【柴又日誌】#187:(続)初めての「実践的放水訓練」

 昨夜は、なかなか寝付けなかった。本日、東京消防庁・第7方面訓練所(@葛飾区奥戸)で、はじめての放水訓練があるからだった。朝7時に起き出して(目が覚めたのは5時半)、高砂1丁目のポンプ小屋に集合。可搬ポンプ車を5人で引いて、小屋から5分ほど先にある訓練所に到着した。


 <現場に向かう>
 葛飾区の本田消防署管内には、16個の分団がある。わたしたちの第11分団は、33名の団員から構成されている。今度の「実践的放水訓練」は、数年前から実施が休止していた訓練行事である。
 各分団から、分団長を入れて募集したのは4人だった。本日は、石川団長(メンバーから外れる)を入れて、5名で奥戸の第7方面訓練場に向かった。
 訓練場は、本田第11分団の ポンプ車庫から5分の所にある。訓練場のロケーションは葛飾区だが、東京消防庁が直接管轄している場所である。江戸時代の仕組みで、この場所は「幕府の直轄領」という感覚なのだろう。
 第7方面訓練所は、緊急の火災や水害に対応する特殊部隊の基地でもある。なので、わたしたちのような葛飾区の消防団(本田消防団と金町消防団)が訓練に使用しているだけでない。東京の東地区にある消防団が皆さんで共同使用している場所である。今度の放水訓練で初めてそのことを知った。

 <本日の訓練メニュー>
 本日の訓練プログラムは、わたしたちが現場に到着する直前に、石川分団長に指示で佐藤団員から明らかにされた。
 簡単に言うと、わたしたちは、午前の部に参加することになっていた。訓練は、①チェーンソーを使った樹木の切断訓練と、②実践的な放水訓練がその内容だった。おまけに、③安全管理手順というプログラムもあった。
 わたしは放水訓練の途中で熱中症状態になり、このプログラムからは除外してもらった。活動服を着た状態で、上からさらに防火服を身にまとい、防火帽にゴム手袋はかなりの重装備になる。
 本音を言えば、「気温32℃+」のこの時期に、「重装備の放水訓練の実施はいかがなものか?」とアンケートには答えようと思っている。サポートの女性団員たちも、わたしと同じように「熱中症ぎみ」になっている団員たちを介抱していて、「この時期はむりですよね。実施はせめて10月末からですかね」と合意してくださった。

 <チェーンソーを使う訓練>
 ところで、①(樹木の切断訓練)で、わたしは生まれて初めてチェーソー(電動のこぎり)を握ることになった。20年ほど前に、岐阜県の森林組合で山に入って、樹木伐採の現場に入ったことがある。そのときは現地の見学だったので、今回が自ら大きな樹木を根元部分から切断することははじめただった。
 チェーンソーの扱いは、案外とむずかしかった。というのは、マキタで電動回転刃(丸刃)でいつも旧宅の草刈りをしている。それに慣れているので、チェーンソーで板を切るのはむずかしくないとたかをくくっていた。ところが、チェーンソーのエンジンは、板への当て方が悪いとすぐに止まってしまう。
 最後に、プロの消防署員に解説してもらった。そこで、遅まきながらようやく使い方のコツが呑み込めた。わかったことは、回転刃で太い樹木(丸太)を切り落とす作業では、横方向にチェーンソーを動かしてはいけない。縦方向に、少しずつ角度をずらしながら、押して切断するのがポイントだった。わざとそうしたのだろう。最初から言ってほしかった!
 恥ずかしながら、わたしは、回転刃の当て方がまずかったので、3度もチェンそーのエンジンを止めてしまった。切り方のコツがわからなかったからで、ごめんなさいである。ほとんどの人は、のこぎりで慣れているやり方、つまり横方向に刃を動かして丸太を切断しようする。しかし、それではうまくチェーンソーでは板が切断できない。 
 ちなみに、この訓練はなんのためかというと、建物が倒壊した場合などで、家屋に人が閉じ込められたとき、室内への進入を阻んでいる樹木や板を切断するためである。脱出口を作るために、チェーンソーを使用するのだった。

 <放水訓練のプログラム>
 本日の訓練の目玉は、②実践的な放水訓練の方だった。わたしのように、放水の初心者(筒先から放水をした経験がない人)が半分。操法大会の選手(ベテラン)が半分に見えた。
 たしかに、初心者だけでは、以下のプロセスを連携しながら実施することは困難だろう。4人一組で実施する放水訓練は、以下の手順になる。
 (1)マンホールのふたを開けて、(2)マンホール下の水源を確保する。(3)2本のホースをつないで送水の準備をしたうえで、(4)可搬ポンプ車のエンジンを起動して、(5)送水したホースの先の筒先からモックの家屋(2階建)に放水する。手順を書けば、それだけのことである。
 わが11分団の4人で、プロフェショナルが2人(操法大会で1番員と指導員)、その他のふたり(わたしと荒谷さん)は「放水初心者」だった。 

