ゼミ長の与羽さんから、水曜日の調査結果が送られてきた。「小川仮説」の妥当性については、彼女のコメントつきである。ゼミ生全員が7グループに分かれて、市ヶ谷周辺のコンビニ(5店舗)とドラッグ(2店舗)の入店率(入店客/通行人)を調べた。調査開始前に4つの仮説を提示しておいた。与羽さんの評価は2勝2敗だった。
<小川のコメント>
①仮説1(○):コンビニほうがドラッグより入店率が高い
結果は、僅差でコンビニの入店率が高くなった。かろうじて、仮説は支持されたが、コンビニの平均入店率(11.4%)>ドラッグストアの平均入店率(10.5%)である。思った以上に、その差に小さい。アパレルなどで調査したこともあるが、コンビニとドラッグでは、業態による利用目的の差が一時期より小さくなっているのかもしれない。つまり、ドラッグがコンビニように利用されている?
②仮説2(×): セブンの入店率がローソンとファミマの入店率より低い
調査結果と与羽さんのコメントを見るとわかるが、4つの仮説のうち、わたしがもっとも意外だと思ったのは、セブンイレブンとローソン、ファミマを比較したとき、セブンの入店率が高いわけではないことである。セブンと二社の間には、日販で12~15万円(15~18%近く)の開きがある。その結果として、3社の間の入店率(客数)に大きな開きがあると考えていた。
結果は、ローソンとファミマの方がセブンより入店率が高いという結果になった。立地によるのでなんとも言えないのだが、セブンの方が良い立地(通行人数が多い)を得ている可能性が示唆される。
③仮説3(×): ココカラファインの方が、福太郎より入店率が低かった
ドラッグ二社の間では、駅近くで通行人数が多いココカラファインのほうが、駅から離れている福太郎に比べて「入店率が低かった」。もしかすると、入店率と通行人数には負の相関があることが考えられる。わたしの仮説は完全に逆だった。代替仮説を考える必要があるかもしれない。
④仮説4(○): 通行人のうちで女性比率が高いと、入店率が高くなる
これは予想通りだった。女性の通行客が多い場所(通り)は、小売業が繁盛する可能性が高い。女性のほうが、買い物機会が多いというのが小川仮説の論拠だった。データは、その予想を支持していた。
⑤その他: 都心部におけるコンビニとドラッグの入店率の平均値が、10%前後であること。
仮説を提示はしなかったが、これまでの経験で、コンビニの入店率は、8%~15%と考えていた。今回の調査では、それが5%~20%になっていた。予想とほぼ合致していることが分かった。小売業の収益性を考えるうえで、この比率は大切な指標になる。
以下のデータは、15分間の調査結果を要約したものである。
調査の時間帯は、通行人が多くも少なくもない平均的な時間である。
ーーーーーーーーーーーーーーー
<ゼミ生たちによる調査結果>
入店率調査結果
・調査時間 15:45〜16:00
・通行数の中に入店数は含まず
① セブンイレブン(九段南3丁目店・靖国通り)
男 女 計
通行人数 79 87(52%) 166
入店人数 21 13(38%) 34
(入店率):17%
② セブンイレブン(九段北4丁目店・都営市ヶ谷入口横)
男 女 計
通行人数 151 68(31%) 219
入店人数 5 9(64%) 14
(入店率):6%
③ ナチュラルローソン(都営地下鉄市ヶ谷店)
男 女 計
通行人数 45 105(70%) 150
入店人数 2 6(75%) 8
(入店率):5%
④ ファミリーマート(市ヶ谷店)
男 女 計
通行人数 131 62(32%) 193
入店人数 19 2(10%) 21
(入店率):10%
⑤ ローソン(飯田橋サクラテラス店)
男 女 計
通行人数 129 149(55%) 278
入店人数 36 30(45%) 66
(入店率):19%
⑥ ココカラファイン(市ヶ谷駅前店)
男 女 計
通行人数 118 98(45%) 216
入店人数 9 19(68%) 28
(入店率):11%
⑦ くすりの福太郎(九段北店)
男 女 計
通行人数 98 48(33%) 146
入店人数 14 9(39%) 23
(入店率):14%
【入店率ランキング】
1位:ローソン(サクラテラス)・19%
2位:セブンイレブン(靖国通り)・17%
3位:くすりの福太郎・14%
4位:ココカラファイン・11%
5位:ファミリーマート・10%
6位:セブンイレブン(都営市ヶ谷横)・6%
7位:ナチュラルローソン(都営地下鉄市ヶ谷)・5%
【女性比率ランキング】
(通行人)1位:ナチュラルローソン・70%
2位:ローソン(サクラテラス)・55%
3位:セブンイレブン(靖国通り)・52%
4位:ココカラファイン・45%
5位:くすりの福太郎・33%
6位:ファミリーマート(市ヶ谷)・32%
7位:セブンイレブン(市ヶ谷横)・31%
(入店数)1位:ナチュラルローソン・75%
2位:ココカラファイン・68%
3位:セブンイレブン(市ヶ谷横)・64%
4位:ローソン(サクラテラス)・45%
5位:くすりの福太郎・39%
6位:セブンイレブン(靖国通り)・38%
7位:ファミリーマート(市ヶ谷)・10%
【小川先生仮説検証】
<仮説1> CVS > DRG(入店率)
コンビニの入店率は、ドラッグストアの入店率より高い
<検証1> ◯
コンビニの平均入店率は11.4%
ドラッグストアの平均入店率は10.5%
僅差ではあるが CVS>DRGである
<仮説2> セブンイレブン > ファミリーマート、ローソン(入店率)
平均日商が大きいセブンイレブンはファミマやローソンより入店率が多い
<検証2> ×
セブンイレブンの平均入店率は11.5%
ファミマとローソンの平均入店率は19%
場所によって大きく差があるが、ファミマ・ローソン>セブンイレブン
<仮説3> ココカラファイン > 福太郎(入店率)
駅近くでコーナーに店があるココカラファインの方が、
人通りが少ない福太郎より入店率が高い
<検証3> ×
福太郎(14%)>ココカラファイン(11%)
駅の近いココカラファインの方が通行人数は50人以上多いため、
通行人数に対して入店率は伸びなかったのではないか
<仮説4> 女性比率 > 男性比率 → 入店率が高くなる
通行人内での女性比率が高いと、入店率が高くなる
<検証4> ◯
ナチュラルローソンは駅の利用者も含まれ、女子学生も多かったため、
通行人の女性比率は高かったが、入店率は最下位であった。
しかし、そのほかの店舗では通行人の女性比率と入店率は比例している。