【特別寄稿】拙稿「新型コロナ 業界の今後」『花き園芸新聞』(2021年8月15日、掲載)

 『花き園芸新聞』から「コロナ後の花業界」という寄稿文を依頼された。本来は、8月1日に掲載する予定で、すでに書き終えていた文章がった。ところが、他の寄稿者と時間的に合わず。8月15日の掲載はわたしの単独寄稿になった。新聞の一面に掲載されたようだ。初めてのことではないだろうか。

 

 最初は、メモ的な感想を送ってみた。その形式だと、読者が読みにくいだろうということで、最終的には文書での提出になった。新聞紙面は縦書きなので、少し印象が異なるかも知れない。質問文、回答の順に、編集部に提出した文書を、本ブログではそのまま掲載する。

 

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テーマ「新型コロナ 業界の今後」(改訂版、文章)

JFMA会長 小川孔輔(法政大学経営大学院 教授)

 

<質問>

Q1 新型コロナウイルスの花業界への影響

Q2 貴団体(JMFA)の対応

Q3 花業界の変化と組織(JFMA)としての今後の対応

  

<回答>

Q1 花き業界への影響

新型コロナウイルスがもたらした変化は、大きく分けると以下の4点だった。

① ブライダル、葬儀、宴会など、業務需要の低迷

② 輸入切り花の輸送困難、国内の物流費高騰

③ 日常生活での植物への興味関心が高まる

④ 家庭需要の顕在化(潜在市場が開花)

 

Q2 組織(JFMA)としての対応(会長としての個人的な活動も含む)

 JFMAとしては、短期的な取り組みと長期的な展望に基づく対応を行った。

① 最初の「緊急事態宣言」を乗り切るための対策(短期の対応)は、

・初年度(2020年)5月、「母の日」を「母の月」にするキャンペーンを企画した。

・農水省生産局の支援を受け、花の国日本協議会と共同でリモート会議を開催した。

・SNSを通して、「母の月」の浸透を図る一連のキャンペーンを展開することなった。

② 長期的な取り組みは、

・11月の花き展示会「フローラル・イノベーション」の開催に取り組んだ。

 コロナ禍だったので、展示会の中止も考えられた。それでも、プログラムとしては、

 農水省の支援を得て、出展企業、来場者が増えた。また、ホームユース用の花のコン

 テストを募集して、全国から91件の応募を集めた。

 最終的には、フローラル・イノベーションの会場にて入賞者を決定した。

・「フラワービジネス講座」のオンライン化に取り組み始めた。

 従来の教室での講義より、受講者が全国に広がり大幅に増加した(2~3倍)。

・「リモート会議」(MPSオンライン会議など)を通しての業界向けサービスを強化する

 ことになった。ズーム会議により、各回50人から120人の参加になっている。

  

Q3 業界の変化と今後の対応

 大きくは3つの変化とそれぞれへの組織対応を考えている。

① ホームユース需要の拡大により新市場(例えば、サブスクリプション)が誕生した。

 花業界としてこのことを踏まえて、つぎのような対応が必要になっていると考える。

・組織的な対応(JFMA)としては、日持ち性向上などの品質保証制度の定着、

・花業界一丸となってのプロモーション・キャンペーンの組織化の必要性。

② 花業界におけるSDGsの取り組みが本格化する

・MPS(とりわけ生産者認証)の普及拡大に努力することが求められている。

・日本からの切り花の輸出(とくに欧州向け)のために、今後はMPS認証が必須になる。

・そのことで、MPSの国内生産認証取得者を増やしていかなければならない。

③ 物流コストと働き方に関して、JFMAとしては、

・「ゲートウエイ構想」により、花の物流改革を計画実行することを支援する。

・本プロジェクトを通して、花業界の労働環境を変革することを目指すものとする。

 

 <掲載後の付記>

 以上、予見も含んでの回答だった。本文は7月末に書いたものである。その後、新型コロナの感染状況は、さらに厳しくなっている。ワクチン接種が進んでも、ウイルスを完璧に封じ込めるができるかどうかは未知の状態にある。

 多くの識者がそれぞれの見解を述べているが、どのような手段も決め手を欠いている。花業界も慎重に未来を設計する必要がある。花や植物にとって需要環境は悪くはないが、いかんせん経済全体が沈滞気味にある。