新しい街に移ってきてから三週間が過ぎた。元ゼミ長の山口には、急きょ引っ越しの手伝いを頼んだり、娘のともみには、週末に京都から上京してもらった。部屋のレイアウトを決めてもらうためである。そのときに開拓したうなぎ屋には、その後も足しげく通っている。
4月24日に移住してから、藤田屋には3週間で4度も足を運んでいる。最初の日は、夕方の7時半の到着だった。ところが、ママさんからは、「ごめんなさい、うなぎは売り切れです」と言われ、店内の椅子に腰を掛けさせてもらえなかった。仲良しになってから聞いた話では、要するに、「一見さんお断り」だったのである。だから、正確には3度の来店である。
来週(24日)も、友人の秋元さんと杉野さんを、ディープな東京下町、森下町にご案内することになっている。もちろん、予約しているのは藤田屋である。うなぎを食べてもらうのではなく、ユニークなママさんと、常連さんたち(>70歳)との会話を楽しんでいただくためである。
この頃は、そんな話を宣伝しているせいで、わが家への来訪見学の希望者がどんどん増えている。しかし、わたし自身が新しい街を十分に探索できているわけでもない。たまたま入った二つの店(もう一つの店は、焼き鳥屋の「太鼓」)が気に入って通っているだけである。なじみの店はまだ数軒だけ。
この調子でいくと、森下の街歩きで達人の域に達するまでには、そうとうの時間がかかりそうだ。その機が熟すまで、松島さん、岩崎さん、少々お時間をください。しばし下町の勉強をしておきます。
なんでまた下町に移住を決めたのか。昨年来、深夜の帰宅で体力的な限界に達していたからだった。通勤の便を考えて、都内にセカンドハウスを持った。しかし、これが初めての”上京”ではない。20年ほど前に、千代田区九段南に1LDKのマンションを借りていた。大学の研究室から歩いて3、4分のところである。研究室で仕事をしていると、人の出入りなどがあって落ち着けない。だから、平日は九段南の部屋で仕事をしていた。
あれから20年。今度は、墨田区の立川(たてかわ)に住まいを移転してみたのである。この街の空気に体がなじんでくるのは、いつ頃からだろうか。そう思って、千葉の自宅でしているように、早朝のマラソン練習をはじめている。移って三週間になるが、ほぼ毎日、隅田川のほとりを走っている。白内障の手術で二か月間、まともに走れていないから、ゆっくりと走っている。
おかげさまで、いつのころからか、隅田川に沿って東京都が遊歩道を整備してくれている。ジョギングのランナーより、犬を連れて散歩しているひとのほうが圧倒的に多い。年齢、性別、国籍もバラバラ。ときどき、犬にほえられそうになる。自分が”犬キャラ”(わんすけ先生)を標榜しているくせに、実は大きな犬には、からっきし弱いのだ。その昔、秋田犬に手のひらをかまれたことがあるからだ。
お気に入りのジョギングコースは、隅田川テラスから川を下る8KM~10KMのコースだ。約50分で立川のマンションに戻ってくることができる。
雨上がりのときなどは、その逆のコースも素敵だ。その場合は、森下のマンションから三つ目通りに出て、そこから木場公園まで下っていく。木場公園で緑の冷気を思いっきり吸い込んで、清澄庭園の裏側(中村学園)から隅田川テラスに抜ける。今度は、隅田川を遡上してマンションに戻ってくる。
わたしは、どちらかといえば、川を下っているときの方が気持ちがよい。なぜなのだろう。不思議な気がする。ふつうのマラソンのレースでは、坂道を登っていくほうが得意である。膝を傷めそうな下り坂は、どちらかといえば苦手だからだ。ダンスが苦手なことと関係がありそうだ。下りの坂道では、”ぴょんぴょん”と上手にステップが踏めないからなのだろう。
これまでは、時間があまりないので、新大橋から先には足を延ばせていない。川を下れば、お台場や舞浜まで行くこともできる。マラソン仲間の小林さんは、東京ディズニーランドの大ファンなので、下町からわざわざTDL(東京ディズニーランド)まで走っていくのだそうだ。下町から千葉の浦安までは12~13KMほどらしい。
まあ走っていけない距離ではない。今度いつか一緒してもらおうかな。よろしく先導してください。