大学から休暇をいただき、夏から本格的に取り組んでいる『マネジメントテキスト:マーケティング入門』(日本経済新聞社、2009)は、全部で18章から構成される。現在、第1、2、4、5、10,11,12、13、17章が完成している。第2章「マーケティングの歴史」は、本HPに半完成品をアップしている。第6、7、8、9、16 章が仕掛品の状態。第3、14、15、18章が未着手の状態にある。本日は、第11章「価格の決定(2):価格決定の実務」のベータ版を掲載してみる。
掲載するのは、第2章の反響が大きかったからである。全体がおよそ、550ページ。中級者向け(本格的なMBA)のテキストである。翻訳書以外では、日本で一番分厚いマーケティングのテキストである。事例とlコラムは、すべてオリジナルである。
各章は、A4完成標準フォーマット(1400字)で、約30ページになる(図表が約12ページ相当分)。脚注と図表は、内容からは除いてある。参考文献も、不完全な状態のまま。
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第11章 小川修正版(20081107)
「価格の決定(2):価格決定の実務」
前章では、価格づけの理論について説明した。主として、ミクロ経済学と会計学的な視点から、3つのタイプの価格決定方式について理論的な基礎を解説した。本章では、それに対して、実務的な側面から、実例を用いて価格決定を解説することにする。
第1節では、同じ製品ブランドの中で異なる複数のグレードがある場合をとりあつかう。いわゆる、製品ラインの価格決定についてである。第2節では、本体と補完製品が組み合わせで提供される場合のように、製品が複数のユニットから構成されている場合の価格付けについて議論する。複数の製品・サービスを一括で価格づけするのがセット価格、構成ユニットごとに分解して価格づけをするのが分離価格である。
第3節では、当初設定した価格を、買い手のタイプや購入量、あるいは、需要の変動に応じて変更するケースをとりあげる。価格を調整する場合としては、現金割引、数量割引、季節割引、曜日・時間などで価格を変動させる場合がある。第4節では、顧客ターゲットや状況に応じて、異なる価格を設定する場合を議論する。いわゆる、価格差別化と呼ばれるものである。差別価格の狙いは、将来の顧客の獲得のこともあれば、価格に敏感な特定層に対して製品やサービスの価格を下げることもある。
第5章では、公的な価格規制について、その類型と関連する具体的な事例を紹介する。公的な規制対象となるのは、以下の7つの価格行動である。すなわち、再販売価格維持、価格維持行為、入札における談合、価格カルテル行為、不当廉売、景表法、ダンピングである。利益を確保する目的で価格を不当に維持する行為や市場シェア獲得のために、原価を割れの価格で販売することは法律で禁じられている。
1.製品ラインの価格決定
(1)グレード別の価格設定(Price Lining)
自動車メーカーは、同じ製品ブランド(実務的には、「車名」とか「モデル」と呼ばれる)に対して、グレードが異なる複数の製品ライン(product line)を準備している。ブランドやデザインに対して似たような好みを持っている顧客グループであっても、それぞれが要求する基本的な仕様が異なるからである。エンジンの大きさ、カーナビやエアコンなどの基本装備など、グレード別に設定された価格のことを、「価格ライン」と呼ぶ。
乗用車は、車種によっても異なるが、多くは排気量の異なる複数のエンジンをラインアップしている。例えば、トヨタのコンパクトカー「ヴィッツ」は、1000cc、1300cc、1500ccの3種類のエンジンを持っている。そのため、一口にヴィッツといっても、102万円から158万円まで、グレードによって異なる価定がなされている(2007年モデル、税抜き価格)。その価格差は、約1.5倍もある。これは、ヴィッツが幅広いグレードを持ち合わせている結果である。上位グレードでは、車格が上のカローラ(125万円~)より高い価格設定がなされている。商用車として利用される廉価モデル(1.0B)から、1.5リットルの高性能エンジンを積んだスポーツモデル(1.5RS)まで、ヴィッツという1車種でも13のグレードをラインアップしている(図11.1参照)。
商用車として利用される機会が多い1.0Bは、必要最低限の装備のみにして、価格も102万円に抑えられている。廉価なグレードの1.0Bは、ヴィッツという車全体にお買い得感を与えている。このような最低価格帯のグレードは、「グレーモデル」と呼ばれている。
ところが、メーカーには、それぞれの車種において販売量を増やすための「量販グレード」が存在している。この量販グレードでは、顧客が抱くコンパクトカーとしての妥当な価格帯(110~120万円)でその価格設定がなされている。こうして、ボリュームゾーンの需要を吸収しようとしているのである。ヴィッツで言えば、1.3F(あるいは1.0F)がボリュームゾーンを狙った量販グレードである。フィットの量販グレードは、1.3Gである。なお、量販価格のことを「プライスポイント」という呼び方もすることもある。
したがって、ヴィッツはこの量販グレードに最大の照準を合わせ、顧客のニーズを適度に満たした装備で、1.0Fを102万円とバランスの取れた価格設定をしている。このように、顧客が抱く妥当な価格(値ごろ価格)を基準に、装備と価格のバランスをとることで、トヨタ自動車は、コンパクトカー(2BOXスモールロワー)の製品クラスで、ボリュームゾーンを吸収しているのである。
