友人、知人、親戚筋から、お中元のシーズンになると果物が届きます。ところが、その年によって送られてくるフルーツの品目が変わります。多いときには、りんごばかりとか、不在票を見ると桃ばかりが続くこともあります。なぜだろうと思っていたところ、青果の専門家から回答をいただきました。というわけで、今回のテーマは、「フルーツ談義」となりました。
「フルーツ談議:今年は桃の当たり年?」『北羽新報』2024年8月26日号
文・小川孔輔(法政大学名誉教授、JFMA会長)
この時期になると、全国各地の友人や知人、顧問先から果物が届きます。今年の夏は、たくさんの桃が届いています。糖度が増して、美味しくなったからだと思っています。
ある時から、その年によって届く「当たりのフルーツ」があることに気がつきました。2年前(2022年)は、今年と同じで桃の当たり年でした。5年前(2019年)は、りんごの当たり年でした。毎週のように、不在票が郵便受けに入っていたものです。とても食べ切れないので、親戚や近所に配って歩きました。りんごが豊作だったのかもしれません。
その年によって、お中元や暑中見舞いに採用される果物には、一般的な法則や傾向があるようです。個人的な経験では、夏の初めに数回連続して受け取った果物は、その年にギフトに採用されることが多いのです。
事実関係を知りたくて、元ゼミ生の専門家に尋ねてみました。2人はともに、大手食品スーパーの青果部長の経験者です。塩原淳男氏と木村芳夫氏。
わたしが二人に尋ねた「ギフト採用仮説」は、つぎのようなものでした。
<仮説1>:豊作だったので、価格が手ごろで収穫量も多かったから。
<仮説2>:美味しくできたので、農協や小売店がプロモーションに力を入れやすい。
専門家の回答は、わたしの仮説と部分的に一致していました。
2019年のりんごについては、「干ばつで小玉だったが、味と値段が良かった」(木村さん)。
「2年前にも桃がギフトとしてたくさん出回っていたのは、空梅雨で甘くできたということのようです」(木村さん)。専門家の指摘通り、豊作と販売動向は一致していました。
「果樹系は、その年により美味しさが変わってしまいます。そのため、日常店頭で販売している美味しさが、ギフト販売に大きく影響します」(塩原さん)。
果物は農産物です。収穫適期に美味しくなるかどうかは、事前に予測ができません。それでも、出荷時期の出来不出来(美味しさ)がギフト採用の根拠にはなるのでした。
「お値段ではないのです。送る人は、大切な人に感謝を込めて送る訳ですから、信用できる店を選びます。自分で食べて、納得した物を送りますよね」(塩原さん)。
ここまででわかったことは、専門家たちが指摘しているように、ギフト用は値段もさることながら、味が勝負だということです。したがって、どの果物が選ばれるかはその年の出来によることになります。さらに言えば、自分で味を確かめたうえで(お店や農園の推奨もあり)、贈る果物の種類を決めるということでした。
「ギフトは、収穫する何ヶ月も前に設計するので、その年の良し悪しは価格には反映されていません。信頼できる農園の最高の時期を選んで、最高の品質を指定します」(小売りバイヤーの立場から、塩原さん)。
果物の到着がお中元から少しずれるのは、先に食べてから美味しさをチェックしてから送るからです。となると、前もって種類を決めてしまうのはリスクが大きいということになります。
年によって、ギフトに採用されるフルーツの品目が変わることは、これで納得できました。
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