10月の読書感想文、優秀者3名(A++)をアップします。最初は、3年生の福島君です。桜井さんにはまだ、転送していませんが。学生は、そして、わたしも日本のアパレル産業の現状を知ることがなかったので、全然別の観点から、参考になった書籍であった。本日、小林ゆりさん(3年生)と水野志保さん(4年生)の感想文も追加しました。
タイトル:『日本のアパレル業界への不満』(福島崇宏)
私は、今回『ベーシックアパレル』を読んで、欧米諸国のアパレル業界が、日本よりもオシャレを楽しみやすい環境になっていることがわかった。ここでは、私が思う日本のアパレル業界への不満を述べたいと思う。
私は、洋服を買う時、服のサイズが大きいことがしばしばあり、その度に「もう少し小さいのがあればいいのに…」と思っていた。特に欧米製の洋服を買う時にサイズが大きいことがあったので、やはり欧米人は体が大きいから大きいサイズからしかないのかと思っていた。しかし、今回本書を読んでみると、欧米の方が日本より様々なサイズの服が用意されていることがわかり、驚いた。日本では、S・M・Lの3つくらいしかサイズがなく、酷い時にはM・Lの2サイズや1サイズのことがある。1サイズで販売している服を見た時、この洋服をちょうどよく着られるのはほんの少しの人間だけではないか、と憤りすら感じた。売れないから小さすぎるサイズや大きすぎるサイズを作らないのではなく、売れる個数を予測して作って売って欲しいと思った。それに対し欧米では、サイズだけではなく、体型別にもサイズが分かれているそうだ。これなら、どのような体型の人でもちょうどいいサイズの服が見つけられる。また、デザインが気に入ったけど、サイズが合わなくて着られないということもなくなる。私は、是非欧米のアパレル企業に、日本でも細かいサイズに分けて販売して欲しいと思った。また、日本のアパレル企業も、欧米のアパレル企業を参考にして、サイズを細かく分けて販売して欲しいと思う。私のように、サイズについて不満に思っている顧客はたくさんいると思うので、是非実現して頂きたい。
洋服を買う時に、不満に思っていることがもう一つある。それは、男の服の値段についてである。以前、女性のファッション誌を読んだ時、そこに載っている服の値段を見て大変驚いた。男性ファッション誌には載っているのを見たことのないような値段が書かれていたからだ。男の私でも聞いたことのあるような有名な女性ブランドの商品が、自分が思っていた値段より安かったのである。しかも、見た目は値段を感じさせないほど豪華で、男物で同じ物だったらもっと値段が高いのではないかと思う。私は今まで女性の洋服は男性よりも需要が高いから需要と供給のバランスで、同じ物でも女性物の方が安く作れるのかと、考えていた。
しかし本書を読んで、実は男性物でももっと安く作れるのではないかと思った。企業がもっと原価を下げられるように、原材料を安く仕入れて来たり、流通コストをもっと下げたり、在庫が出ないように売れる個数を予測するなどの努力をすれば、男性物でも、限りなく女性物と近い値段まで近づけることができるのではないかと思う。そうすれば、今まで高くて敬遠してきた人達も買うようになり、さらに安く作ることができる。男でも様々な洋服が買えるように日本のアパレル企業には努力してもらいたいと思った。
ここまで価格について、安く作って欲しいと書いてきたが、その気持ちとは裏腹に、あまり安い値段の洋服を着ていると恥ずかしいと思う自分も存在してしまっている。少し高い服を着ている時、高い服を着ているということで、自己満足を得ている時がある。服を買う時も、高い服を見るとこの値段の服なら着ていて恥ずかしくない、と考えている時がある。しかし、金銭的に高い服を購入するのはきついという、価格と主観的価値とのジレンマに陥っている。この状況を解決するには、女性のアパレルブランドやZARAのように、安くてもデザインが良くてブランド価値が高いブランドが男物にも出てきてもらうことである。値段が安くてもブランド価値が高くてたくさんの人着ているブランドなら、着ていて恥ずかしいと思うことはなくなる。是非、そのようなメンズアパレルブランドが出てくることを心から願っている。
私は、日本に来ている欧米人でオシャレな人を見かけた機会が少なかったため、欧米人は一部の人しかオシャレをしていないのだと、本書を読むまで思っていた。むしろ日本の方がオシャレな人は多いのではないかとすら思っていた。しかし本書を読んで、欧米では、若い人から年配の人までオシャレを楽しむ環境が成り立っていることを知り、新たな発見となった。是非、日本でも誰もがオシャレを楽しめる環境を作って欲しいと思う。
『ベーシックアパレル これからのチェーン化経営戦略』
(小林ゆり)
