2日続けて、インタビューの依頼を受けた。PHP研究所の機関誌『「実践」理念経営LaboPHP』(4月15日)と『Japan Innovation Review』(JBPress、4月14日)からだった。どちら、ローソンのイノベーションに関わる取材だった。雑誌での発表は、どちらも2か月ほど先になる。
1 『[実践]理念経営Labo』
主な読者対象: 経営者、企業幹部・管理職、理念経営に関心のある方など
季刊(年4回発行)
*掲載号 2025年夏号(第14号、2025年7月27日発行予定)
テーマ 「ローソンが描くコンビニの未来(仮)」
(記事は4頁程度を予定)
2 『Japan Innovation Review』(https://jbpress.ismedia.jp/list/jir)
読者像:「変革リーダー」 (=経営層や変革を志すリーダー等)
変革にまつわる取り組みをテーマとした著書に関するインタビュー特集の企画
*掲載号(2025年7月?)
テーマ「拙著『ローソン』(PHP研究所) について
(インタビュー項目と事前の回答は、<参考>に記載されています。
事前資料なので、掲載紙の実際は実際の内容が異なることが予想されます。)
<参考>
以下は、事前にいただいていた質問項目です。(→)から後ろの部分は、わたしが事前に回答を送信していたテキストです(参考まで)。
1.今回、ローソンをテーマに選んだ背景には、どのような理由・出来事があったのでしょうか?
→ コンビニ業態のイノベーターとしての「ローソン竹増改革」を7年間に渡って観察してきた。ローソンの新しい動き(変革の実態)を一般読者に伝えたい。実は、ローソンの商品やサービスは、スイーツやキャンペーンなどで有名だが、会社がそうしたイノベーションを起こす社風を持っていることが知られていない。その実態を世間に知らせることが目的。そして、それは、なぜこの時期にこのような変革が起こったのかを伝えるため。
2.著書の冒頭では、2023 年度に史上最高の好決算となったローソンの大変革プロジェクトについて解説しています。元々は「実現不可能」と思われていた困難な目標であったにもかかわらず、2 年前倒 しで達成できた背景には、どのような要因があったのでしょうか?
⇒特に、コロナ禍における同社の戦略転換や、業績改善につながったポイントについて教えてください。
→ コロナ後の事業環境の変化(日本経済の回復)もあって、竹増社長がリードしてきた大変革実行委員会のプロジェクト(第1章参照)の成果が思ったより早く起こった。とりわけ、もともとローソンが持っていたポテンシャル(新浪社長、玉塚社長時代の遺産)が、このタイミングで一挙に花開いた。とりわけ重要だったのは、竹増社長がコロナの時期に、コンビニ業界の将来の方向性をいち早く察知できたこと。また、社外の提携組織(FCオーナーや無印良品、KDDIなど)との互いの事業の補完性に着目したこと。
3.著書では、同社の改革の中で打ち出された「ローソン・タウン」構想について触れています。なぜ、ローソンは街づくりの分野にまで事業領域を広げようとしているのでしょうか?
⇒日本社会においてローソンが果たそうとしている役割を教えてください。
→ (プレゼン資料参照) 「コンビニ3.0」(未来のコンビニの姿)で整理したように、近くて便利なサービスを提供してきたコンビニ(1.0~2.0)が、コロナ禍を境にして、その社会的な役割が変化する兆しを見せていた。そのことに、いち早く気が付いたのが、ローソンの竹増社長だった。
元々が地域(マチ)のハブとしての役割は、新浪社長時代のキャッチコピー(=マチのホットステーション)に原型があった。それが、稚内や和歌山など過疎地に出店したことを契機に、未来のコンビニの「理想の姿」が、地域の人々の生活全般を支えることが中心的な役割になることに気づいた(従来からの「便利な物売りの業態」からは変わっていく!)。
そうであれば、従来からあるコンビニの枠組みを超えて、地域の中心にいて、様々な提携組織(良品計画やKDDI、市役所・町役場などの公的組織など)をつなぐハブの役割を担うことが求められるだろう。そのコンセプトを表現したのが、「ローソン・タウン」の構想だった。それを実現するためにも、「コンビニ3.0」を実現するための課題を解決することが必要になる。
4.著書では 2023 年 8 月、ローソンが稚内市内に計 4 店舗(8 月に 3 店舗、11 月に 1 店舗)を開業し、オープンから 1 年経過後も推計値 5~6 割増しの日販を記録していることに触れています。同市内では全国展開のコンビニチェーンは出店していなかったとのことですが、ローソンが物流網や人員確保といった課題をクリアして盛況を続ける背景には、どのような成功要因があったのでしょうか?