他のグレードについては、当初から量販グレードのように大量販売を目指していないので、装備に応じた価格設定がされることが多い。上質感を高めた1.3Uでは、1.3リットルのエンジンを積み内装のシートなども替え、その見合い分を加味し134万円に設定している。また、スポーツモデルの1.5RSでは、1.5リットルのエンジンを積み、内外装もスポーツ志向を前面に出し、スポーツ好きな特定層に照準を当て価格を156万円まで引き上げている。こうしたグレード別価格設定は、製品としてのイメージを拡張することにも繋がっている。
(2)おとり商品(Decoy; Bait and Switch)
「おとり商品」(decoy)とは、顧客を寄せ集めるために、極端な安価でチラシに商品やサービスを掲載させた商品のことを指す。小売業では、より多くの顧客に来店してもらうことが販売増に繋がるため、特売商品(ロスリーダー)などを利用して、顧客の店舗への来店を促している。特売商品は、本来、その商品を販売するのが目的ではなく、安価な価格設定で顧客を惹きつけることが目的である。それ自身の販売で利益を獲得することは期待していない。来店してくれた顧客が、ついでに他の商品やサービスを買ってくれることを狙った販促商品である。
しかしながら、販促のやり方が度を過ぎてしまうと、下記の「PHS端末機の無料配布」の例にあるように、法的な問題も生じることがある。広告では無料とうたいながら、実際は手数料等が付随していたり、解約時の違約金が高額だったりすることもある。消費者がその広告だけではわかりづらい表示がなされていたために、消費者が不利益をこうむるといったことがある。このような販売手法を「オトリ商法」という。こうしたオトリ商法は、他にも数多くある。
例えば、安価で広告に掲載されていた高級腕時計を購入しようと来店したら、販売時期や販売量が非常に限られ、掲載商品とは別の高額商品を誘導販売されてしまったなどの事例である。こうした販売方法は、安価で魅力ある商品が、制約された条件下での販売であるにもかかわらず、それらが広告に明記されずに起きる問題である。
このように、広告には安価な商品(撒き餌:bait)を掲載して、実際には、他の高額な商品・サービスなどを購入させる(switch)のやり方を、英語の表現では、”bait and switch”と呼んでいる。もちろん、これはどこの国でも違法である。
2 関連製品のバンドリングと分離価格
(1)補完製品の抱き合わせ販売(Captive Pricing)
製品を購入する場合に、しばしば本体と補完製品を一緒に買い揃える必要があることがある。パソコンとプリンター、デジタルカメラとメモリースティックがそうした典型的な例である。プリンターに関して言えば、消耗部品のトナーやインクジェットがないと、そもそもプリンターで印字ができない。ここでは、製品本体とそれを補完する製品とを抱き合わせて販売する手法(Captive Pricing)を見てみることにする。
例えば、ゲーム機本体とゲームソフトの抱き合わせが、この販売手法にあたる。実際に、ゲーム機を購入しても、ゲームソフトがなければゲーム機本体をプレイすることができない。逆に、ゲームソフトがあってもゲーム機がなければ何の意味もない。つまり、ゲーム機とゲームソフトは、相互に機能的に製品同士が補完し合っている関係である。このように、補完しあう製品を抱き合わせて販売することで、顧客の利便性とお得感(通常組合せ価格より安価に設定)を高め、本体と補完製品の両方の販売増を達成することができる。
ソニーは、ゲーム機「プレイステーション2」と人気ゲームソフト「ファイナルファンタジー12」を抱き合わせ、“PlayStation 2” FINAL FANTASY XII PACKとして販売している。こうした人気ソフトは、ゲーム機の購入に大きな影響を与える。そこで、人気ソフトを抱き合わせることによってゲーム機本体の販売を促進しようとしているのである。
同様に、パソコン本体とパソコンソフトとの関係も、パソコンはソフトがなければただの箱といわれるように、ソフトとパソコンは補完し合っている。したがって、利用頻度の高いワープロソフト(ワード)と表計算ソフト(エクセル)が、パソコンと抱き合わされて販売されているケースが多い。いわゆる、マイクロソフトの「オフィス・シリーズ」は、パソコン本体にインストールされて販売されているのがふつうである。
パソコンソフトは、毎年のように製品に改良され、バージョンアップ版が販売されていく。そこで、製品を一度利用して満足してくれたPCユーザーは、そのバージョンアップ版を継続して購入することになる。したがって、ソフトメーカーとしては、いかに多くのパソコンユーザーを利用者として囲い込めるかが成功の鍵となる。
例えば、1990年代、日本のワープロソフトは、1985年から販売されているジャストシステムの「一太郎」が大きな市場を占めていた。当時、後発であったマイクロソフトのWordは、定番であった一太郎の牙城を崩そうと積極的にパソコンメーカーに働きかけた。人気の表計算ソフト「Excel」を武器に、低価格で2つのソフトをパソコンに抱き合わせ積極的に販売を進めたのである。一方、ジャストシステムには「三四郎」という表計算ソフトが存在していたが、マイクロソフトのExcelはLotus1-2-3(ロータス社、現在はIBMより発売されている)に代わって表計算ソフトの定番になっていた。表計算ソフトとワープロソフトを別々に購入するより、かなり安価な価格設定でExcelとWordが抱き合わせ販売されたため、ワープロソフト市場は、やがて一太郎からWordへと主役の座が交代してしまったのである。
