【柴又日誌】#175:うな重はハーフサイズで、アルコールはダブルで

 埼玉県三郷市の川魚料理店「根本」に行くようになってから、うな重を注文するときは「ハーフサイズ」が標準になった。ご飯の分量は同じだが、うなぎがひと切れのうな重のことである。根本では、これを「ハーフ」と呼んでいる。
 65歳を超えたあたりから、うな重のフルサイズ(2枚重ね、上)が食べ切れなくなってきた。特上(3枚重ね、二段重ね)などは、いまや夢のまた夢だ。マラソンでも、長い距離(フル、30K)を走り切ることが困難になってきている。年齢を重ねて、新陳代謝が悪くなったせいだろう。
 ちょうどそのころに下町に引っ越して、真っ黒な甘いたれの「うなぎの根本」を発見した。おかげで、それまで通っていた南千住の「尾花」や柴又帝釈天参道の「川千家」、江戸川の河川敷近くにあった老舗の「川甚」(2021年にコロナで閉店)には足しげく通わなくなった。
  
 わたし自身の食欲が半分になり、うなぎの根本のライトな「ハーフサイズ」がちょうどよくなったからでもある。それに対して、老舗のうな重のボリュームが、ヘビーになった。もはや、わたし自身を「うなぎ好き」と呼べなくなっているかもしれない。元気だった胃袋が、脂っこい食べ物を受けつけなくなったからだろう。
 最近の東北旅行(4月と5月)でも、外食で頼んだ料理を何度も残す経験をした。一般的に、東北人は大食漢が多い。提供される料理のボリュームが、都市部のレストランや居酒屋で注文するときの3割増しになって出てくる。
 そういえば、中国人が客人をもてなすときは、提供される料理の種類とボリュームはたくさんの方が良いとされる。中国人の価値基準では、宴席で食べ物を残すことを美徳とされるようだ。いまはわからないが、、、
 
 実際に、自宅で食する夕ご飯でも、少しの分量が食べ切れなくなってきている。
 参考までに、先月のブログでは、写真入りでフードロスの事例を紹介してある(【柴又日誌】#173:葛飾区で人気No.1の洋食屋さん、洋食工房ヒロ。 | 小川先生 のウェブサイト (kosuke-ogawa.com))。京成立石にある洋食屋「ヒロ」で、2種類のコロッケと直立しているエビフライを半分しか食べられなかったからだ。
 もりもりのキャベツと、その下にこっそりと隠れていたポテトサラダは、完全に残してしまった。望んでそうなったわけではないが、わたしは「フードロス王」になりかけている。決して褒められたことではないが、食欲低下の現実はきびしい。
 この話を、一緒に洋食屋「ヒロ」を訪問した連れ合いにしたところ、「確かにそうだわね」と同意された。しかし、その次に続く言葉が辛辣だった。

  「でも、(アルコールを)飲む量は倍になってるわね」。たしかに、そうなのだ。このごろは、以前に比べて、ビールの消費量が1缶から2缶になっている。3缶のこともある。冷蔵庫の中で、缶ビールの回転が速くなっていることは、わたしにも自覚がある。
 かつては、夏場を除くと、350mlのビールは1缶で終わっていた。しかし、この頃は、そのあとに追加のアルコールが続いていく。さらには、かみさんがキッチンの下に隠してあるベトナム産の米酒「ネプモイ」や、弟子たちが贈ってくれた「イチローズモルト」などをパントリーから取り出して、水割りやハイボールにしてしまう。
 そうなのだ。アルコールだけは、消費量が半分(ハーフ)になるどころか、「ダブル」になっているのだった。これは、やばい。友人で育種家の坂嵜潮さんにも、かみさんと同じことを指摘されたことを思い出した。
 「先生、昔に比べてアルコール、飲む量が増えましたね」(坂嵜さん)。

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