【講演録】 「日本企業の東アジアでのプレゼンスとパフォーマンスを考える: 「中国プラスワン」から「ハーフ&ハーフ」へ:」(科研費「アジア マーケティング移転研究」2012年度)

 科研費「アジア マーケティング移転研究」の講演会が3月に開かれた。「京都産業エコ・エネルギー推進機構」の主催で、大学コンソーシアム京都、ビジネス・クリエイター&マーケター育成スクールの特別公開セミナーである。研究メンバーの3人が講演を行った。図表(パワポ資料)は、リスエストしていただくと提供ができる。テキストのみアップする。

日本企業の東アジアでのプレゼンスとパフォーマンスを考える:
「中国プラスワン」から「ハーフ&ハーフ」へ

法政大学経営大学院 小川孔輔(教授)

日時:2013年3月17 日14時30 分~15 時15 分
於:京都市・キャンパスプラザ京都

講 演 要 旨(メモ)

挨拶(コーディネーター・林廣茂先生より)
・今日の講演会では、文部省科研費の「アジアマーケティング移転研究」メンバー3人が講師を務める 
・本科研費研究は、欧米アジア企業のアジアでのマーケティング展開について、日本国内大学およびアジアの大学のネットワークで進めている

小川教授講演要旨(メモ)

- 内 容 -
はじめに
(1) 80年代→2010年代 規制→市場 
(2) 海外へ持っていくもの=文化/製品(ブランド)/技術(仕組み)
(3) 消費を支える要因~厚い中間層/若者
(4) KFS 改善の継続、現地人の登用、現地化

1.はじめに
今日は、「日本企業の東アジアでのプレゼンスとパフォーマンスを考える -中国プラスワンからハーフ&ハーフへ」というテーマで話をする。
 我々のグループでは、東南アジア、中国、韓国・台湾での日本企業のマーケティング活動を中心テーマに、文科省の科研費の助成を受けて、研究を始めている。
今日の私の話では、最初に、アジアでのマーケティング研究の背景にある基本認識を示す。次に、この地域全体の社会経済および投資状況を概観する。その後、個別の企業の事例紹介を行う。

(1) 80年代→2010年代 規制→市場
 まず、日本企業の海外進出が進んだ1980年代以降と、現在の状況とを比較してみたい。一言でいうと、私や林先生がアメリカのマーケティング文化を日本に移転していた時代には、アメリカをはじめとする海外からの圧力や、大店法改正により新規出店が困難になるというような国内の規制によるプレッシャーが、日本企業にとっての海外進出の主な要因だった。
 現在は違う。いま日本企業が海外に出ていくのは、「そこにマーケットがあるから」ということが理由である。進出の動機が、「規制」から「市場」へと変わった。

(2) 海外へ持っていくもの=文化/製品(ブランド)/技術(仕組み)
日本企業が海外に持っていくものは何か?持っていくものは、文化/製品(ブランド)/技術(仕組み)である。これは、今日の3人の講師の講演内容と呼応している。私は、製品(ブランド)の移転について、事例を引きながら考える。松井先生は漫画をテーマに、文化の移転の話をされる。並木先生のテーマであるコンビニは、フォーマット(業態)の輸出だが、フォーマットにサービスを付加して売るという意味では、売る仕組み(広い意味では技術)を輸出する試みである。コンビニはアメリカの発明だが、内容を進化させたのは日本企業で、それを今、海外に持っていこうとしている。

(3) 消費を支える要因~厚い中間層/若者
日本がアジアに出るとき、サービスでもメーカーでもそうだが、成功要因は大きく言って2つある。
第1の条件は、マスのマーケットを支える中間層の厚さである。中間層が厚くなければ、マーケットが拡大する可能性が低くなる。この点については、後で、ASEAN諸国の消費市場のボリュームについてのデータを見ながら考える。 
もう一つ重要な条件は、現地で日本的なビジネス慣行や商品などを受容してくれる可能性があることである。

