IM研究科春学期「マーケティング論」(課題1&2)

 イノベーション・マネジメント研究科(2005年度)の授業内容をいつものように、欄にアップしました。なお、には、今年度の<テーマ事例研究>の課題を掲載します。


法政大学の一年制大学院で、どのような議論がなされているのか参考にしてみてください。他大学の学生さんがご自分のクラスと比較されるとおもしろいと思います。
 もしこの欄をごらんになって、議論のための関連資料がほしいと思われるときには、小川研究室宛に資料請求をしてください。無料で差し上げます。ただし、返信用の封筒を同封のこと!

IM研究科・2005年春学期「マーケティング論」(担当:小川孔輔)
 <討議用配付資料#1>

第一回目の授業の事前学習のために、以下の<必読文献>を読んでおくこと。また、クラス討議(ミニ事例、テーマ討議)のために、いくつかの資料を事前配布しておく。目を通して、課題について考えておくこと。当日は、適当にグループ分けをする。

1―1 5月12日(1時限) 「講義1:マーケティングの基礎概念」
 <必読文献> 嶋口「序章 仕組み革新の時代」
 <必読文献> レビット(2001)「マーケティング近視眼」

1-2 5月12日 (2時限) 「テーマ討議1:ユニクロの成長と海外事業展開」
 <討議資料> 小川孔輔(2003)「中国へのブランド移転物語」
        その他数点
        小川孔輔 個人HP、ユニクロに関連した記事
 <必読文献> 浅羽茂・新田都志子(2004)「事例:ユニクロ」

<参考>
  □嶋口論文:学習のためのポイント
  (Q1): 嶋口の言う「仕組み(革新)」とは、
        通常のマーケティングとどのように異なるのか?
        また、それは充分に意味のある定義と思うか?
  (Q2): マーケティング思想の発展過程を整理せよ。
        3段階で説明できるか?
        嶋口の説明とテドローの説明は一貫しているか?
  (Q3>: インターネットの登場によって、マーケティングの本質は
        変わったのだろうか? 「仕組み」(ビジネスモデル)
        は、われわれの現実をどの程度説明できるだろうか?

 □レビット論文:文献理解のポイント
    「マーケティング近視眼」を定義して分かりやすく説明せよ。
 (Q1): 「マーケティング近似眼」に含まれている
     マーケティング概念のエッセンスは何か? 
     いまやクラシックとなったレビット論文は、
     その後どのようなアイデアに発展していったのか?
 (Q2): 「市場の定義」をどのように考えるか?
     産業や商品カテゴリーの例をあげて、狭い定義と広い定義を
     実行せよ。
 (Q3): 石油産業と自動車産業は、論文発表後の40年で考え方を
     変えられただろうか? 変わらずにそのままだとしたら、
     考え方を変える障害はなにか?

<テーマ討議1>の課題
1 成長の歴史と現状の整理
(1)ファーストリテイリングの成長ステージを「何段階」かに分けて整理せよ。
   *最近の事業展開については、各自事前に調べておくこと。
(2)各ステージでの成功要因は、どのような性質のものであったか? 
(3)ファーストリテイリングの事業展開で、キーとなった成功要因は何だったか?
とくに、マーケティング上の革新はどこにあったか?
(4)2001年前後の”つまずき”はなぜ起こったのだろうか?
  また、それは回避できただろうか? どのようにすればよかったのか?

2 既存事業の評価
(1)柳井会長が考えた「3つの事業展開の方向性」とは何か?
(2)多角化事業として、「(野菜)食品事業」は適切な選択だったのだろうか?
   ・その他の代案として、例えば、「花事業」(併設専門店チェーン)はどうだろうか?
(3)野菜事業からの撤退を決断したことの正否は?
(4)海外の事業を、どのように評価すべきか?
   昨年度(2004年)中に英国は黒字転換し、今年度(2005年)は
   中国事業が黒字に転換する見通しである。海外事業は今後どのように展開すべきか?
   2004年(HP参照)の小川→柳井への手紙を評価せよ。
(5)ファッション産業(消費者)の国別の違いをどのように判断すべきか?
   英国、中国、日本でどのように環境が違っているか?
(6)一ヶ月限定開店の店舗(SELEQLO)の着想を評価せよ。
   参考(小川個人HP2005.4)
 
3 将来の事業展開と戦略シナリオ
(1)海外事業戦略展開を検討せよ。
  ・アジア(中国・韓国)、米国市場、欧州市場、
   それぞれの市場、およびと相互の関係をどのように考えるべきだろうか?
(2)長期的な全体的戦略計画のシナリオを描け。
  ・M&A(セオリーなど)の位置づけ
  ・新業態店舗(標準店、ユニクロプラス、セレクロ、駅中ミニ店舗)
  ・ネットストアなど
(3)創業経営者(柳井会長)と後継者チーム(玉塚社長以下5人)は、どのように経営の舵取りを役割分担すべきか?

