来月から消費税が8%に上がる。これは、いずれ諸外国のように、消費税率が10~15%に上昇する一里塚である。それでは、4月から花小売業は、3%分の増税に対してどのように対応すべきだろうか?花の売価に対して、2つのことを決めなければならない。(1)原価上昇分を価格に転嫁すべきかどうか?あるいは、値段をアップできるかどうか?(2)価格表示の仕方を従来からの「総額表示」(内税方式)とすべきか、それとも「税別表示」(本体価格+税)とすべきか?
結論を先に言うと、消費税率8%までは、花小売専門店は「総額表示」で実質値上げ(内税方式を維持)を、量販店は「総額表示」で価格据え置きすることを推奨する。個別の事情もあるだろうか一般論として主張することは危険だが、以下のような理由から、専門店と量販店では異なる対応になると予想する。
そもそもモノやサービスの値段はどのように決まるのだろうか?3つの要因によって、合理的に価格は決められる。①顧客の価格(値上げ・値下げ)への反応、②必要とされる利益率(原価率・粗利の構造)、③競争相手の値段のつけ方。この3つである。
まずは、増税による「3%の上昇分」を消費者に転嫁できるかどうかである。あなたが専門店ならば、仕入れのコスト(原価)は間違いなく上昇する。②従来と同じ利益率(たとえば、粗利率40%)がほしいとなると、売価は上げざるを得ない。そのとき、消費者が値段の上昇を受け入れてくれるかだが、専門店に関してはおそらく3%程度の値上げは通るだろう。なぜなら、1月あたりから、不動産や宝石、ブランドバッグなどの高額品の売上が対前年比3割程度も伸びている。花は消耗品だから駆け込み需要はないが、贅沢品やギフト需要に関して、消費者は増税後の心構えができている証拠である。だから、目立たない3%程度の上昇ならば、長期的に消費者は慣れてしまう。それが証拠に、自動販売機で売られるソフトドリンク類は、120円から130円に値上げされることが決まっている。
量販店はどうだろうか?専門店とは少し事情が違っている。法律の上では、今しばらくは、外税と内税のどちらでも選べるのだが、業界団体の「日本スーパーマーケット協会」などは、従来からの「総額表示」を維持することを決定している。総額表示の場合は、税金分で価格が上昇したことを、消費者に合理的に説明できない。スーパーで取り扱うアイテムは、全般的に、①消費者からの値上げへの反応が大きいことが分かっている。他方で、PB商品の開発などで、大手スーパーの仕入れの交渉力は従来にまして高まっている。「3%」は、標準的なスーパーでの売上高経常利益率に相当するが、今回に限っては、調達力と販売力で価格の据え置きをカバーできるだろう。だから、ほとんどの大手量販店に関しては、「総額表示」で価格は据え置くことになるだろう。それは、③同業者内での競争がし烈だからでもある。
なお、消費税率が10%に上昇したときは、スーパーマーケットの業界としても「総額表示」を見直すことになるだろう。国会でも説明したが、米国は外税方式を採用している。税負担を明らかにする方向、納税意識を高めるためでもある。欧州は内税方式をいまだに採用しているが、グローバルには「分離方式」に傾いている。さて、4月からは、わたしの予想通りに事態が進行するかどうか。一か月先が楽しみである。