パソコンソフトの場合は、いかに多くの顧客にとっての利用機会を増やすことができるかが成功の鍵である。今では、かつてとは逆に、マイクロソフトのワードに後塵を拝している一太郎が、低価格で市場のシェアを少しでも伸ばそうとしている(図11.3参照)。その他にも、パソコンソフトは、年賀状作成ソフト、画像編集ソフト、鉄道の駅間料金検索ソフトなど、多くのソフトが、パソコン本体に組み入れられ販売されている。これらのソフトは、相応な低価格でパソコンメーカーに搬入され、あらかじめ本体に組み込むことで、顧客の利用を促進し、ソフトメーカーはその後のバージョンアップ版で販売機会を増やすことを狙っている。
(2)分離価格(Two-part Pricing)
抱き合わせ販売では、本体と補完製品を組み合わせて価格設定をしていた。それとは逆に、もともと一体であった価格設定を、それぞれ部分に機能分解して値付けすることがある。分離価格の場合である。
「分離価格」とは、一つの製品やサービスでありながら、価格体系が分離されている価格のことである。この代表的な事例が、電話料金の分離価格である。電話料金は、固定電話でも携帯電話でも、料金体系は固定部分と変動部分に分かれている。一本化されていない理由は、毎月利用の有無を問わず必ずかかる基本料金と利用した際の通話時間や距離等で料金が変動する通話料金とに分かれているからである。
とくに、携帯電話では、基本使用料、通話料の他に、メール送受信やウェブ通信料などのパケット料が別建てになっている(図11.4参照)。この ように、通話料やパケット料などが基本使用料と分離されていることで、携帯電話の料金体系が形成されている。つまり、顧客の利用頻度に応じて、固定料金である基本使用料とは別に、通話料やパケット料などの変動料金が増えていくため、携帯電話のサービスは、利益幅の大きいビジネスモデルになっている。したがって、携帯電話各社は、さまざまな手法を活用して、いかに顧客の利用頻度を高めていくかを常に考えているのである。
(3)セット価格
「セット価格」とは、本来別々に価格設定されている商品やサービスにおいて、それらを組み合わせ、複数の価格をまとめることである。そうすることで、顧客へのお買い得感や利便性を高め、需要を誘引することにつながるのである。
例えば、パッケージ旅行で考えてみよう。パッケージ旅行の中に組み込まれた飛行機や鉄道などの運賃、ホテルの宿泊料金、観光地での入場料金、食事料金などは、本来別々の料金建てになっている。それらを旅行会社がセット価格として販売することで、顧客は旅行中に発生する全体の費用を知ることができ、計画もしやすくなる。また、宿泊や食事、観光施設などへの支払いも一括して旅行会社が代替してくれるのでその手間も省ける。このように、旅行におけるセット価格は、顧客にとっての有用性は高く、それが消費者に支持されているのである。
また、多くの遊園地でも、分離価格からこのセット価格へと価格設定を変更している。もともと遊園地では、固定料金である入園料とは別に、園内にある乗り物には別途料金がかかっていた。これは、多くの遊戯施設を利用する顧客とそうでない顧客とを区分し、それ相応の費用負担をしてもらおうという考えである。つまり、変動料金によって利用頻度の異なる顧客に対して、公平感のある価格設定をしているのである。
ところが、分離価格で運営していた施設の中で、乗り物券と入場料とをセットにした価格設定に切り替える遊園地が増えている。また、特定の利用時間帯を定めて、全施設が利用できるセット価格も登場している(図11.5参照)。東京 ディズニーランドも開園当初(1983年4月)は、アトラクションゾーンごとに利用回数を定めたチケットが存在していた。しかし、2001年4月からは、すべての料金体系を園内の全アトラクションが利用可能な「パスポート制」に料金システムを変更している。また、東京ドームでも、2003年5月より固定料金の入園料を廃止し、全アトラクションが利用可能な「ライドフリー」を顧客に薦めている。
3 割引による価格調整
(1)現金割引:キャッシュ&キャリー
企業間の取引では、「月末締めの翌月期日払い」が一般的である。その場合の支払いを現金で清算することで、買い手に対して割引特典を与えるのが「現金割引」である。
さらに、「キャッシュ&キャリー」(cash and carry)と呼ばれる決済では、現金で支払った上に、買い手の側が商品を自分で持ち帰ることになる。即時決済になるため、売り手側の現金流動性が高まる。また、売掛金の回収費用が節約できて、支払い滞納による不良債権のリスクも軽減される。そこで、現金決済で売り手側のリスクが軽減された分を、さらにディスカウントして買い手に還元する。
最近では、本来月末締めの翌月期日払いとなっている商取引に仲介が入り、期日支払日までの債権を割り引いて現金化するビジネスも出てきている。これは、売り手側が納入した商品の売掛金を早期に回収したいという売り手のニーズに応えた新しいビジネスモデルである。売り手は、売掛金となっている債権が現金化されることで資金繰りがスムーズになり、現金流動性も高まる。したがって、売り手からすれば、確実に販売が早期に回収できるため、少々割り引かれて現金化されるもののメリットは大きい。そこで、ビジネスの引き合いは多いようである。(脚注あるいは注釈と事実の説明を!!)
