(その90)「2度目の“国盗り”に挑む」『北羽新報』2024年3月25日号

 新聞の連載が90回になった。来月から、公益財団法人ランナーズ財団の評議員に就任することになっている。今回のブログは、そうした意味もあって、二度目の「国盗り」(47都道府県マラソンの完全制覇)に挑む決意表明になる。2巡目は2011年にスタートしている。すでに半分の24都道府県は終わっている。


「2度目の“国盗り”に挑む」『北羽新報』2024年3月号
 文・小川孔輔(法政大学名誉教授、作家)
 
 市民ランナーの勲章のひとつに、「国盗り」があります。公認のマラソン大会で、47都道府県のすべてのレースを完走することです。わたしは、2010年9月19日に、国盗りを達成できました。ちなみに、47都道府県の最後が、生まれ故郷の秋田県でした。
 「風変わりな大学教授のランナーがいる」ということで、『月刊ランナーズ』(2013年4月号)でインタビューを受けることになりました。ご縁があったのでしょう。その7年後に、発行元の「株式会社アールビーズ」の社外取締役に就任することになります。

 最初の国盗りは、記録を取り始めてから達成まで12年間を要しています。ところが、国盗りには走破タイムに特別な基準がありません。そこで、ゲームとしておもしろくするためもあり、ハーフで2時間以内(サブ2)、フルで5時間以内(サブ5)というハードルを設けました。時間内にゴールできなければ、「国盗り」と認定しないという独自ルールです。
 最後の田沢湖マラソンは、タイムが基準値すれすれの4時間55分01秒でした。ハードルを高く設定しすぎたかなと、一瞬ひやひやしたものでした。その後は、コロナの3年間があり、市民ランナーにとって辛い時を過ごしました。大会の中止が相次ぎ、外出を控えるように要請され、練習も満足に走ることができませんでした。
 古希を迎える辺りから、走る目標を完全に失っていました。しかし、退職後に時間は有り余るほどできました。そこで、2度目の国盗りに挑戦してみようと、数か月前に思い立ちました。年齢的に、かつての基準のクリアは難しそうです。2度目の挑戦では、ハーフで「2時間半」、フルで「5時間半」にハードルを緩めることにしました。

 最初の国盗りの達成から、今年で14年になります。自宅のPCで、その後に走り終えている県の数と、そのときのゴールタイムをチェックしてみました。結果的に、すでに約半分の24都道府県を走り終えていることがわかりました。
 国盗りを達成したランナーは、日本各地に数人はいるはずです。しかし、2度の国盗りの達成者は聞いたことがありません。それも70歳代での挑戦には価値があるように思います。
 年齢的にスピードのダウンは決定的です。しかし、各地の大会でレースを走るために必要な時間と資金、そして気力はあります。足りないのは体力だけですが、体力は練習量でカバーできます。2度目の国盗りのゴールは、75歳の誕生日(10月20日)に設定しました。目標達成までの猶予期間は、3年と6か月ほどあります。

 この話をわが相方に話したところ、未達成の23県の中に、生まれてこの方、本人が一度も訪れたこともがない県が5つ含まれていました。福井県、和歌山県、愛媛県、徳島県、鹿児島県です。
 交通費や宿代など、大会参加費用はダブルでかかります。でも、最初の国盗りに参加できなかったかみさんに、2回目は応援団として付き添ってもらいます。
 早速、5月の「越前大野名水マラソン」(福井県)にエントリーしました。ここが終われば、年末にかけて残りの県を順次に制覇していくことになります。この先まだ長くなりますが、老後の楽しみが増えたようでもあります。

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