先週の木曜日(11月13日)に、友人の汲田貴司さんから、LINEにメッセージをいただいた。「私の妻(亜紀子)が、10年にわたって雑誌『DANCYU』(ダイヤモンド社)に連載してきたコラムが『ごちそうシネマ』という一冊の本になりました。映画の食シーンに注目して、その魅力を語るユニークでおもしろい本です」(https://www.amazon.co.jp/dp/4991293472/アマゾン)。
汲田さんによる、亜紀子さんの紹介文は、次のようになっている。
「シンクタンク(日本総研、ぴあ総研)勤務を経て、フリーランスのマーケティング・リサーチャーをやってました。クライアントに食品・飲料メーカーやTV番組制作会社(NHKなど)が多く、
そこで知り合った方々からのお声掛けで、食のマーケティング系の本を書いたり(共著)、雑誌のコラムを書いたり、ギャラクシー賞の審査員をやったりするようになり、今回の書籍化の話に至ったようです」という経歴の方らしい。
わたしも映画や食べ物が好きなので、早速アマゾンでご本を予約させていただいた。表紙の印象から、大体の内容は想像できた。日曜日の午後に『ごちそうシネマ』が自宅の郵便受けに届いた。昨日の午後にかけて、361頁の分厚い本を読了した。とりあえずの感想は、とてもおもしろかった。
映画やドラマに登場する食のシーンに注目したエッセイを、一冊の本にまとめた書籍はこれまで見たことがない。また、本書は切り口がユニークであるだけでなく、著者が映画と料理の両方に造詣が深いことがよくわかる。わたしは、ドラマや映画を頻繁に見るわけではない。それでも、著者の濃密な記述によって、あたかもたくさんの映画を見てしまった気分になってしまう。
連載時には、エッセイで取り上げる映画をすべて視聴し直したにちがいない。本文中で76本の映画(ドラマ)を取り上げている。その時間たるや、相当な長さになっただろう。旦那さんの貴司さんも一緒に、テレビ画面を見るために、お隣の席に腰かけていたのだろうか?気になってしまう。
「一冊の本にまとめるにあたっては、連載順ではなく、作品に登場する主要な食べ物や食シーンごとに再構成しました」(はじめに、P.7)という編集の仕方の説明があった。この方針が本書を読みやすくしている。秀逸なまとめ方だと思った。
各章の構成(タイトルと食カテゴリー)を紹介してみたい。
1 甘くてやさしい、ときどき苦い お菓子・スイーツ
2 主役のごちそうを召し上がれ 肉・魚料理とたまご
3 誰かと食卓を囲むということ 鍋・大皿・BBQ
4 もりもり食べれば明日がくる 麺と丼・ごはん
5 旬と個性を味わう 野菜
6 つまんで、食べて、楽しんで ファストフード・スナック
7 酔いしれて、その先に お酒と飲み物
映画の登場人物たちの食シーン(タイトルの前半)が、俳優の気持ちと役者たちの絡み方を想像させる。そして、テーブルの上に乗っかっているプレート(後半、食のカテゴリー)が映画のテーマを象徴するアイテムになっている。本書全体を通して、映画のテーマがシンボリックな形で料理によって表現されている。その絶妙な解説が本書の魅力である。
わたしも物書きの端くれである。なるほどと思ったのは、自分(小石川一輔)も作品の中で、食シーンや料理を頻繁に登場させていることに気がついた。理由は、料理や食べるシーンが、エッセイのテーマや場面の雰囲気を際立たせるからだと思う。
最後に、くみたあきこさん風に、2023年に刊行した私小説(小石川一輔著『わんすけ先生、消防団員になる。』小学館スクウェア)から、食シーンと食べ物が取り上げられている「節」を抜き出して、本書の紹介文を終えることにしたい。
たしかにそうだ。小説(映画)には料理がつきものなのだ。
Amazon.co.jp: わんすけ先生、消防団員になる。 : 小石川一輔: 本
もくじ
第1章 下町生活に馴染む
2節 柴又帝釈天、草団子の「大和家」 → 草団子
3節 ベーカーさんのパーシモン(柿) → 柿 ピザ
第2章 鉄っちゃん家族とマーニーさん
4 41年目の結婚記念日@「とうふ屋うかい」 → とうふ
第3章 ご近所さんの店じまい
1 わんすけ先生、消防団の制服に魅せられる → 寿司屋
2 味噌の請け売り、かつしか小町 → 味噌 日本酒
3 柴又の老舗、川魚料理「川甚」が閉店になる → うなぎ 川魚料理
第4章 東京下町を歩く、走る
1 創業129年、「土手の伊勢屋」へ行ってきました → 天丼
第5章 下町情緒:江戸から明治・大正の風物詩
1 「山本亭」の白日夢:大正浪漫の庭と建物 → お汁粉 抹茶
2 秘書さんと浅草デート:「桜なべ中江」、「浅草演芸ホール」 → さくら鍋
第6章 遠い時間、子供たちの未来
2 古希のお祝い、ケーキとローソクはなぜ7本? → バースデーケーキ
4 みどりバス、ピンクバス、お稲荷屋さんのバス停 → 稲荷ずし かんぴょう巻
第7章 この街と暮らす
2 天使の分け前 → ウイスキー
4 「やきとりTOP」:旦那は骨を折った、わたしは心が折れた → 焼き鳥


コメント