【取材依頼】「ハーフマラソンの魅力」について(日経新聞、藤田記者から)

 先週の末に、日本経済新聞社の藤田翔記者(生活情報ユニット運動グループ)から、オフィスわんに電話がかかってきた。日経新聞では2カ月に1度、ランニング特集を掲載している。マラソンランナーとして著名な吉田記者が登場するコーナーである。わたしもよく読んでいるので、特集記事の様子はだいだい知っていた。
 

 

 藤田記者からのメールには、「小川さんにハーフマラソンの『ランナー側としての魅力』や『おすすめのレース』などお話しを聞くことはできないでしょうか」という要望が記されていた。

 次回の特集は、11月29日掲載に予定されるらしい。原稿の締め切りが迫っているだろう。少々急いでいる様子だったが、インタビューは関西出張から戻ってからでお願いしておいた。

 今月のコラムのテーマは、「ハーフマラソンの魅力」である。同時に送られてきた質問には、事前にメールで答えておいた。記者さんの人柄がわかるメールだった。丁寧にも、過去のランニング特集の掲載紙面がPDFファイルで添付されていた。

 本日(11月6日)、神田小川町のオフィスで、70分ほどのインタビューを受けることなった。

 

 藤田記者から質問は、以下の4点だったので、これに順番に答えていった。 

 ①ランナーから見たハーフマラソンならではの魅力
 ②フルマラソンとの違い。レースの雰囲気や参加者の年齢層の違いなどは?
 ③ハーフマラソンが抱える課題などはあるか?
 ④小川さんが参加したことがある、おすすめのレース5選など。

 

 インタビューは無事に終わったが、わたしの専門は経営学である。とりわけマーケティングが専門領域である。一体全体どこで、わたしがランニングを趣味としていて、しかもハーフマラソンに特化しているランナーであることを知ったのだろうか?インタビューが終わっても、最後までその疑問は解けずじまいだった(笑)。

 とはいえ、本ブログや『月刊ランナーズ』の対談記事などで、学者さんでありながら「ハーフのスペシャリスト」を自任している。そこが、ネットの記事で引っかかったのだろうと思う。

 

 インタビューの内容は、いずれ11月の日経の特集記事で明らかになるだろう。ライティングと編集は藤田記者の作業になる。どこまでわたしのインタビューが記事で活かされかはわからない。この手のインタビューは、テレビの番組出演とよく似ている。そこで、4番目の質問(④)について、わたしからの答えをここで紹介しておきたい。

  参加したことがあるレースで、わたしが推奨するハーフマラソンの大会は、どのような「魅力ポイント」を重視するかによって異なる。そのことを明記した上で、3つにカテゴリーに分けて回答しておいた。

 

 <小川の一押しハーフマラソン大会> 

(1)走りやすさで選ぶと(フラットで、走りやすい季節の開催)
 ・一関国際ハーフ、・丸亀ハーフ、・神奈川ハーフ
 *この3つのレースでは、個人的にも、1時間40分前後の記録が出ている。

(2)眺望、風景などで選ぶと
 ・美瑛ヘルシーマラソン(丘が魅力)、・網走ハーフ(海辺を走る、現在はフルマラソン)

 ・佐賀さくらマラソン、桐生堀マラソン、高田銃マラソン(この3つは、ゴールが城跡の堀) 

(3)途中の交通手段の楽しみ(かなり個人的な鉄ちゃん趣味から)
 ・出雲くにびきマラソン(サンライズ出雲で夜行列車で参加)
 ・丸亀ハーフ(サンライズ瀬戸で夜行列車で参加)

 

 さて、どのようにインタビューは編集の上、活字になるのだろうか?

 月末を楽しみに待ちたいと思う。

 

 

 <参考記事>

 藤田記者に渡しておいた対談記事(ランナーズ・オンラインより)

 

<ランナーズonline>
RUNNERS ONLINE(対談)
金哲彦(ランニングコーチ)&小川孔輔(経営学者)「経済的視点で考えるハーフマラソン活性案」
2022年4月08日
 
ランナーズ5月号(発売中)ではハーフマラソンを特集しています。
コロナ前まで年間20以上のハーフに出場していた経営学者の小川孔輔教授(70歳)と、レースアドバイザーを務める金哲彦さん(58歳)がハーフマラソンを活性化するためのポイントを語り合いました。

 

大会のコンセプトを明確にすることが大切

小川: 私はハーフマラソンが大好きなので今日、お話しできるのを楽しみにしていました。金さんは様々なレースのアドバイザーを務めていらっしゃいますね。その中にはハーフも含まれていますか?