個人を対象にした場合でも、ディスカウントストアや秋葉原などの格安家電ショップでは、カードでの支払いには5%が上積みされることがある。こうした商慣行は、顧客の側でのキャッシュ&キャリー(現金決済での持ち帰り)を促進することを狙ったものである。売り手側がカード会社への手数料(通常は、販売額の3~5%)の支払いを軽減し、現金の流動性を高めたいためである。
(2)数量割引:10ケース以上購入で3%割引など
「数量割引」は、大量購買者に対する割引である。たくさんの製品を購入すれば、その分を通常価格より割り引いて優遇してくれる。例えば、同じ製品を10ケースまとめて購入すれば3%割引して一度に多くの製品を購入してもらおうとするなどである。これは、一つに製品に関連する「販売コスト」「在庫コスト」「輸送コスト」が、一括購入で節約できるという売り手の利点があるからである。同時に、大量購入によるインセンティブを買い手側に提供するためである。
半導体の取引では、取引価格は購買量によって異なる。大量に継続して購入する買い手には、メーカー側は大幅な値引きで対応してくれる。これは、継続して大量発注してくれる顧客を得ることで、売り手が安定した生産を維持できるからである。ただし、あまりにも多くの取引数量が一社に集中してしまうと危険である。なぜなら、万が一、その取引先が契約を解除した場合、経営根幹に甚大な影響を与えてしまうからである。
具体的に例をあげてみよう。1997年12月に、パイオニアは世界ではじめて、民生用高精細50インチ型のプラズマディスプレイを発売し、市場の牽引役となっていた。自社での販売に加え、プラズマディスプレイはソニーに相当量を供給していた。ところが、液晶テレビの大型化によって、その後、薄型大型テレビは激しい価格競争に入った。ソニーは、自社の生産設備を持たなかったため、それまではパイオニアからすべてのプラズマディスプレイを納入していた。ところが、突然、ソニーはプラズマテレビ事業からの撤退を表明した。ソニーは、出遅れ気味の薄型テレビ部門で液晶テレビへの資本を集中する戦略的転換を図ったのである。
この時点で、ソニーから大量発注されていたプラズマディスプレイの受注は完全にストップしてしまった。パイオニアはプラズマディスプレイのさらなる需要拡大を見込み、NECよりプラズマ事業の譲受を受け、工場も拡張するなど、積極的な投資を続けてきた。しかし、この一件が大きな痛手となって、プラズマディスプレイ事業は一気に赤字へと転落してしまったのである。このように、大量の数量取引は安定した顧客の確保につながるが、契約解除時のリスクも相応に大きいことを考慮に入れておく必要がある。
(3)季節割引:航空券の季節割引(差別価格)
「季節割引」は、季節ごとの需要変動に合わせて、オフ・シーズンの時期に製品やサービスの購入者や利用者に与えられる割引特典である。これは、閑散期であるオフ・シーズンに、需要を少しでも掘り起こすためのものである。需要の季節変動が激しい観光サービス業界で多く採り入れられている差別価格のポピュラーな形態である。
実際、ホテルや旅館では、季節ごとに宿泊料金が異なる場合が多い。これは、需要がオン・シーズン(繁忙期)とオフ・シーズン(閑散期)で明確に分かれるためである。季節ごとにやってくる波動に対して、できるだけ需要を平準化させようとする販売側の努力の結果である。繁忙期には高価格で、閑散期には低価格で価格設定しているのは、需要調整のためである。
例えば、日本の代表的なリゾート地である沖縄では、夏の時期に多くの旅行客がきれいな海を求めて訪れる。しかし、沖縄では常夏の島ではない。冬になると海で泳ぐことができなくなるので、旅行客は激減してしまう。そこで、この時期、沖縄のリゾートホテルは、宿泊料金の大幅な季節割引を行う。顧客の誘因を図るわけである。季節割引されたオフ・シーズンの宿泊料金は、トップ・シーズンやオン・シーズンの夏休み期間と比較すると、1/2前後の料金設定となっている(図11.6参照)。
同様なシーズン対応は、長距離旅客輸送でもなされている。JRでは、特急料金は、繁忙期、通常期、閑散期の3本建ての料金設定になっている。また、団体料金では、特急料金に加えて、運賃も閑散期には15%の季節割引を実施している。
航空業界でも、国際線ではこの季節波動による差別価格が激しい。欧州路線などでは、閑散期と繁忙期で、エコノミー運賃の価格差が実質的に2〜3倍はある。例えば、全日空では、夏休みにヨーロッパに行くと航空運賃は204000円(エコ割21WEB利用8/4~8/7発:2006年4月1日調べ)となっている。ところが、4月にヨーロッパに行くときには、何と75000円(エコ割21WEB利用4/1~4/13発:2006年4月1日調べ)で旅行できるのである。かなり大きな季節割引である。
それとは逆に、国内線では、通常は同一区間往復で利用すれば適用されるはずの往復割引が、夏休みや年末年始などの繁忙期には適用外となる。実質的に割高な価格設定になっているのである。需要の変動を平準化するために、季節割引はうまく機能しているのである。
