『日経マネー(2016年10月号)』の50頁~51頁にインタビューが掲載されている。
国内のマーケティング研究の第一人者の地位を不動のものにしているのが、小川孔輔・法政大学経営大学院教授だ。著書『マネジメント・テキスト マーケティング入門』(日本経済新聞出版社)は、教科書として、大学生に広く読まれている。日本マクドナルドの業績不振の真因を探り、ベストセラーになった『マクドナルド失敗の本質』(東洋経済新報社)など、個々の企業のマーケティング戦略の分析にも定評がある。
定説の逆を行く投資を
小川教授が主にウオッチしている小売業で、成長性の観点から注目している企業を聞くと、意外な答えが返ってきた。注目企業の筆頭として、ひたすら地域に密着して支配的な地位を築いている企業に言及したのだ。
少子高齢化に伴う人口の減少で縮小する国内市場には成長の余地がない。内需型企業も海外に進出し、アジアなど新興国の成長市場でシェアを獲得することが必要だ。こうした考えが定説になり、海外売り上げ比率の高い企業を対象とした株の購入を勧める声も多い。
だが、個々の小売りや食品メーカーの動向を見ると、「特定の地域に密着して、業績を拡大している企業が多い」と小川教授は指摘した上で、「逆張り投資の一環で地域密着で成長している企業に投資してはどうか」と続ける。
代表例として小川教授は、埼玉県を地盤とする食品スーパー大手のヤオコーと、首都圏でラーメン店「日高屋」などの外食チェーンを展開するハイデイ日高を挙げる。
ヤオコーは、今期(2017年3月期)に28年連続で増収経営増益を達成する見込み。ハイデイ日高も、今期(同年2月期)に13年連続で最高益を更新する見通しだ。
首都圏以外で伸びる会社も
特定の地域に密着することで業績を伸ばすのは、人口の流入が続く首都圏を地盤とする両社だけではない。地方の特定の地域に密着している小売りの中にも、業績を順調に拡大しているところがある。
北海道・東北地方で食品スーパーを展開するアークス、東海・北陸地方を地盤に食品スーパーやドラッグストアを運営するバローホールディングス、中国地方の地盤のの大黒天物産、沖縄県でスーパー、レストラン、ドラッグストアを手掛けるサンエーなどだ。いずれも増収増益を続けたり、最高益を更新したりしている。
「食品などは地域によって嗜好が異なり、そうした地域のニーズにうまく対応している。集中出店で配送効率なども高めている」。小川教授は地域密着の小売業の強みをこう分析する。
特定の地域に密着する企業に目を向ければ、知られざる成長企業を発掘できるかもしれない。