【JFMAニュース・巻頭言】「日本の農業と食の未来を変える」(2015年12月号)

 年明けの1月11日に、JFMA新春セミナー・賀詞交換会を開催する。今回のセミナーのテーマは、「農と食の流通を変える~花き流通は?」とさせていただいた。ゲスト講師は、ローソン社長の玉塚元一さん。基調講演は、「ローソンがセブンを超える日」で、講演後のパネルディスカッションには、JFMA会員企業メンバーであるカインズホームの土屋裕雅社長をお迎えしている。小川が進行役を務めるが、青山フラワーマーケットの井上英明社長にもパネラーをお願いしている。


今回は、経営大学院とイノベーション・マネジメント研究センターとの共催とさせていただいた。ビジネススクールの大学院生や卒業生、来年から大学院で学びはじめる社会人学生もセミナーを受講できるようにした。大学院生の卒業プロジェクトに、農業や食のテーマが増えてきている。時代の興味は、食と農に大きく向いている証拠である。全体のテーマを「農と食の流通」にしてこと、玉塚社長に基調講演をお願いしたことの意図を説明しておきたい。

 玉塚さんとはじめてお会いしたのは、2003年である。当時の玉塚さんは40代前半で、創業者の柳井正社長(会長)に請われて、ファーストリテイリングの社長に就任したばかりだった。本社が蒲田にあったころで、近くのレストランで三人で昼食をとったことを覚えている。なぜ記憶が鮮明かといえば、ユニクロは当時、野菜事業(SKIP)に乗り出して大失敗した直後だったからである。ちなみに、事業責任者の柚木治さんは責任をとってユニクロを辞めず、その後は子会社のGUで社長として大活躍している。「事業撤退で失った赤字28億円はきちんと返しなさいよ!」と柳井さんに言われて、しぶじぶ居残ったあとの頑張りの成果である(柚木さんから聞いた本当の話である)。

 ユニクロが野菜事業で失敗したことが縁で、玉塚さんとお会いすることになった。再会も特別だった。2月のある日、ローソンの社長室から研究室に電話が入った。1月に出版したばかりの『マクドナルド 失敗の本質』(東洋経済新報社)を読んで、玉塚さんが、「いたく感激しました!」と直接電話をくださったのである。何かの深い縁を感じた。それまでも、ナチュラルローソンの店舗展開やローソンファームの農業参入を興味深く観察していた。早速に千葉の農場や野菜加工場を見学して、店舗運営担当者や商品開発責任者にインタビューさせていただいた。そして、大崎の本社では、関連部署の全員を集めて、ローソンが目指す将来の店舗展開と食材の調達戦略(農業参入の意図)について討議させていただいた。その後も「ローソンファーム社長会」や「ナチュラルローソンのオーナー向け展示会」、ローソン40周年記念式典」に参加させていただいた。

 ローソンの事業に関してわたしが得た印象はつぎのようなものであった。一般に言われているのは、グローバリゼーションの進展で日本の農業はきびしくなる。生産者の高齢化や人手不足で、国内の事業環境も厳しさを増している。したがって、日本の農業や食ビジネスの未来は暗い。しかし、わたしの見通しは違っている。日本と農業と食品加工業に関する悲観論に対して、ローソンのふたつの事業(ナチュラルローソンとローソンファーム)が、具体的な代案を与えているではないだろうか?

 今回のセミナーでは、ローソンが農業と食をどのように変えようとしているのかを、経営トップの玉塚さんに語っていただきたいと思っている。コンビニエンスストア業界でトップの座に君臨しているセブン-イレブンと、ローソンが目指す路線はどのような点で戦略が異なっているのか。そして、いつの日かローソンがセブンを超える可能性が示されることになるはずである。わたしたち花業界人も、ローソンの取り組みと戦略性に学ぶことができると信じている。