「あれもこれも症候群」: 伝えたいメッセージはシンプルに!

 同僚の竹内淑恵教授から、専門職大学院で募集用に作成したポスターについて興味深い、しかしながら衝撃的な指摘を受けた。竹内教授は、昨年までは「ライオン」と「電通アイ」で広告コミュニケーション計画の策定を担当していた。実務家の目は、わたしどもの戦略ミスを見逃してくれなかった。


彼女曰く。「イノベーション・マネジメント研究科(ビジネススクール)のキャッチコピーに一貫性がない。雑誌記事や新聞広告、募集用パンフレット、車内ポスターを見るたびに、訴求点が変わっている!」
 確かに指摘の通りである。小さなスペースに多くを詰め込みすぎていた。本当に伝えたい大学院のコアベネフィットが伝わっていない。反省しても・・・時すでに遅しである。マーケティングの専門家として、やってはいけない過ちを犯してしまった。私自身が「あれもこれも症候群」と呼んでいる罠に自らがはまってしまったのである。
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 ポスターや新聞・雑誌広告では、与えられるスペースが限られている。新しい事業に投入できる予算枠そのものが多くない。そのため、新聞や雑誌広告の掲載回数と出稿の頻度はわずか数回である。となると、学生募集に当たっては、こちらが伝えたいことをできるだけすべて、狭いスペースに押し込んでしまいたくなる。
 各回でスペースが不足するので結果、広告出稿のたびに訴求点を変えていく。順繰りにコアメッセージを変えるのが、まずかったのである。
 「情報科学とビジネスのコラボレーション」「日本初の一年制経営大学院」「市ヶ谷という立地の良さ」「著名な現役企業経営者によるアドバイス」「新規事業プロジェクトへの支援と投資機会の確保」などなど。
 メッセージを受け取る側の立場に立ってみれば、小さな枠内で多くを主張されても、にわかにはぴんとこない。たくさんの訴求点をまとめて提示されても、逆に混乱を引き起こすだけである。一番に訴えたいことを、もっとシンプルに大きな文字で表示すること。その他、伝えたいことは、「大学のHPをごらんください」。あるいは、「関連資料をご請求ください」。それだけで充分だったのである。
 今週の20日(金)、日本経済新聞首都圏版に全5段で、法政大学経営大学院「第3回目入試案内」の広告が掲載される。そこでは、簡素にわが大学院の強みを表現することになっている。最終原稿は見ていないが、訴求点は「一年制であること」に絞り込むことに決めている。焦点を絞ったことの効果は、いかに? 最終試験は、3月13日(土)に実施される。