(4) KFS ①改善の継続、②現地人の登用、③現地化
最後に、今日の話の結論を先取りする形になるが、日本の製品やサービスを単にアジアに持っていくだけでなく、長期的に根付かせるためには、次の3つのポイントがあると考えられる。
第1のポイントは、「改善の継続」である。現地の状況に応じて、ビジネスの仕組みをたえず改善していくことが大事である。日本企業が得意なのは、継続して改善する能力、改善の仕組みを作っていく能力である。
2番目は、現地人の登用である。進出企業についてきちんと量的研究をしたわけではないが、おおむね言えることは、進出先で根付いた企業は、現地人の登用に成功しているということだ。ハニーズという福島のアパレル企業は、国内800店舗、中国では500店舗を展開しており、中国市場ではユニクロより成功している。しかし、中国の社員のうち、日本人は一人だけで、残りの大部分は、日本の大学院で学んで、中国に帰っている中国人である。
3番目は、現地化である。製品やサービスをうまく現地に適応させることが重要である。 
 

2.中国から東南アジアへ:「チャイナプラス1からハーフアンドハーフへ」
(1) 世界の対中直接投資
 それでは、これから、本題である「チャイナプラス1からハーフアンドハーフへ」という戦略について考える。まず、背景として、中国から東南アジアへの投資の分散状況について、マクロ指標から見ていく。その後、大正製薬やヤクルトさんなどの事例を要約して紹介する。そして特にベトナムに焦点を当て、日本の企業の現地での展開状況について、5社の事例を引いて話をしたい。

 まず、最初に、今日の講演タイトルである「チャイナプラス1からハーフアンドハーフへ」という現象について、投資額の面でデータを確認しておきたい。
現在、多くの企業の間で、中国に向けていた投資を東南アジアに分散していく傾向が見られる。対中直接投資額の推移のデータを見るとわかるように、2010年、11年から、伸び率は落ちており、今年あたりマイナスになるのではないか。特に、2013年1月の投資額は、前年同月比マイナス7.3%と、大きな落ち込みを示している。具体的には、船井電機やバンダイ、ファーストリテイリングなどの日本企業が投資を減らし、中国生産を見直して、過度の中国集中を是正する方向に動いている。日本企業だけではない。アディダスや鴻海(ホンハイ)精密工業(フォックスコン)など、海外企業の間にも、中国外へ投資を分散させる動きがある。

その理由の一つは、中国での賃金水準が高くなり続けていることである。上海を例に取ると、2012年の一般ワーカーの賃金は月額439ドルで、前年比40%以上上昇している(ジェトロ調査)。ホーチミン(130ドル)と比べて、3倍以上の水準になっている。ヤンゴン(ミャンマー)なら68ドルだ。私の教え子が、今年ハニーズに就職し、ミャンマーに赴任して現地の工場を1人で担当する予定になっている。賃金水準を見るだけで、チャイナハーフアンドハーフ戦略の合理性がわかるはずである。

(2)  日本企業のASEANへの投資分散:中国を上回る
 ASEAN各国への日本からの直接投資は、2011年の統計では、2010年比で1.3~2倍以上増えている。インドネシア向けは7倍である。実際には、ASEANへの日本企業の投資額は、15~20年前までは非常に大きかったのだが、その後中国が急激に伸びてきたので、その影でしばらくかすんでいた。それが、2005年くらいからまた伸び始め、最近ではその動きが加速しており、2011年には中国向け投資を上回り始めた。

(3) ASEAN各国の投資環境
 中国政府は、2013年の経済成長率目標を7.5%に設定している。ASEAN各国は、6%前後の成長率のところが多いが、経済のパイは、これからまだまだ拡大していく余地がある。厚い中間層が生まれて、成長のドライブがかかってくるはずで、現在の5~6%以上の成長は、間違いなく達成可能だろう。

 その根拠の一つとして、各国の人口ピラミッドの構成を見てみよう。ASEAN各国の人口ピラミッドは、概ね規模が大きく、若い人口構成になっている。中国は、一人っ子政策の影響もあり、高齢化が非常に進んでいる。これに対して、フィリピンやインドネシアはすそ野の広がったピラミッド型になっている。つまり、これから10年もすれば、厚い中間層、しかも若者が中心になった中間層が非常に増えていく。中国は人口の点でマスが大きいのだが、人口構成という点から見ると、アドバンテージがあるとは言えない。

