2年越しで企画・実施してきた「OMR調査報告書」の完成が迫っている。昨年度は、生産者調査(約500サンプル)、消費者調査(約500サインプル)、中間流通業者の聞き取り調査(加工・卸と小売業者、約100社・店舗)が終わっている。わたしが担当した「消費者調査」のサマリー(暫定版)を紹介する。
「OMR報告書」小川担当分(暫定版2010年3月23日)
1 消費者調査(サマリー)
(1)消費者調査の結果概要
有機食品の利用経験者は、調査対象者の約3分の2である。経験者の中で、週1回以上有機食品を利用しているユーザーは、消費者全体の約2割である。有機食品を購入するのは、50代以上の女性であることが際立った特徴である。なお、「ほとんど有機を利用する」コアなユーザーは、全体のわずか0.9%であった。レストランカフェの利用者では、これが1.4%である。外食・内食のいずれにしても、日本人のごく少数の消費者が、有機食品のコアユーザーであり、有機食品農業と有機食品産業を支えていることがわかる。
「有機」あるは「オーガニック」という用語は、9割以上が聞いたことがある。しかし、厳密な定義で「有機」を理解している人はごくわずかであった(5.3%)。このことは、「有機農産物」や「有機食品」などに関する質問をされた場合に、データの分析者は、低・減農薬で栽培された農産物をも含む、広い意味での「有機」を消費者は想定して回答していると理解すべきことを示唆している。
「ほとんどすべて有機を利用する」と答えた人は、月間11,800円ほど有機食品を購入している。12ヶ月分をかけると、ハードコアな消費者だけからなる有機食品の市場規模は、約624億円になる。それ以外の消費者は、「有機」の厳密な定義を理解していない。日本の有機食品市場は、ハードコアば0.9%の消費者によって支えられていると想定でききる。また、有機食品市場が大きく飛躍できない理由のひとつは、ヘビーユーザー以外の消費者が購入量を増加させていないことである。
有機食品の購入先は、野菜と大豆、米で販売チャネルが異なっている。野菜や大豆製品の購入では、スーパーが多いが、米では購入比率は小さくなる。購入先として多いのが、生協である。ただし、有機米では、農家から直接購入、ネット販売会社が上位になり、直販経路の比率が高くなる。なお、アンケート調査では、野菜に関しては、直売所の比率が際立って高い。しかし、厳密な意味で「有機野菜」を扱っている直売所は、実際にはほとんど存在していない。回答の多くは、消費者の誤解(「有機」と「減農薬」、「地産池消」を取り違えている)に基づくものである。消費者に対して、「有機」に関する情報提供が不足していることが原因である。
消費者の9割は、有機食品の購入がある。野菜、大豆、米の3つのカテゴリーが、経験率の上位に上がってくる。続いて経験率が高いのが、豆腐、みそ、醤油、納豆などの大豆を加工した食品群である。麺類や調味料では、有機のコアユーザーの比率が、一般のサンプルよりも高くなっている。
有機食品の価格イメージは、今回の調査では、通常の食品と比べて「2割程度高い」であった。購入しても良い許容価格(通常は2~3割高まで)よりも、価格イメージでの差は縮まっていることがわかる。有機食品の価格イメージ差は、とくにヘビーユーザーについては、「一般とそれほど変わらない」と答える比率が高いことがわかる。有機食品の情報源としては、圧倒的に「店頭の表示」が重視されている。「新聞・雑誌などの記事・広告」も重要な情報源ではある。しかし、一般の食品と比べると、口コミやネット経由での情報は少ない。また、有機食品のコアユーザーでは、「書籍」が重要な情報源になっている。
輸入の有機食品は、利用度はある意程度高いが、できれば国産にしたいという希望が多い。国産品志向が、有機食品に関しても認められた。有機JASマークを「必ず確認している」という人は1割にも満たない。また、一般の利用者は、有機JASマークをほとんど購入の手がかりにしていないことがわかった。
有機食品の利用者は、ほぼ70%が満足しているがわかった。また、有機食品のイメージに対しては、「安全である」「健康によい」などのプラスのイメージが上位にランクされている。それとは逆は、「品揃え」や「手に入れにくい」など、商品の入手可能性が問題にされている。もちろん、「環境負荷の低減」はプラスの評価であるが、「虫食いや汚れが気になる」や「賞味期限が短い・すぐに傷みやすい」などのネガティブな評価は、心配していたほど評価がきびしくはなかった。
利用者の調査から、有機食品のイメージをまとめると、4つの因子に集約することができた。すなわち、「健康安全因子」 、「情報因子」、 「入手可能性因子」、「ネガティブ要素因子」である。消費者の総合満足には、情報因子と健康安全因子が貢献している。また、購入金額を説明する因子としては、「健康安全因子」だけが説明要因となっていた。
(本文は省略)
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