結婚して47年。誕生日にプレゼントをするのだが、かみさんを大満足させた記憶がなかった。今回は、一計を案じて大勝負に出てみた。さて、結果はいかに?
(その103)「素敵なサプライズ」『北羽新報』2025年4月28日号
文・小川孔輔(法政大学名誉教授、作家)
わたしたち夫婦は、結婚して47年になります。毎年のように、「誕生日に何か欲しいものはない?」と相方に希望の品を尋ねます。ところが、本人の要望に沿って選んだプレゼントだからなのか、誕生日にかみさんを心底から感激させたという記憶がありません。そこで、今回は一計を案じて、ある計画を実行に移すことにしました。
結婚して何年か経ってからのことだと思います。「高校生のとき、バイクの後部座席に乗せてもらって、とっても気持ちよかったのよねぇ」という話をかみさんがしていたのを覚えていたからです。当時のボーイフレンドが、バイク乗りだったらしいのです。
さて、昨年の春から、作業服チェーン店の「(株)ワークマン」と組んで、『アンバサダー・マーケティング』という本を出版するプロジェクトがスタートしました。企画会議には、社外から商品開発を支援している「アンバサダー」と呼ばれる人たちが参加しています。アンバサダーさんたちは、キャンピングや山登り、釣りなどの愛好家で、趣味の達人たちです。この仕事を通して、アンバサダーのひとりで、バイク乗りのプロフェッショナルと親しくなりました。大屋雄一さんという方で、本業は、モーターサイクル・ジャーナリストです。
年末の懇親会の席でのことです。大屋さんに、かみさんのバイク乗り体験のことを話しました。そして、「彼女の誕生日に、バイクライド体験をプレゼントしたいので、ご協力をお願いします」と申し出ました。大屋さんは気持ちよく引き受けてくださいました。「詳しいことは誕生日が近づいてから」とその場で別れました。
大屋さんとの約束を思い出したのが、結婚記念日の2月24日です。かみさんの誕生日(4月18日)が2か月先に迫っていました。大屋さんは、千葉県市川市にお住まいです。わが家がある葛飾区高砂までは、江戸川の土手沿いをバイクで飛ばせば30分もかかりません。計画がバレないいように電話で相談の上、大屋さんのSuzukiVストローム(250cc)にかみさんを乗せてもらう場所は、柴又帝釈天裏の河川敷、決行は誕生日の2日前に決めました。
当日はわたしが車を運転して、河川敷の駐車場で大屋さんと合流しました。そして、かみさんの50年振りのバイクライド体験は、大感激のうちに終わりました。セレモニー終了後に、わたしから3人の子供たちに短いメッセージを送りました。
「ファミリーの皆さん! 本日は、まふさん(かみさんの愛称)のサプライズの朝でした。明後日に誕生日を迎えるまふさんに、高校3年生以来のバイクライドをプレゼントしました。場所は、江戸川の河川敷。ワークマンの大屋雄一さんのバイクで、河川敷の土手下の道を往復していただきました。感想は、まふさんに直に尋ねてみてください!」
以下は、翌日になって、かみさんが家族LINEに投稿した書き込みです。
「おはようございます。河川敷に連れていかれ、お舟に乗るのか?何かのスポーツイベントか?などと思っていたら、まさかのバイクに乗せてもらうというサプライズでした!」
かみさんからの事後報告です。50年前にバイクに乗せてくれたボーイフレンドの名前は、雄二さんとのこと。最初にバイクに乗せてくれたライダーの名前が雄二さんで、2度目が雄一さんとは、できすぎた話ですね。
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