 参考までに、日本の1人当たりGDPの推移に、ASEAN諸国の現在のGDP水準をプロットしてみよう。日本の歴史で言うと、各国が現在だいたいどのくらいの経済段階にあるのか、イメージしやすくなるはずである。日本の1965年以前の状態にあるのがミャンマー、1967~68年くらいがベトナムで、フィリピンとインドネシアは、日本の60年代後半から70年代の高度経済成長只中の状態に対応している。これらASEAN諸国は、今後いっせいに、日本の1985年くらいの水準に達する可能性がある。GDP成長率の推移も、この予測を裏付けている。

(4) 厚い中間層の誕生
 次に、各国で厚い中間層が生まれているか、あるいは5~10年後に生まれる可能性があるかどうかを見てみる。中間層は、年間世帯可処分所得5,000~35,000ドルの層を指すとすると(ユーロモニター)、中国では、ロウワーミドル(世帯年間可処分所得5,000~15,000ドル)の層が厚かったが、2015年くらいからシフトし、2020年には、アッパーミドル層(同15,000~35,000ドル)が広がると予想される。
他のASEAN諸国でも、ロウワーミドルが厚くなり、その後、2020年にはインドネシアやマレーシアでは、富裕層が増えるという予測になる。中国よりはやや低いが、近いレベルになっていき、厚い中間層が生まれていくだろう。
 一方で、アジア各国の世帯あたり耐久消費財普及率をみると、意外とまだ普及していないものもある。例えば、インドネシアでの冷蔵庫保有率は25%、ベトナムでも29.9%である(ユーロモニター調べ)。とはいえ、タイやマレーシアのレベルにインドネシアが達するのには、それほど時間がかからないかもしれない。流通が近代化すると、耐久財消費も一気に膨らむのではないだろうか。

(5) 日本への評価:対日感情、製品イメージ
海外進出して、自社の製品やサービスが現地で受け入れられるかどうかについては、現地の人の投資国への好感度やイメージも、大きな影響要因となる。
 BBCが毎年行っている世界好感度調査によると、日本への好感度は、中国や韓国では低い一方、インドネシアでは、回答者の77%が日本に好感を持っていると答えた。なお、世界平均では、日本は好感度第一位にランクされている(注:2012年調査は世界26か国、東・東南アジアでは日韓中、インドネシアで調査。好感度とは、その国が「おおむね、世界によい影響を与えている」という評価を指す)。
 外務省のASEAN各国における対日感情調査(2008年)では、「日本は友邦として信頼できるか」という質問に対し、各国の国民は概ね好意的な態度を示している(タイ90%、インドネシア92%、フィリピン93%、ベトナム98%)。同じ外務省の調査によると、日本企業の投資や工場進出についても、「歓迎する」という回答が、インドネシア96%、ベトナムでは100%に至っている。タイ(81%)とフィリピン(88%)のスコアがやや低めだが、日本からの投資は、だいたい肯定的に受け止められているようである。

以上から、韓国や中国と比べると、ASEAN各国は、日本企業にとって、投資環境としても、消費の環境としても、望ましいことがわかる。

さらに、日本の製品のイメージを欧米中国韓製品と比べた調査結果(博報堂『Global HABIT』2012年調査)を見ると、日本は「高品質」で「定評がある」という点で、高いスコアを獲得している。韓国製品は、「かっこいい」「センスがいい」という点で高い評価を受けていて、こうした点では、欧米や日本と同じレベルにある。また、韓国製品は、欧米や日本製品にくらべて、「活気や勢いがある」とみなされている。ベトナムでもインドネシアでも、韓国製品へのイメージは高い。

3.日本企業  グローバル展開事例
(1) ヤクルト
 次に、日本企業のグローバル展開の事例を、いくつか紹介したい。
まず、ヤクルトのケースを見てみる。ヤクルトは世界各国に拠点がある。また、売上高では、かつては国内とアジア・オセアニア地区の比率は2:1だったが、今期は、海外売上高が国内を追い越しそうな勢いである。アジア・オセアニアの営業利益は、100億円に近付いている。マクドナルドやスタバは、日本での収益率が高い。ヤクルトの収益構造は、海外比率が高いという点で、これらの企業と似たような形になりつつあるようだ。
ヤクルトが海外で成功したのは、コンビニの普及とも関連している。コンビニが、店舗フォーマットや、商品開発の仕組みを各国に移植したことと並行している。さらに、ヤクルトの場合、製品だけでなく、ヤクルトレディという販売の仕組みを持ち込んだことも成功の大きな理由である。現地の社会に、ビジネス、雇用、子供の教育など、様々な面で貢献した。こうした現地での長い間の社会貢献の結果が、ヤクルトの成功を支えている。
ヤクルトは、台湾を皮切りに、アジアで1960年代から展開している。現在、東アジア・東南アジアでは1日に1,392万本を売り、ヤクルトレディは、インドを除きアジア全体に2万6,000人もいる。 

