「2016年の母の日」 『JFMAニュース』(2016年5月20日号)

 昨日配布された『JFMAニュース』の巻頭言は、少し前に本ブログで紹介した「母の日特集」を、さらに詳細にした内容になっている。サブタイトルは、「前年割れの店が多い中で、健闘した店はどのように対応していたか」。調査店舗(チェーン)数も、倍増してある。

 「2016年の母の日」 『JFMAニュース』(2016年5月20日号)

 花業界にとって、母の日は年間で最大のイベントである。JFMAの事務局でも、セミナーや海外ツアー、理事会の開催にいたるまで、母の日の前は絶対に行事を手帳に書き入れてはいけないことになっている。業界各社の商品企画チームは、半年くらい前から準備をはじめて5月の第二日曜日に備える。
 ところが、どんなに用意周到に準備をしても、このときだけは通常日・通常週の5倍から10倍ほど花が売れてしまう。現場では数日間、ほぼ徹夜続きで睡眠時間がとれなくなる。よく売れてもぐったりとして疲労感が残る。思ったほど売れなければ徒労感に苛まれる。どちらにしても母の日はたいへんなイベントである。

 さて、今年は、ゴールデンウイーク(5月5日)明けから第二日曜日(8日)まで、準備期間が中2日しかなかった。6日が金曜日で全国的に雨。7日の土曜日から母の日商戦に突入したから商売が難しくなった。業界用語で、「日並びが悪い」のである。働く側の立場からは、仕入れ先(卸や仲卸)や委託加工先が休みになったり、花束の加工作業のためのパートさんが集められなくなる。つまり供給側でブレークがかかるのである。
 花を贈る側から見ると、こちらも買い手としてはちょっと困った気持ちになる。今年などは10連休にした会社などもあったようだ。長い休み明けでは花を買う気持ちが失せてしまうのである。個人的にも、わが大学では5月2日が「創立記念日」で休むため、十数年前からは5月1日もついでに「レクリエーションデー」という休日にしてしまった。
 個人的に、10連休で休日を楽しんでしまったわたしなどは、母親に毎年の花鉢を送り忘れてしまった(別にフォローはしてあったが)。この辺の事情は、花業界の人でなくともなんとなく雰囲気を理解いただけるだろう。
 
 そんなわけで、今年の母の日は、業界全体としては昨年を割り込んだお店が多かった。しかし、全部が低調だったかというとそうでもない。筆者の聞き取り調査によると、ヒヤリングをした11社中で3社は、日並びが悪かったにも関わらず、昨年を大きく上回る実績を上げていた。その中から、善戦していた2社(D社とH社)の事例を紹介してみよう。
 D社は、昨年対比で売り上げは107%だった。好調だった理由は、雑貨に力を入れたからである。切り花と鉢物は昨年並みだったが、「来店してくれたお客さんが、最終的に目先の変わった雑貨やお菓子を購入してくれた」(経営者)。同じく鉢花でも、カーネーションではなくアジサイなどがよく売れていた様子である。ここ数年の傾向だが、母の日の商材として、標準的なカーネーション(切り花も鉢物も)が飽きられているようではある。
 H社は、量販店で委託販売している加工業者。今年の実績は、昨対で105%になった。通常月よりも輸入カーネーションが増えているが、今年は直近で市場価格が下がったため、大量に仕入れて「束の入り本数を増やす戦略」に転じた。花束の値段は変えずに、本数を2本から3本に増やして、お買い得感を出したわけである。

 最後に、例年になかった特徴を列挙しておく。相対的にネット販売が不調だった。この傾向は、食品などでも同じだったようだ。「今年の母の日は花だけではなく、食品の物量も増えず全体的に盛り上がりにかけました」(物流会社の社長)。
 聞き取りをした店名(チェーン)をアルファベットにして、既存店の前年比を示す。店舗によって、期間が3日間~10日間とばらついている。A社:95%、B社:98%、C社:95%、D社:107%、E社:103%、F社:96%、G社:101%、H社:105%、I社:99%、J社:100%。それでも、JFMA会員は、水面から頭が出ている企業が多かったことがわかる