今回の課題図書「ベーシックアパレル」を受け取って、まず「早く読んでみたい!」と思った。それは他でもなく、私は「アパレル」という言葉に弱いからだ。ほとんどの若い女性が口を揃えて言うだろうが、私は洋服、靴、鞄・・・とにかくアパレルショップが大好きだ。一番の趣味が買い物と言っても過言ではない。この買い物という言葉にはウィンドウショッピングも含まれる。男性には理解し難いと思うが、買い物に出かけると、買うかどうかにかかわらず半日は軽く過ぎてしまう。こんな私にとって、この本は相当興味深いものであり、「なるほど!」「確かに!」「だからか!」と思える納得の連続だった。
しつこいが、私はファッション商品の買い物が大好きだ。ただ、買い物は本当に疲れる。半日歩きまわればもちろん疲れるのは当然だが、疲れは身体だけでなく、精神にも及ぶ。その原因は値段にある。欲しい流行の商品はもちろんのこと、着まわしに便利なベーシック商品も、とにかくアパレル商品は高い。私が買い物をするのはほぼセールの時だけだ。まさに本に書いてある通りだが、プロパーの値段では滅多に買わない。セールでないと買えないとも言えるかもしれない。プロパーの値段でトップスから靴まで揃えていたらいくらあってもお金が足りない。だから、買い物と言ってもほとんどはウィンドウショッピングだ。そしてこのウィンドウショッピングは本当に楽しい反面、実に疲れるのだ。かわいいもの見て「あのブーツと合わせたい」とか「この色とも合うな」とか妄想するのは大好きだ。しかし、欲しいものを目の前にして手に入れられない苦痛は大きい。
アパレル商品がもっと手ごろな価格に設定されていたら、本当にもっとファッションを楽しめると思う。私は着まわしに便利なベーシック商品はユニクロで買う。黒のシンプルなTシャツだってショップで買うと6,000円以上するし、なかなか見つからないのだ。本でも何度も指摘されているが、日本にはベーシックな商品を手軽で買える店が少ない。だから私みたいにセールまで買い物しない人が多いのだと思う。
ファッションを楽しむ上で、雑誌は私にとって大きな情報源だ。どんな靴が出ているのか、どんな組み合わせがかわいいのか、実際のコーディネートがたくさん載っているので妄想が膨らんで買い物に行きたいという衝動に駆られる。しかし、またもやまさに本の指摘どおり、紹介されている商品は現実味がないのだ。実際に載っているブランドでトータルコーディネートしていたらいくらかかるだろう。高額ブランドの商品ばかりが紹介されている。たまにユニクロの商品が紹介されていることもあるが、出ていてもほんの一部だ。だから若い女の子のしまむらの認知度は高くないだろうし、しまむらに行って買い物することが素敵だと思われないのだ。安いアパレルチェーンが少ない上に、それに関する情報源まで少ないため、若い女の子の会話はもっぱら「服欲しいけどお金ないよね」とか「セールまで我慢する~」という会話になってしまう。
雑誌といえば、日本の雑誌はまさに「ベーシックアパレル」で指摘されている“「年代別」を客に押し付けている”状況を表していると思う。アメリカの雑誌は洋服のタイプ別で分かれている。簡単に言えば、ゴージャス系、カジュアル系、大人系、ギャル系・・・のような区分の仕方である。それに対して、日本の雑誌はタイプ別に加え、年齢で区切られているのだ。ティーン向け、20~25向け、25~30向け、30歳代向け、40歳~と、あたかも年齢で服装が決まるかのように決められているのだ。そして、年齢が上に行くにつれカジュアルファッションはなくなり、自動的に搭載商品の値段が高くなる。これではまるで熟年層はカジュアルファッションをしてはいけないと言われているみたいだ。そして本にも述べられているように、熟年層向けのカジュアルファッションを提案する店や売り場は明らかに少ない。40歳~の雑誌を見ると、フォーマルな格好ばかりが紹介されている。しかし毎日ブラウスにマーメイドスカートをはいているわけではない。普段はみんな動きやすくて着心地のよい服を着るのだ。しかし、母を見ていても、そのような普段着を買ってくることが少ない。楽で着心地がよく、値段の安く、かつ魅力的なデザインの普段着を提供する店が本当に少ない証拠である。
テレビのニュースなどで見かける欧米の一般人を見ていると、GパンにTシャツというカジュアルな格好をしている熟年層は当たり前だ。しかし、日本では熟年層が満足いくようなTシャツはなかなか見つからない。一年前にハワイでいったOLD NAVYで買い物したときを思い出した。OLD NAVYはGAPの姉妹店なのだが、とにかく安くてファッショナブルな商品が幅広くそろっている。特にTシャツの品揃えには驚いた。日本のショップで購入すると7,000円以上しそうなかわいいデザインのTシャツが1,000円以内で手に入るのだ。デザインはシンプルなものからホットなものまでそろっている。しかもサイズがSS~3Lまで、日本では考えられない幅の広さだ。サイズもデザインも値段も整っていて、あれならば若者から熟年層まで誰もが満足行くカジュアルウェアを見つけられる。それに対して、アパレル情報を提供する雑誌までもが年齢によって区切って、さらに店では合うサイズが見つからない。日本は、熟年層がカジュアルな普段着を気軽に楽しめない状況にあるのだ。