(2) 大正製薬「リポビタンD」
大正製薬も、「日本の製品のよさを伝える」という使命感を持って、早くから東南アジアを中心にグローバル展開してきた企業である。「エナジードリンク」というカテゴリーは、日本の発明である。現在、リポビタンDは、世界15か国で販売されており、海外ドリンク剤売上高は64億円に上っている。
大正製薬さんの場合、レッドブルなどの強力な競合製品があり、苦戦しているものの、現地市場への参入は早かった。タイでは1965年進出し、現地のエナジードリンクのパイオニアとして知られる。リポビタンDは、早くから、各国の事情に合わせたパッケージやブランド展開を行ってきた。たとえばベトナムでは、暑くて喉が渇きやすいため、ビンではなく、容量の大きい缶入りで売られている。インドネシアでは、青を使わず、赤いラベルで、パパママストアでも販売している。このように、リポビタンDでは、ブランド、味、パッケージなどで、かなり現地化が進められてきた。

(3) 小売流通
流通については、並木先生に詳しくお話しいただくが、特にコンビニでは、先頭にいるのが、タイである。インドネシアでも、日本の流通企業の成功の可能性があると思われる。

4.  ベトナムの事例
(1) ベトナム琉球文化工芸村(ハノイ郊外)
 次に、私が一昨年ベトナムを訪問した際に訪問した企業の例を、いくつか紹介したい。
まず、中小企業の例として、琉球ガラスの例を挙げる。琉球ガラスは、沖縄のお土産としてよく知られているが、比較的安価の普及品については、多くがベトナムで製造されている。1995年、シャトーヒルズという沖縄・糸満市の企業がベトナムに進出し、現地で工場を立ち上げて、沖縄から琉球ガラスの製造技術移転を進めた。現在、ガラス製品600種、300万個を生産している。私が見学したハノイ郊外の工場は、作業員が12人に分かれ、窯で焼いていくスタイルになっていた。売価は、日本円にして320円から640円である。しかし、ベトナムの現地従業員の最低賃金は年10万円程度なので、非常に安く生産できる。したがって、利益率は非常に高い。工場の方の話では、ベトナム人は非常にまじめに働くとのことだった。

(2) ベトナムの小売状況
 ベトナムでは、街を歩き、小売店と商業施設を回って、客と製品、サービスを観察した。コーラ(500ml)を例に取ると、ハイパーマーケットでは30~40円だが、パパママストアでは2ドル近い値段で売られており、3~5倍くらいの価格差がある。ハイパーマーケット「ビッグC」で、店頭観察をした。3階建て、売場面積1万坪で、来店客数は土日で1日3万人、平日1.5万人、客単価は800円程度である。年商に換算すれば、スーパー部門70億円、SCで100億円くらいになるだろう。客層としては、一般労働者の3倍くらいの年収がある消費者層が購入しているようである。このレベルのお客さんがいるのだから、コンビニはもっと普及する可能性がある。ただし、ベトナムは共産主義国であり、さまざまな規制があるということを忘れてはいけない。彼らの利権を、民間に開放することができれば、小売流通はもっとうまくいくだろう。
 ベトナムのコンビニを見ると、ファミリーマートは住宅街で、学校に近い所に進出している。利用者の7割程度は、中高生を中心とする子供である。現地の状況に合わせ、店内には飲食スペースが設けられている。ファストフード店代わりに、カップラーメンなどを食べる生徒で賑わっているようである。

