拙著『マクドナルド 失敗の本質』のアマゾンランキングが、昨日は最高で18位まで昇り詰めていた。ビジネス書でも、一時期は4位だった。今朝も2桁(全カテゴリーで40位前後)をキープしている。日経書評欄の威力はすごいものだ。内容の方も絶賛してくれている。
著作権上はやや問題があるのだろうが、すでに前日の記事だからいいだろう(笑)。ネットの原稿を、そのままでアップしてしまう。日経さん、すいません!
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『マクドナルド失敗の本質』 小川孔輔著
「 競争力失ったビジネスモデル」(2015/3/8)
今話題の日本マクドナルドの経営問題を、マーケティング理論の大家がわかりやすく分析した好著である。昨年来、数々の不祥事に悩まされているマクドナルドであるが、経営不振の本質は、誤った経営でビジネスの根幹が揺らいでいる点にあることを、幅広い視点から解明している。
そもそも、マクドナルドの経営不振は米国本社に根本的な原因があり、著者によると「マクドナルドを壊した真犯人」は、米国の行き過ぎた株主資本主義と経営者の怠慢である。前者は、フランチャイズからの不動産リース収益を増やすため直営店の売却を会社に迫った「物言う株主」のヘッジファンド。後者は、イノベーションを怠り、短期的な利益追求に走った経営陣である。その結果、マクドナルドのビジネスモデルそのものが競争力を失い、「賞味期限切れ」になってしまったのである。
日本では、業績悪化は米国以上に深刻だ。過去10年間、最高経営責任者をつとめた原田泳幸氏の経営手法を巡っては、世上さまざまな見方があるが、マクドナルドを長年研究し、早い段階から問題点を指摘していた著者の議論には、大いに説得力がある。原田氏は、米国のビジネスモデルの移植とコストカットで一時的に業績回復を果たしたが、一方でビジネスの根幹をなす「商品とサービスの優位性」、「企業理念の全店舗での共有」、「現場の自律性」など大切な企業価値を毀損してしまったと著者は分析する。
日本マクドナルドは、1970年代の創業以来、米国のビジネスモデルを日本流にアレンジし、直営店中心の経営システムや人事制度を構築してきたが、過去数年の無理なフランチャイズ化、「賞味期限切れ」のビジネスモデルの推進で、良い面が壊れてしまったのである。
サービス業が海外事業を展開する際、本国のビジネスモデルをそのまま移転しても成功しないケースが多く、まして、食ビジネスは極めてローカルな色彩が強い。マクドナルドの未来は、壊れた価値を再構築するだけでなく、消費者の嗜好の変化を踏まえ、食材の選択やメニューの開発、チェーンオペレーションのやり方に至るまで、根本的に変えることができるか否かにかかっているという指摘は、まさに問題の本質をついている。
身近なマクドナルドを通じて、マーケティング理論、外食ビジネスのエッセンス、フランチャイズ事業の仕組み、経営論など、多くのことを学べる貴重な一冊である。
(東洋経済新報社・1500円)
おがわ・こうすけ 51年秋田県生まれ。法政大教授。著書に『ブランド戦略の実際』『CSは女子力で決まる!』などがある。
《評》経済評論家 小関 広洋