4 差別価格
(1)ターゲットによる価格差別化
対象とする顧客を絞って、そのターゲット顧客だけに価格割引をして優遇する方法もある。これは、「(ターゲット別の)価格差別化」と呼ばれる。
例えば、映画館では、毎週水曜日が「レディースデー」になっている。女性に限って入場料を1000円(通常1800円)にしている。また、夫婦のどちらかが50歳以上ならば、夫婦で2000円(通常3600円)になる。高校生が3人以上で一緒ならば、1人1000円(通常1500円)というような割引もある。
ターゲット顧客ごとに差別価格を提供する狙いは、以下の3つである。第一に、映画会社としては、女性やシニア、高校生といったターゲットを狙い、映画ファンの裾野を広げるためである。第二に、高校生やシニアのように、時間に余裕があるセグメントは価格弾力性が大きいので、割引価格に対しても需要の反応が大きくなる。第3に、その結果として、顧客の少ない曜日や時間帯にターゲット絞って割引することで、施設の利用度をあげることができるためである。
こうした試みは、映画産業の他にも広く行われている。例えば、JRでは、男性65歳以上、女性60歳以上の熟年をターゲットとして、「大人の休日倶楽部ジパング」を組織化している。一人3,670円、夫婦で6,120円の会費を支払ってくれた会員は、日本全国のJR線が年間20回まで、2・3割引で利用が可能になる(2006年3月15日現在)。JR線を201km以上利用すると、3回目までは2割引、4回目以降は3割引になる。こうした価格差別によって、JRはターゲットとして絞り込んだシニア層に、退職後に二人でゆっくり鉄道の旅を何度も楽しんでもらおうとしている。さらに、価格差別による需要の誘引は、その予備軍にまで広がっている。JRでは、50歳以上のミドル向けに、何回でもJR線を5%割引く「大人の休日倶楽部ミドル」(会費は2,500円)を組織化している。退職前からの価格差別で、次代のシニア層も囲い込もうというわけである。
こうした価格差別は、多頻度で利用してくれる見込みがある顧客層に絞って、価格を割り引くものである。その点は、ポイントカードの利用と似た効果を期待しているとも言える。実際に、うまり運用すれば、自社ブランドへのロイヤルティを高め、持続的な購買につながる場合が多い。
(2)地理的な価格差別
「地理的な価格差別」は、物流のように運送費用そのものに違いがある場合、配送費用に合わせて支払価格を調整することである。例えば、郵便局が取り扱っている封書や葉書の郵便料金は、本来、運送費用に差違はあるものの、それを反映せずに全国統一価格としている。地理的な価格差別をしていない例である。
しかしながら、ヤマト運輸を始めとするいわゆる民間の宅配便が普及してくるとともに、小包に関しては、郵便局も地理的な差違を反映した料金体系を採用することになった(図11.8参照)。60サイズで見ると、その価格差は2倍にまで広がっている。輸送費による地理的な差別価格は、本質的には費用を上積みしていた「コスト上積み価格」と言える。
なお、小荷物などの運賃は、厳密に言えば、10円単位でチャージされるべきものである。しかし、現実的には、図11.8の宅配便の料金表を見てわかるように、計算しやすいように、全国をいくつかのブロック分けて、ゾーンごとに運賃が定められている。配送費用は「ソーン運賃制」が採用されるのがふつうである。
また、もともと船舶やトラックなどを利用した一般的な取引では、FOB(Free On Board:本船渡し、工場渡し)価格とCIF(Cost Insurance and Freight:運賃保険料込み条件)価格のいずれかの条件で取引されている場合が多い。「FOB価格」では、売り手は買い手の手配した船舶(トラック)に発注を受けた品物を積載するまでの費用とリスクを負い、船舶に積載後に発生する費用とリスクは買い手が負う形を採っている。こうなると、基本的には、積載後の費用とリスクは、遠距離であればあるほど買い手のリスク負担が増してくる。
そこで、こうした費用とリスクをあらかじめ、売り手が負担するのが「CIF価格」である。CIF価格は、買い手の定める輸入港までの本船への積載、輸送費用、リスクを補償する保険料などが包括された価格である。したがって、CIF価格では、売り手は遠距離であればあるほど費用とリスクを負うので、地理的な価格差別をより反映しなければならない。
このように、地理的な価格差別は、半ば理にかなった価格設定といえるが、郵便など公共性の高いものについては、そのままかかる費用を反映して価格差別すると、過疎地などへの対応をどうするかなど、政策的な問題が残るのも事実である。
(3)時間帯による価格差別
