【JFMAニュース・巻頭言】「フラワーバレンタインが、特別なイベントではなくなった?」(2016年2月号)

 今年もフラワー!バレンタインが無事に終わった。全国各地の友人・知人たちから、「フラワーバレンタインのイベントをNHKの報道番組で見ました。定着してきましたね!」といったメールをいただくことが例年になく多かった。「花の国日本協議会」が作成したピンク色の共通ポスターを、近くの花屋さんや園芸店で写真に撮ってメールに添付して送ってくれたひとも数人ではない。店頭にディスプレイされたバレンタインの花と、それを抱えた笑顔の女性たちの写真が自然に収集できるようになった。


いまや花業界の関係者から送られてくる写真は少数派である。これは素晴らしいことだと思う。フラワーバレンタインは、「日頃の感謝の思いを込めて、男性から女性に花を贈る」という特別なシチュエーションを想定したイベントだったが、行事としては“日常的になりつつある”と感じるようになった。6年目ともなると、一般の人がバレンタインに花を贈ることに、良い意味で特別感を持たなくなったからだろう。

 さて、今年のバレンタインは、日曜日にあたっていた。わたしは大学の教員である。これまでは、研究室に花屋さんから約30束を届けてもらい、同僚の教職員や大学院生たちに配ってきた。仕事帰りに、知り合いの女性たちの職場まで出向いて、あるいは乗換駅で帰宅途中の彼女たちを捕まえて花束を手渡していた。

 ところが、今年のバレンタインは日曜日だから、仕事場に出て来られない女性たちには花を手渡すことができなくなった。そこで、一計を案じて考え出したのが、花束の写真を撮ってLINEから送る方法だった。これならば、いつもは現物の花束を贈ることができない、首都圏以外に居住している女子たちにも、花(の写真)を届けることができる。英語のDeliveryには、「商品を配送する」の意味だけでなく、「メッセージを伝える」という意味もある。
花屋さんから届けてもらった実物は、暖色系の小さなラウンドブーケだった。ガーベラとカーネーションを中心に組んだピンク系の花束と、同じくガーベラとラナンキュラスの黄色を組み合わせた花束の二種類。10束ずつを用意していたのだが、写真に撮って送ったのは、黄色を基調とした「ビタミンカラー」の花束のほうだった(写真)。

 全国各地の女性たちに10通ほど送ったのだが、すべてのメールにお礼の返事が戻ってきた。そのうちの1通を紹介する。関西地区にある花屋の店長さんからのものである。

 わたしが写真に添えて送ったのは、「写真で、ハッピーフラワーバレンタイン!」というメッセージだった。女性店長さんからのお返事は、
「ありがとうございます。わーい。(写真を)保存しました。
ラナンキュラスの花言葉は、『とても魅力的』 ガーベラは、『元気』。
ホワイトレースは、『可憐な心』 麦は、『希望』。いいですね。」
 「希望に!一票。すべて完璧な花言葉。で、ご商売は?」(わたし)
 「商売は、昨年の12日~14日 3日間。売上対比は122%でしたよ。
  男性のお客様も増えてました。よかったです。」

 フラワーバレンタインが、ふつうの行事として定着しつつあるらしい。その証拠が、若い男性客の増加である。「花の国日本協議会」(フラワーバレンタイン推進委員会)が毎年発表している店頭販売データやネット調査をみても、キャンペンを始めて4年目ごろから、20代~30代の男性が顧客として増加している。

 そして、母の日やクリスマスなど、その他の物日にも、バレンタインの効果が波及している。もの日になると、花屋さんの店頭に男性客が溢れるという光景は珍しくなくなっている。とすると、ふつうになったフラワーバレンタインで仕掛けるべきは、従来の単純なプロモーションとはちがった手法が期待される。ふだんでも花を買ってくれるようになった若い顧客の要求は、すでに高度化しているのではないか。わたしたちは、そうしたニーズに適切に応えているだろうか?