があったのが、ここ数年の母の日の特徴だった。しかし、今年はその他の品目、「同じ鉢物でもベコニア、ブーゲンビリア、カラーなど品目が広がっている」(同ブログ)。切り花では、ガーベラ、ひまわりなども、母の日アイテムに仲間入りするようになった。「母の日=カーネーション」ではなく、「母親に“花”を贈ること」が常識になったことは、花業界にとっては福音なのだろう。
わたしも松島さんほどではないが、日暮里の青山フラワーマーケットをはじめ、母の日当日にマラソンで走りにいった栃木県内の花屋さん(岩井生花店さんなど)も覗いてみた。全国にいる仲間たちに、「母の日にお花を贈ったかどうか」をたずねてみている。店舗のほうも、北海道から広島まで、全国的にどの店もにぎわっている。
花業界にとって、母の日は年間を通して最大のイベントである。しかし、母の日の好・不調は、ふだんの仕事の結果でもあるように思う。松島ブログにもあるように、「お客さんからお花屋さんとして普段から認められているお店=ブランド店は強いなと改めて思う。信頼、評価の入った分価格も高く設定できるということだ」(松島ブログ)。
さて、今年の母の日が好調に推移した背景には、ふたつの要因が絡んでいるのではないかと思っている。ひとつは、「令和の改元」にあたり、世の中の雰囲気が明るくなったことである。5月の連休に入ってから消費動向は上向きである。「消費は心理学である」と言ったのは、セブン-イレブン創業者の鈴木敏文氏である。消費は時代の気分で動くものだ。
先週末の花店観察では、一般に花を買わないと言われている若い男性を、店頭でたくさん見かけた。空気が変わったからだと思われる。まちがいなく、人手不足で若年層の賃金が上昇していることがこれに関係している。若者の財布に余裕が生まれてきたのではなかろうか?
二番目は、人が集まる場所に変わったことだろう。かつて仲間と集まる場所は、ビジネスマンや学生ならば居酒屋、家族やご近所さんならばファーストフード店やファミレスだった。しかし、わたしの周囲でいま顕著な現象は、ホームパーティが増えていることである。親しい友人たちが頻繁に「ホムパ」を開いているだけではない。わたしの周りでは、近所に暮らす親戚や職場の知人、親子を巻き込んでの客寄せが増えている。日本の社会で、少し前までは考えられない変化である。
その集まりには互いに食べ物を持ち寄るわけだが、隠れた持ち寄りアイテムがお花である。持ち寄るのは、鉢物でも切り花でもよい。むかしから欧米人がしているように、ホームパーティとお花は相性がよいのである。その集まりの手土産に、お花が新しい役割を見出している。母の日のお花も、そうした再発見のひとつの可能性がある。