年度が切り替わって、花を贈る機会が増えている。年度末には送別会や卒業式が、新年度を迎えると入学式や入社式の行事が控えている。人生のステージを区切るイベントに文字通り「花を添える」ことで、ともに歩んできた時間を確認する役割がお花にはある。
⻑く花に係わる仕事をしてきてよかったと思うことがある。それは、誕生日を迎えた友人や知人に花束をプレゼンするときである。花の団体JFMAの会⻑をしていることもあって、年間に50人近くに切り花や鉢物を贈っている。お花をプレゼントすると、相手からは必ず手紙やメールでお礼のメッセージが戻ってくる。その文面を見るのが楽しみである。
大学で教員をしていたころは、誕生日を迎えたゼミ生の女子たち全員に、バラの花束をプレゼントしていた。
お花を受け取った本人からは、ブーケの写真を添えて感謝のメッセージが届いた。そして、本人以上に喜んでくれたのが、娘さんのお母様たちだった。プレゼントのお花が伝えているメッセージは、「わが子が先生に大切にしてもらっている」という証だったのだと思う。
ところで、先日、次回作の本の取材で、25店舗のコンビニを経営しているオーナーをインタビューすることがあった。彼女は、地元静岡で著名な50代の女性企業家である。コンビニ経営のみならず、ニートの学生を社会復帰させるための支援活動にも協力している。
乗換駅の品川で、新幹線の列車が入線してくるまで30分ほど時間の余裕があった。ふと見ると、コンコースの向こう側に「⻘山フラワーマーケット」の赤い看板が見えた。コンビニの店舗を訪問したあと、知り合いのうなぎ屋さんで食事をすることになっていた。
「あなごや」(うなぎ屋の店名)での会食には、取材に同行してくれるコンビニ本部の広報担当マネージャーの女性も参加してくれることになっている。また、法政大学の静岡サテライトキャンパス(経営大学院)で学んだ男女2人の小川ゼミ生が、あなごやの女将に事前に連絡をとってくれていた。
会食の席に女性がたくさん参加することもあって、手土産に花束を用意することにした。男性にしてはめずらしく、わたしは花店でお花を選ぶことが好きである。贈る相手の生活ぶりや好みを想像して、花の種類やサイズ、色合いの組み合わせを考えるのがおもしろいと思うからである。
この日のブーケは、コンビニ(社名:有限会社アクティブ)の女性オーナーには、元気が出る⻩色とオレンジのバラとラナンキュラスの大きな花束。元大学院生の女子(お子さんが生まれたばかり)には、マーガレットとシャンペトル風のグリーンの組み合わせの小さなブーケ。あなごやの女将さん(70歳代後半で白髪)には、白いダリアをナチュラルなテイストのアースカラーの包装紙で包んだ上品で清楚なブーケを用意した。
プレゼントした3人の方には、簡単にお花の説明をしてから、わたしの手から直にブーケを手渡した。皆さん、満面の笑みでブーケを受け取ってくださった。ひさしぶりのうなぎ屋の会食では、会話も大いに弾んだ。
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