(3) ヤマハモーター・ベトナム
 ベトナムでは、街中にバイクが多い。大気汚染が深刻なので、皆、マスクをしている。 ベトナムではバイクは年間300万台売れており、保有台数は2,000万台にのぼる。売れ筋は6~20万円の製品で、クレジットではなく、現金購入が主である。おそらく親や親戚から借金をして買っているのだろう。
そのベトナムのバイク市場で、トップシェアを占めているのがホンダ、そして2位がヤマハである。ホンダはマス市場をターゲットにして、頻繁にモデルチェンジや新商品を発売している。一方、ヤマハはプレミアムブランドとしての位置づけである。ベトナムの街中を歩いて、いちばん目に付く素敵なお店は、バイク店である。ヤマハのお店もとても目立つ。
ベトナムでは、一時期、中国製の模造品が大量に流入してきて、日本メーカーのシェアは20%くらいにまで下がった時代があった。しかし、コピー商品は、結局、品質が劣る上、アフターケアにお金がかかることがわかり、コピー製品は、次第に市場から駆逐されていった。一方、日本メーカーは、最新モデルを頻繁に投入し、アフターサービスなどを充実させることで、ベトナム消費者の支持を得ていった。
現地市場で、日本企業は何に向けて戦っているのだろうか?安い競合品に対してではない。戦いの焦点は、「豊かになりつつあるベトナム消費者の支持を得ること」にあるのである。

(4) 矢崎総業ベトナム(YEV)
矢崎総業は、ワイヤーハーネス(自動車用配線組部品)で世界シェア30%を誇る企業である。リスク管理のため、複数国で複数の部品製造を行っている。ベトナムはその中の一つである。ホンダやトヨタなど日本メーカーだけでなく、現代やGMにも部品を供給している。矢崎総業は、1995年にベトナム(ホーチミンとハノイ)に進出して以来、現地で成功を収めている。ベトナムでの成功理由は、3つある。 
1つ目は、ヤクルトのケースと似ているが、サッカー大会、産休制度を始め、地域の社会活動に投資し、良質な労働力を確保したことである。工場に行くと、地方から出てきた女の子たちが、会社の寮に入って暮らしている。昔、日本にも集団就職というのがあって、地方出身の若い人達が、出身学校ごと東京の下町や周辺の都市に来て働いていたが、それと同じようなことがベトナムでも行われている。ビジネスの中に社会貢献を組み込んでいる。
第2の成功要因は、現地の日本企業との連携がうまく機能していることである。矢崎総業は、世界中のワイヤーハーネス製造のための部品をベトナムに持ってきているので、その調達のため、現地の日本企業(清和運輸ベトナム)と組んでいる。この日本のロジスティックの会社との連携がうまくいっている。この企業は、ベトナム国内や輸出入の物流も担当している。ヤマハも同じで、工業団地内に、部品供給メーカーが静岡からセットで進出している。
 第3の要因は、ベトナム工場のグローバル戦略への組み込みが、全体としてうまくなされていることである。

(5) エースコック ベトナム
 エースコックは、日本ではトップブランドではない。しかし、東南アジアでは、日清より広く知られており、ベトナムでは即席麺市場でトップシェアを占めるに至っている。エースコックの海外事業売上高は、2012年12月期で390億円(前期比10%増)に上り、連結売上高の42%、営業利益の60%を海外で上げている。  
エースコックは、1993 年にベトナムに進出した。当初は輸入材を使って製造していたので、15円という、現地製品(5円程度)の3倍の価格で売られていた。しかし、2000年頃からは、ベトナムでも工業化が進み、国産化できるようになった。そして、2000年には、戦略商品「ハオハオ」を発売している。食品では、作る技術は日本のものでも、味付けやパッケージは、現地人に任せた方がよい。「ハオハオ」は、ベトナム人スタッフが開発を担当し、甘辛酸っぱいエビ味になっている。日本人のテーストとは異なる。
「ハオハオ」は、価格も大幅に下げ、7円にした。現在、「ハオハオ」はベトナムの即席麺トップブランドで、総需要 49 億食中、シェア65%を占めている。味も毎年変えており、うどんのラインも発売している。さらに、ベトナムでの成功と並行して、カンボジア、ラオス、ミャンマーなど近隣国への輸出も行っている。こうした現地展開のノウハウは、日本企業がベトナムで作り出したものだ。
変えたのは、味と値段だけではない。ロゴも、現地および輸出先の文化に配慮し、日本では豚だが、ベトナムでは男の子のロゴに変えている。スタッフも日本人は13人だけで、あとは現地スタッフである。
 
 以上から明らかなように、アジア進出の成功の鍵は、製品やサービスの現地化であると言える。
(了)