 午前中は、10個の分団が参加して、2分団ずつ順番に放水訓練を実施することになった。9時半からスタートして、2チーム(1クール)で30分ずつ。9時半にスタートして、12時で全工程を終えた。
 なお、放水訓練をしていないチームは、①チェーンソーの使用法を覚える樹木切断訓練に参加することになっていた。また、どちらの練習(①と②)にも参加しないチームは、③安全管理の訓練と、ホースの後片付けの任務が与えられていた。そのため、最初からローテーションが組まれていた。
 ありがたいと思ったのは、①から③のために、本田消防署からプロの署員が、われわれの指導のために休日出勤をしてくれていたことだった。とはいえ、わたしたちも葛飾区に本拠を置く「マチの安全ボランディア」ではある。
 
 <放水訓練始まる>
 わたしたち11分団は、3番目に登場した。2番目の分団の様子を見て、自分たちの放水訓練に備えるためである。
 ところが、最初の組(9時半~)の放水でハプニングが起こった。筒先を持っている団員(一番員)が、放水の圧力が高すぎたために、跳ね飛ばされて倒れてしまったからだ。原因は、消防署員の方が、水圧を高く(通常の倍に)設定してしまったからだった。
 通常ならば、高い水圧で筒先を手から離してしまうと、ホースごと筒先が暴れてしまうことがある。場合によっては、周りで見ている団員のどこかに筒先が当たって、おおけがをすることもあるらしい。今回は、倒れた一番員の方が筒先を離さなかったので、大事には至らなかった。
 
 2番目のクールが終わって、わたしたち10時半から2チームに順番が回ってきた。各チームの持ち時間は約20分。
 先ほど手順を書いたように、(1)マンホールのふたを開けて、(2)マンホール下の水源を確保して、(3)2本のホースをつないで送水の準備をしたうえで、(4)可搬ポンプ車のエンジンを起動して、(5)送水したホースの先の筒先からモックの家屋(2階建)に放水する。手順を書けば、それだけのことである。
 ところが、(4)エンジンが起動しないまま、(5)送水ができなくなってしまった。ポンプ車のエンジンがオーバーヒートしてしまったからだった。わたしは、消防署の指導員の方ら、2番員の役目を割り当てられた。ポンプ車と放水を担当する筒先(一番員)とは、ホース2本分(約40メートル)ほど距離が離れている。
 周囲がうるさいのと、消火帽のヘルメットをかぶっているので、互いに声が聞こえない。そこで、わたしが伝達員(2番員)として、筒先をもっている1番員と、エンジンをコントロールしている団員の間で伝言をして歩くことになる。
 
 ところが、筒先を持った一番員(荒谷さん)に「放水始めます!」と連絡した直後に、ポンプのエンジンがオーバーヒートしてしまった。石川分団長が運営本部から呼び出しを受けた。協議の上で、隣で放水を始めていた第10分団から、水源を分けてもらうことになった。
 要するに、第10分団の可搬ポンプ車から、二つ目の蛇口を空けてもらい、水を分けてもらうことにしたのである。その伝言役も、わたしが担当することになった。二つ目のハプニングである。その様子を見ていたわたしの感想は、「火災現場では、きっとこんなことがよく起こっているのだろう」ということで納得した。
 10分団のポンプ車(分岐水源)にホースをつないでもらい、11分団でもようやく水が確保できた。最初は、荒谷さんが放水して、佐藤さんが補助員として荒谷さんの放水をサポートしていた。そこに、石川分団長が現れて、「小川さんに筒先を渡してください」と消防署の方に進言してくださった。

 おかげ様で、生まれてはじめて、消防団員として放水ができた。無事に、モックの2階建ての建物に向かって放水をした。サウナ状態で放水をしていたのだが、実に気持ちはよろしいのだ。
 石川分団長からアドバイスがあり、少しすり足で前に進んで、建物の2階にも放水した。少し残念だったのは、第10分団から水を分けてもらっていたので、わたしが期待して思ったよりは水圧が弱かったことである。
 それでも、新人の荒谷さんとわんすけ先生は、実践的な放水訓練を完了することができた。これから、荒谷さんとわたしの二人は、わたしたちを消防団に入団させた張本人「金井進一さん」の店(寿司ダイニングすすむ)に移動することになっている。
 先ほど、荒谷さんからLINEにメールが来た。「(かみさんを入れて)3人で、すすむさんを5時からで予約しました」(荒谷さん)。そうそう、晴れて正式に「本物の消防団員になった」ような気がする。 

 <編集後記>
 先ほど、ごく親しい友人の数人に、放水訓練の写真を送ってみた。
 4枚の写真(放水訓練と防火服、防火帽)と一緒に、「こんな感じです、大人の水遊びです、、、」とコメントをつけた。
 彼女からはすぐに返信が戻って来た。「これは一緒に一度はやってみたい感じですね」(M.E.さん)。わたしからの再度のお返事は、「熱中症にかかりそうになりました。というのは、こんな重装備(写真添付)で防災訓練と、チェーンソーで樹木を切断する訓練でしたからです。暑いのです」。
 「今日は暑いですから、サウナですね」(M.E.さん)

 そして、いまかみさんとかみさんの姉さんが、金町の介護施設にいるババちゃんのところ(訪問)から戻って来た。ふたりとも、この所で行った旅行の話(秋田と富山)で盛り上がっている。どちらも上機嫌である。
 わたしから、今日の放水訓練のことを説明した後で、「これって、大人の水遊びよね」とM.E.さんに書いたのと同じコメントをしてみた。すると、姉さんのほうからは、「消防だから、”火遊び”なんですけどね。でも、大人の”水遊び”という言い方は可愛いですね」。

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