<ミニ事例1>の課題
 <必読文献>
  黒岩(2004)「パーク24:プロダクト小口化型仕組み革新」
(Q1)「パーク24」の成功要因を整理せよ。
(Q2)コア事業にとって脅威となるビジネス(競合サービス)はあるか?
(Q3)関連サービスの周辺で、現在実行されている以外の選択肢はあるだろうか?
(Q4)駐車スペースを提供するサービス事業を、自由に発想して具体的に提案せよ。
    場所、時間、顧客ニーズ、なんでも思いついたものでよい。

<ミニ事例2>の課題
 <必読文献>出井(1999)「ソニー:ブランドは消費者のメンタル・プラットフォーム」
(Q1):出井会長の言う「メンタル・プラットフォーム」とは何か?
(Q2):ソニーブランドは、「メンタル・プラットフォーム」として機能しているか?
(Q3):出井会長(当時社長)の3つのチャレンジはその後、どのような展開を見せているか?それぞれを評価せよ。
 (1)本業のエレクトロニクスでチャンピオンであり続けること
 (2)エンターテインメント資産を活用していくこと
 (3)デジタルメディアを見据えて新規事業の芽を探し出していくこと
(Q4):新しい経営陣(国際混成チーム)への引継ぎをどのように評価するか?
 (1)社外取締役の役割は大きかったといわれている。それは事実か?
 (2)三洋電機(野中会長、井植副社長)の後継の仕方とソニーの事例を比較せよ。
 (3)「久多良木副社長(元)にバトンを渡すべきであった」との考えもあった。それは、今後のソニーのパフォーマンスはどのように影響したと推測するか?
 (4)ソニーはいま、マーケティング的にはどの方向に向かおうとしているだろのか?

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<討議用配付資料#2>

<テーマ討議2>の関連課題
 <必読文献> 小川(2005)「事例:シンプルスタイル」
 <付属資料> 大山健太郎(2002)「ホームソリューション・マネジメント(抜粋)」
 
(Q1)ホームセンター業界の最近の動向で、これまでになかった顕著な動きはどのようなことか?
(Q2)アイリスオーヤマの「メーカーベンダー業」とはなにか? 定義せよ。
(Q3)アイリスオーヤマにとって、「シンプルスタイル」の開発意図は何か?
(Q4)製品コンセプト=「着せ替えコンセプト」を評価せよ。
(Q5)シンプルスタイの「20歳~30歳代後半」というターゲット設定は、正しいだろうか?3月以降、現在(6月末)までのコミュニケーション戦略を評価せよ
(Q6)地方都市(仙台)と首都圏(西地区)のどちらが有望な市場と見なされるか?
(Q7)ホームセンターにとって、シンプルスタイルはどのように受けとめられるか? この業態コンセプトは、HCにとって「脅威」なのか、それとも「機会」と考えるべきか?

<テーマ討議3>の関連課題
  <必読文献> 三村(1999)「資生堂:日本的マーケティングの誕生と展開」
  付属資料1: ブランド展開(小川「よくわかるブランド戦略」日本実業出版から抜粋)
  付属資料2:中国のおける資生堂ブランド“オプレ”

(Q1): 資生堂のマーケティングの特徴を整理せよ。
  事例(三村)では、(1)販社と小売系列化~(8)文化性の高い広告表現となっているが、エッセンスをもう少し整理するとどのようにまとめることができるか?マーケティングシステムとして表現せよ。
(Q2): 化粧品市場の成熟化によって、資生堂のマーケティングにはどのような変化(困難)がもたらされたか? 資生堂はそれにどのように対応していったか? とくに、ブランドを中心とした事業展開と流通政策について述べよ。
(Q3): 中国における資生堂のマーケティングは、今後どのように進展すると考えられるか? とくに、地方都市(300万人以上)でのチェーンストア展開について考察せよ。

<ミニ事例3>の課題
 <必読文献> 阿久津(1999)「トヨタ:異文化へのブランド移植」
(Q1):米国におけるトヨタ自動車と三菱自動車の現地化のちがいはどこにあったのか?
(Q2):耐久消費財に限らず、マーケティングを実行する上で、「フェアネス」は本当に有効な概念か?あるいは、特殊な状況下でのみ有効だと考えれるか?
(Q3):アジア(とくに、反日感情が強いと考えられる韓国と中国)におけるトヨタ自動車の企業ブランド戦略のシナリオを描け。

<ミニ事例4>の課題
  延岡(1999)「トヨタ:マルチプロジェクト組織への変革」
(Q1): 90年代前半に、トヨタ自動車が商品開発組織を再編成した理由をまとめよ。
(Q2): 文献に書かれているように(良いことばかりが書かれているが)、本当に組織の再編成に問題はないのだろうか?
(Q3): トヨタとそれ以外のメーカー(例:クライスラー)で、組織の形式はどうであれ、実際の商品開発組織の運用に違いが出るのはなぜなのか?

<ミニ事例5>の課題
 <必読文献> 小野(1999)「帝国ホテル:顧客獲得の維持とバランス」
 <参考図書> フィスク他(2005)「コラム:リッツカールトンの関連部分」『サービス・マーケティング入門』法政大学出版局
(Q1):サービス企業としては、帝国ホテルの優れているところはどこか?
(Q2):帝国ホテルとリッツカールトン(外資系の代表)と比較せよ
(Q3):帝国ホテルのサービスシステムに改善点があるとすればどこか?