→ ①組織を分権化することで、組織運営の機動力が高まったこと。そのために、先行的に北海道で実施されたエリアカンパニー制の導入。②従来から開発してきた複数業態(ナチュラルローソン、成城石井、提携先の良品計画)やサービス組織(ローソン銀行、ロッピー、KDDIのサービスなど)が、過疎地でのオペレーションに有利に働いた。それに加えて、③複数店舗を経営するオーナーさんたち(MO)との良好な関係性が、困難な出店を成功に導くことにつながった。さらに、大変革実行委員会で取り組んできた諸施策(冷凍品の開発、まちかど厨房、ドローン配送、アバターの採用など)は、未来のコンビニにとって大いにプラスに作用することが確認できた。
5.著書では、ローソンの良品計画との事業提携についても解説しています。競合のファミリーマートでは無印良品との提携が 2019 年に終了した一方で、ローソンでは提携を開始した 2019 年以降、導入地域を全国に広げ、2024 年にはローソン専用商品の販売も開始しました。ローソンと無印良品が 組みを加速させる背景には、どのような要因があるのでしょうか?
→ 両社の社長(リーダー)のトップダウンで始まったプロジェクトだったが、会社同士の相性が良かったことも事業提携が上手くいった要因だったと思う。どちらかと言えば、ファミマと無印は、セゾングループの傘の元にあったので、グループ企業として事業提携が始まった。
それに対して、ローソンにとって無印良品(商品とブランドイメージ)は、ふたつの意味で補完関係にあった。①ローソンが弱いMD(生活用品や雑貨などの分野)を補完する役割、②無印が好きな顧客がローソンに来店してくれる「集客効果」とその結果としての「客単価のアップ」の効果。なお、③三菱商事と無印良品の社風の近さ(第6章、元良品計画社長の松井忠三さんの発言を参照のこと)があったかもしれない。
6.著書の11 章では、2022 年にグリーンローソンで開始されたアバター接客について紹介しています。2024 年12 月時点では26 店舗で約 70 名がアバターオペレーターが接客をしているとのことですが、この取り組みは今後拡がりを見せると捉えていますか?
⇒アバター接客のメリット、今後拡大を目指す上での課題について教えてください。
→ 第11章、明確に答えが書いてあります(アバターは、機械的な冷たいサービスではないことが最も重要なポイント)。そして、zoomなどの遠隔会議のメリットと同様で、普通ならばマッチングできないアバタークルーと来店客が、サービスでつながることができたこと。なお、働き方改革(働く場所の提供)と同時に、従来のコンビニでは実現できなかったサービス(医療や見守り、公共サービスなど)が実現できるポテンシャルがアバターにはある。また、人的なコストの削減に寄与する。
7.全体の総括として、読者(企業のリーダー層)に本書のどのような点に着目してほしいか、メッセージをお願いします。
→ ①他社・競合の「物まね」ではない、独自なイノベーションを生み出す内省の時間(竹増改革のスタート時点)。②社内の人材の探し方とその後の「権限移譲のマネジメント」(任せるリーダー像)。③良い社風を活かして、社員やオーナーさんとの良好な関係性を築くリーダーの姿。④苦境にありながら、どんな組織でもより良い方向に変化しうるという革新の持ち方。⑤過去のリーダーたちが築いてきた社風や仕組みをイノベーションの原資としてどのように活かすかについての着想など。
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