「時間帯による価格差別」の代表的な例は、レストランや喫茶店などにおけるランチサービスやモーニングサービスである。とくに、昼食時により多くの顧客に来てもらおうと、レストランや喫茶店では、通常料金よりも安価な価格設定のメニューが提供されている。昼食時のコーヒーなども、無料もしくは割引価格でサービスされる。また、ビジネス街の一部の店舗では、12時から13時までのランチにあまりにも顧客が集中するため、これを避けようと、13時からはさらに価格を下げて、コーヒーを無料化するなどしているところもある。こうして、顧客に平準化を促しているのである。また、早朝は、モーニングサービスなどとして、コーヒーにトーストを付けて、通常の時間帯よりは割安な価格でメニューを提供している。
他にも、カラオケルームでは、通常多くの人が夜利用するため、昼間は空室が目立つ。そこで、カラオケルームの「ビックエコー」では、夜間は30分550円(日~木曜日19:00~05:00:新宿西口店2006年4月1日調べ)の価格設定を、昼間は200円(日~木曜日12:00~19:00)とし、夜間の約1/3まで下げている。このように、昼間の価格を極端に下げることで、喫茶店を利用するのと変わらない価格帯で利用できるようにしている。
(4)販売の安定(確定)をねらった時間差別価格
「時間差別価格」は、申し込む時期によって価格を変動させる価格設定の方式である。例えば、最近では当たり前になった航空券の前売り販売もこれにあたる。航空券は購入時期が早ければ早いほど価格は安く設定されている。例えば、東京-札幌間の航空運賃を調べてみると、通常の航空運賃は片道29,400円(2006年4月1日調べ)である。それが、28日前までに予約・購入すると12,300円(日本航空特便割引28利用の場合)、7日前なら14,900円(同特便割引7利用の場合)となる。
こうした運賃制度は、もともとは海外で広く利用されていた「事前購入回遊運賃(APEX:Advance Purchase Excursion Fares)」がベースになっている。それを、2000年の改正航空法施行による航空事業自由化によって、各社が積極的に取り入れた運賃制度である。
早期の購入に対して優遇価格を設定することで、航空会社は需要を早い段階で吸収することができる。すると、早期に一定の販売量が確定し、全体の搭乗予測もしやすくなる。こうした利点があるため、航空会社には、価格を下げてでも早い段階で需要を確定しようとするのである。
5 価格決定に関する公的規制
基本的には、製品やサービスの価格は、その決定が企業の自由裁量にまかされているものである。ただし、独占禁止法などの法制度の枠組みの中で、個別企業の価格設定に関して規制がかけられる場合がある。あるいは、消費者保護の観点からも、価格決定に一定の条件が課されることがある。本節では、価格に関する公的な規制について、6つの制度とそれと関連する事例を紹介する。
(1)再販売価格維持(Resale price maintenance)
「再販売価格維持」は、書籍や音楽CDのように、メーカーが卸売業者や小売業者の販売価格(再販売価格)を定め、販売業者にその価格を維持させる行為をいう。原則として、こうした価格拘束行為は独占禁止法で禁じられている。ただし、適用除外制度の中で、書籍やCDなどの著作物と公正取引委員会が指定する品については除外されている。しかしながら、こうした除外品目も徐々に少なくなっているのが現状である。
例えば、以前はこの除外品目であった化粧品や医薬品は、1997年にその除外からは外されることになった。今では、薬局等でも値引き販売がなされ、既に小売業者間で価格競争の対象商品になっている。こうした品目は、もともと価格競争による乱売で品質低下がおこり、直接顧客の健康等に影響を与えることが危惧されるために、適用除外されていたものである。したがって、医薬品については、再販売価格の撤廃は行われたが、薬剤師のもとで販売することを今でも「薬事法」で義務付けている。
一方で、価格拘束行為は独占禁止法で禁じられているため、メーカー側が卸業者や小売業者に対して販売価格を決めることはできない。しかしながら、いくつかの業界に対してはしばしば、独占禁止法違反行為の疑いで公正取引委員会の捜査が入っている。1998年に発売され爆発的にヒットしたアップルコンピュータのiMACやiBOOKは、発売当初、どの店に行っても同一価格で販売されていた。そのため、アップルが販売店側にiMACやiBOOKを希望小売価格で販売するよう価格拘束していたのではないかという疑いが持たれたのである。そこで、1999年12月には公正取引委員会の立ち入り検査が行われるが、違法性は立証されなかった。
なお、参考までに、図11.10~図11.12で、独占禁止法の適用除外制度とその歴史を年表にしてまとめてみた。価格に関連した制度でも、規制緩和が徐々に進んでいることがわかる。
(2)価格維持行為
「価格維持行為」とは、業界の中で各社が利益を確保するために、価格競争をせず一定の価格を維持しようとする行為である。東京のタクシー料金は、長らく初乗り運賃が660円で維持されていた。しかも、どこのタクシー会社も同一価格で運行していた。こうした固定価格を打ち破ろうと、京都のエムケイタクシーは、どこのタクシー会社も初乗りが660円で価格が同一なのは、同業者による一種の価格維持行為に当たるとして、裁判に打って出たのである(図11.13参照)。