また、OLD NAVYのようなアパレルチェーンのいいところは品揃えだけではない。いちいち従業員が接客しに来ないためにのんびり買い物できるところも魅了のひとつだと思う。日本の百貨店などに行って洋服を見ていると、必ずと行っていいほど従業員が話しかけてくる。“NO”といえない日本人にとってこれは購入から遠のく原因のひとつであると思う。“I’m just looking.”に相当するような日本語はなく、どうしても“結構です”とは言いにくい。そうすると“面倒だからもういいや”と離れてしまう。
日本も日本人に合う形式のアパレルチェーンを発展させて、気軽にファッションが楽しめる国になったらいいと思う。そうすれば、買い物をするときに欲しいのに高いから買えなかったり、いちいち値段と睨めっこしたり、と楽しい買い物で精神的に疲れることもなくなるだろう。買い物好きな私にとって心からの願いである。
『ベーシックアパレル』(水野 志保)
高品質高価格の企業を優良企業とし、安いものを売ろうとする企業が評価されにくいのは、今や時代遅れだと思う。私が友達と買い物をする時に購入する服は学校や遊びに着ていく服だ。そのため、日本の百貨店や専門ショップに置かれているほとんどの服は「着心地」よりも「外見」を優先して作られている。けれども、こういった「外見」を気にした服を「外出着」、アルバイトに行く時や地元にいる時に着る「着心地」に重点を置いた服を「普段着」と考えると、外出着を着ている時間よりも、普段着を着ている時間の方が長い気がする。学校に通っている私がそうなのだから、主婦をやっている母や祖母たちは、明らかに普段着を着ている時間の方が長いと思う。
また、「外見」を追求するアパレルには、その時代の流行が必ず影響する。しかし、「着心地」を追求するアパレルは機能が重要視されるため、流行はほとんど関係ないのではないだろうか。そう考えると「着心地」を追及する企業は、流行に左右されることなく、消費者の潜在的なニーズを掴むことができる気がする。本書でも言われているが、格差社会だからこそ一般大衆の生活習慣に目を向けることが大切だと思う。
「低価格でトータルコーディネートを楽しめる店はまだない」という著者の主張にとても共感できた。買い物をしていて、1品目ごとに何軒もの店を回った経験が私にもあるからだ。飾られているマネキンのトータルコーディネートを見たとしても、どうしてもトップス、スカート、バック、と単品ごとに買ってしまう。これは、「低価格の魅力あるコーディネートが実現できている店」に出会っていないからだと思う。「スカートだけならスカートだけ」と単品ごとに目が行ってしまい、それに合うトップスやバックは金銭的な理由から「他の店で探す」あるいは「次の機会に買う」ということになってしまう。
また、日本人は家を出る時から予め予算や買うものを決めて出かける場合が多い気がする。低価格でトータルコーディネートが実現するのならば、目的買いが少なくなり財布の紐もゆるくなるのかもしれないと思った。
日本の百貨店やスーパーストアは、フロアを分ける際に何を基準に分けるのがベストなのだろうか。現在の日本は「年齢別」に売り場が分けられているのが一番一般的である。
しかし、本書でも述べられている通り、「年齢相応なものを着ろ」と言っているようなものである。実際、私達の親の世代でも、娘と同じような格好をして街を歩きたい人は多くいると思う。また、逆に、高校生でも大学生やOLのように大人びた服装をしたい子も少なくないと思う。年齢別に分けてしまうことで、消費者が店に入りにくくなってしまい、商品を選ぶ幅を狭くしてしまっていると思う。
では、アメリカのように「体型の違い」や限定したTPOSで分けるのはどうであろうか。現代の日本人女性の間で「ダイエット」という言葉をよく耳にするように、自分の体型に対してコンプレックスを持っている人は多いと思う。「体型の違い」は社交的なアメリカだからこそできる分け方であり、日本人女性は体型で分けられることに抵抗を感じてしまう気がする。
TPOSで分けた場合はどうであろうか。フロア面積のことを考えると細かい分類はできないが、アメリカのGMSのように「普段着」「通勤着」「よそ行き着」と大分類されていれば分かりやすく売場に向かうことができ、人目を気にすることもなく買い物が楽しめると思う。
本書は、アメリカと日本の違いを多く取り上げている。アパレル業において日本はアメリカの経営を見習わなくてはならない部分が多いということを知った。しかし、日本人の特性を考えると、「アメリカで成功していることが必ずしも日本で成功する」とは一概には言えないと思う。売り出す商品や商品分類は、日本人の特性や生活習慣、消費者の買い物のしやすさを考えた上で行わなくてはならないので難しい。いずれにしても、「売る側の都合」ではなく、「消費者の立場」に立って考えることが必要不可欠であると思う。