金: はい、たとえば2020年に日本記録(ヤクルトの小椋裕介選手が1時間0秒)が出た丸亀国際ハーフは、大会をリニューアルした2008年から携わっています。丸亀国際は元々エリートのみで開催されていたのですが、「市民参加型にする」という話が出たタイミングで、お声がけいただきました。それまでゲストとして大会に参加することはあったのですが、アドバイザーという形で、大会の中身を主催者の方々と一緒に考えるようになったのがこの頃です。

 

小川: どのようにエリートから市民参加型のレースにするかのアドバイスをしたわけですよね? 重責のように感じます。

金: いわゆるマーケティングですね。丸亀は近隣地域からどれくらいの時間で来られるのか?アクセスは?同日や近い時期はどんな大会が開催されているか?といったデータを調べた上で、どのような層に参加してもらうかのターゲットを定めました。制限時間を3時間に延ばし、ポスターやHPのビジュアルは「市民ランナーが参加ハードルの高さを感じない」けど「エリート選手が緩すぎる、という気持ちを抱かない」ことを考慮。あとは事前駐車券を配布したり、カーブが減るコースに変更したり……ランナー目線に立ったリニューアルを行ってきました。

小川: 日本でたくさんのエリート選手と市民ランナーが出場するハーフは、丸亀国際くらいしか思い浮かびません。

金: はい、ある年は『WR(世界記録)から3時間まで。トップアスリートと5000人のランナーが織りなすドラマへようこそ』という大会キャッチコピーをつけました。

 

小川: そもそも私がハーフを好きになったキッカケは初マラソン(ホノルル)で5時間30分かかって「まずはハーフをしっかり走ろう」と思ったことです。それから旅をかねて各地のハーフに出場するようになり、47都道府県のレースを走破しました。私は寝台列車など、いろいろな電車に乗って各地のレースに出ることを楽しんでいるので、ランナーズ読者の方々にはコロナが落ち着いたタイミングで「ハーフ出場の旅」をお勧めしたい。主催者にはそれに応える大会を作っていただきたいです。

金: フルマラソンは「記録を狙う」「歩かずに完走する」といった、ややストイックなメンタリティを持って取り組む人が多いですが、ハーフに関しては〝ウェルネス〟の延長と捉えた大会を作ってもよいのではないかと思っています。たとえば21.0975kmのコースで「リレー」ができたり、親子で走る部門があったり、レース後にBBQが楽しめたり。

 

小川: なるほど、それにはやはり大会のコンセプトを明確にすることが大切ですよね。

金: たとえば天童ラ・フランスマラソンは「ラ・フランス出荷量№1をPRする」という目的が明確なので、走る以外でどのようなサービスをつけるかが自ずと見えてきて、「ラ・フランス食べ放題」が名物です。

小川: 私が出場した中で印象深いのは、愛媛県の坊ちゃんランランランです。「前座」としてスタート前にマドンナと坊ちゃんの恰好をした二人が、参加者の前を駆け抜けていくのですが結局、地域が大会を通して何を訴えかけたいかではないでしょうか。

金: 長野県の小布施見にマラソンは坂が多くて走りにくい部分が多々あるのですが、「景色を見てもらう」ことを優先にしているので、「タイムが出やすい」ことは完全度外視。一律に「なるべく坂がない」「涼しい時期に開催」とするのではなく、目的を定めて、地域の文化にどうマラソンをインクルードしていくかがポイントだと考えています。

金哲彦
プロランニングコーチ。早稲田大学時代に箱根駅伝5区で活躍。現在はマラソンや駅伝のテレビ解説も務める。

小川孔輔
東京大学卒業、米カリフォルニア大学バークレー校客員研究員などを経て法政大学教授。著書に『青いりんごの物語~ロック・フィールドのサラダ革命~』など。

現在発売中のランナーズ5月号では、金さん小川さんが他にも新たな趣向の大会開催を提案しています。