この裁判によって、タクシーの「同一地域同一運賃」という価格維持行為は撤廃され、全国でタクシーの激しい価格競争が始まったのである。今では、ワンコインタクシー(初乗り500円)や深夜に長距離を乗ると距離に応じて割引率が増してくるタクシーなど、さまざまな価格形態を持つタクシーが現れている。
価格維持行為が撤退され価格競争によって消費者に利益が還元されることは、一般的には望ましいことである。だだし、タクシーや鉄道、航空といった公共性の強い交通機関では、同時に安全が第一である。そのため、度を超した過当競争になると車両の整備が不十分になったり、運転手に加重がかかり過ぎて大きな事故につながることも懸念される。
(3)入札における談合の禁止
価格維持行為には、公共事業などでよく行われる入札制度による談合もある。「談合」とは、受注予定業者をあらかじめ入札参加業者によって調整することである。決められた受注予定業者よりも入札参加業者は高い価格を設定することで、事前に決められた受注予定業者に落札させるのである。こうした仕組みによって、常に落札業者は一定の利益を確保することができ、持ち回りによる落札回数の減少でも利益を確保できるのである。
このような談合は、概して公共事業の入札の際に行われることが多い。社会的に問題視されることが多いにも関わらず、一向に消えない。本来、公共事業の入札制度は国民から徴収した税金を少しでも有効に活用するために自由競争のもとで行われる制度である。そのため、こうした談合行為に対して、発注者側である国や地方自治体がその防止策を強化し始めている。
図11.4は、『日経産業新聞』2005年5月23日号に掲載された「鋼鉄製橋梁工事の入札断行事件」を要約したものである。刑事告発された結果、長年にわたって談合に関与してきた大手橋梁工事会社の幹部が大量に逮捕されている。
(4)価格カルテル行為の原則禁止
ここまで見てきたように、価格維持行為にはさまざまであった。その他にも、独占的な立場を利用して、価格そのものを維持させようとする「価格カルテル行為」がある。もちろん、こうした行為は法的に禁じられている。
例えば、コンピューターの心臓部といわれるマイクロプロセッサは、ほぼインテルの寡占状態にある。インテル以外にも、AMDやトランスメタといった製品もあるが合わせても全体のシェアでは20%にも満たない。インテルは自社の価格を維持するために、”intel inside”のロゴマークシールをパソコンに添付することをパソコンメーカーに求めている。価格が割引かれるので、パソコンメーカーはこうしたインテルの政策にしたがっている。
そうしたなかで、他社のマイクロプロセッサを採用しないことを条件にリベート(販売支援金)を提供するなどの行為に対しては、2005年3月、公正取引委員会からインテルは勧告を受けることとなった。2005年4月、インテルは勧告に対して応諾するが、公正取引委員会の指摘事実を認めるものではないとしている。 こうした行為は、実質上「デファクト・スタンダード」(事実上の標準)となっているインテルの優越的な地位を利用した価格維持行為として、AMDなどの他メーカー製品の販売には不利に作用していたかもしれない。
また、マイクロソフトがインターネットの閲覧ソフト「Microsoft Internet Explorer」を普及させる時も、それまで主流であった「Net Scape」を打ち破るために、無料で基本OSソフトであるWindowsに当初からバンドリングすることでその利便性を高めていった。こうした行為についても、アメリカでは日本の独占禁止法にあたる反トラスト法にかけられている。
(5)不当廉売
「不当廉売」とは、原価を割って極端に低い価格で販売する行為をいう。日本には、百貨店、スーパー、コンビニエンスストア、ディスカウントストア、専門店、中小の一般小売店など、多種多様で大小さまざまな小売業が並存している。こうした状況の下で、規模の大小や業態に関わりなく、公平な競争を保たれるように独禁法で不当廉売を禁じている。
1998年、コジマとヤマダ電機は安さ日本一を掲げ、家電量販店の熾烈なトップ争いをしていた。両社の間で展開されたのが、究極の「1円セール」である。この件に関して、ヤマダ電機は、公正取引委員会から勧告を受けることになった。一円の販売価格では、当然、仕入原価そのものを割っており、同業の周辺店舗に与える影響も甚大である。こうした極端に安価な価格設定は、公平な競争を妨げることにつながる。そこで、今では多くの家電量販店で、「他店より1円でも高い場合は安くしますのでご相談ください!」とうたいながら、一方で「不当廉売に当たる商品は除くとか、その場合は当社原価までの販売とさせていただきます」としている。
(6)景表法
