『ブランド戦略の実際(改訂版)』の「まえがき」になります。これにて、改訂の作業を完了しました。あとは、堀口さんにこのファイルを送るだけです。最後は、早めにアップになりました。小川改訂(V1:20110724)
まえがき(改訂にあたって)
17年ぶりに、本書の初版を改訂することになりました。
この間、ブランド論の理論的な支柱をうち立てた元カリフォルニア大学のアーカー教授は、5冊の本を著しています。同じくアーかー教授の共著者だったケラー教授や、本書の改訂版でも登場するファクハー教授の著書など、世界的に「ブランド論ブーム」が続いています。
日本でも、筆者が日経文庫で本書をリリースしてから、15年の間に、理論書がおよそ20冊、ビジネス書が約100冊、刊行されています。しかし、世の中に出ていく新製品と同様に、ほとんどの書籍はごく短命に終わっています。15年を経過して、いまだに大手書店で入手可能な「ロングセラー」と言えるブランド本は、5冊ほどに絞られます。
おかげさまで、本書はその中の一冊として、書店のビジネス書コーナーの棚に置かれる定番品として位置づけられてきました。初版は、累積で約4万人の方にご購入いただきました。しかし、さすがに取り上げているケースが古くなっています。名前が変わってしまった会社やブランドもあります。国内だけでなく、海外のマーケット事情も大きく変化しました。
本書が発売になった95年に、インターネットの普及がはじまりました。この間に、ネット企業やサービス会社が、積極的に自社のブランディングに取り組んでいます。また、地域活性化に「場所のブランド化」の概念を応用したり、国際マーケティングの分野では、企業やブランドの国境を超えた移転が盛んに行われています。グローバリゼーションは、ブランドの移転によって実践されています。
改訂版は、そうした時代の変化に対応して、およそ半分の事例を書き直しました。とくに、大きな枠組みは変えていませんが、コラム(COFFEE BREAK)は、全面的に書き改めています。海外の事例を少なくして、日本企業の実践を紹介するように努力しました。初版に比較すると、流通サービス業の最新の具体的なケースが増えています。ですから、初版をお買い求めになった読者でも、まったく新しい本を読む気持ちで本書を手に取ることができると思います。
新版への改訂にあたっては、多くの企業の方からご協力をいただきました。あまりに多くの方のお世話になったため、いちいち名前を挙げることができません。本書は、日本の代表的なメーカー、流通サービス業のブランドマネジャーの実践を反映した内容になっています。初版と同様に、改訂版も長く売れ続けると信じています。
最後に、新しい事例と内外のブランドに関する情報を検索収集してくれたリサーチアシスタントの青木恭子と、日本経済新聞出版社の堀口祐介氏に感謝します。
2011年7月24日 小川孔輔