「景表法(景品表示法)」とは、「不当景品類及び不当表示防止法」の略で、不当な景品及び表示に関する行為を規制するものである。商品広告や商品に景品を付けて宣伝活動をすることは一般的な商行為であるため、不当な景品類を利用した行為及び不当な表示による行為はこの対象となる。ここでいう不当行為とは、本来公平な競争によって取引されなければならないにもかかわらず、景表法で決められた景品限度額を超えたり、顧客に誤認させるような表示をしたりして顧客を誘引する行為である。
例えば、景品類を提供する場合、大きく分けて「オープン懸賞」と「クローズド懸賞」という2種類の懸賞告示がある。オープン懸賞は、消費者すべてに応募する権利があるため、企業が新製品の認知度アップなどに利用されるケースが多い。例えば、新製品の名前をより多くの消費者に知ってもらおうと「今度の新しい商品は、○○○○です!」といったように商品名そのものを当てる懸賞クイズで1000万円をプレゼントしたりすることである(具体例をあげる!)。
一方、クローズド懸賞は、一定量の商品を購入してもらった人だけに応募の権利があるものである。例えば、「○○○製品を飲んでシールを12枚貯めて応募しよう!! サッカーJ1グッズが当たる!」といった具合である(具体例を )。このように、自社製品を購入してもらった顧客だけが応募の権利を与えられるので、クローズド懸賞といわれる。この場合は、購買機会や購入個数を増やすことが目的である。クローズド懸賞の上限額は、商品の購入価額に対する一定比率が限度として定められている。景品の上限価額は、取引価格の1/10までとなっている。
「不当表示」については、自社製品やサービスの品質、規格などについて、実際のものより、または競争業者のものより著しく優良であることを消費者に誤認されるような表示である。また、消費者を紛らわすような表示に対しても規制が行われている。最近で話題になったのは、携帯電話に「ナンバーポータビリティ制度」(電話番号を変えずにキャリアを変更できる制度)が導入された際に、ソフトバンクが行った「¥O」の新聞広告である。公正取引委員会は、ソフトバンクに対して排除命令を下した。その根拠は、ソフトバンクが掲載した新聞広告が「消費者の誤認を誘うような表示であった」とするものであった。
(7)ダンピング(Dumping)
採算を無視した価格設定で、製品を大量に販売することを「ダンピング」という。主に、日本企業が海外市場での地位を確保するために、通常の価格よりも極端に安価な価格設定で製品を現地で販売する行為をいう。これは、一種の不当廉売にあたり、諸外国でも禁じられている行為である。
海外進出の際に、企業は導入初期段階では低価格を設定することで市場シェアを確保しようとする。いわゆる、市場浸透価格戦略を採用することが多い。その際、進出先国の既存製品と同等なものであれば、顧客は安価な方に流れることになる。
しばしば海外市場を開拓する日本企業は、国内での販売価格より、進出先国で製品価格を安価に設定できる。というのは、生産と販売面でグローバルな規模の経済性が働くからである。しかし、進出先国のメーカーからみると、日本メーカーは、ダンピング(不当な廉価販売)を行っているように見える。「公平な競争ではない」と自国政府に訴えることになる。有名な例は、1980年代に係争になった「米国自動車協議」である。 現在は、米国市場では、日本製品ではなく、むしろ中国製の製品がダンピング訴訟の対象となっている場合が多い(図11.17)。
あまりにも安価な価格で販売すると、逆にペナルティがかかることがある。その例が、「反ダンピング税」である。その製品に高率関税を賦課することで、実質的に公平な価格競争ができるように価格調整されてしまうのである。諸外国での価格設定に関しては、進出先の競争業者などの価格を精査しながら、極端に安い価格設定をしないようにすることも重要である。
以下は、不完全
<参考文献>
(1)上田隆穂編(1995)『価格決定のマーケティング』有斐閣
(2)上田隆穂(1999)『マーケティング価格戦略』有斐閣
(3)上田隆穂編(2003) 『ケースで学ぶ価格戦略・入門』 有斐閣
(4)小川孔輔(1996)「価格実験を用いたブランド力の測定(上・下)」『チェーンストアエイジ』2月15日号
(5)小川孔輔(2002)『誰にも聞けなかった 値段のひみつ』
日本経済新聞社
(6)恩蔵直人(2000)「価格対応」和田充夫・恩蔵直人・三浦俊彦
『新版 マーケティング戦略』有斐閣
(7)小嶋外弘(1986)『価格の心理』ダイヤモンド社
(8)高瀬浩(2005)『ステップアップ式MBAマーケティング入門』
ダイヤモンド社
(9)古川一郎、守口剛、阿部誠(2003)『マーケティング・サイエンス入門』有斐閣
(10)Rao, V. (1984), “Pricing Research in Marketing: The State of Art,”Journal of Business, 57.