【講演録】NOAF第1回定例セミナー 「ALGOA オーガニック・リーダー育成プログラム」参加報告(要旨)

 2016年7月、韓国・Goesan(槐山郡槐山郡)にて、オーガニック農業の発展を目的とする人材育成プログラム「第1回ALGOA オーガニック・リーダー育成プログラム(基礎編)」が開催され、世界各国からオーガニック関係者が集まった。日本からの参加者は、三人だった。

 オーガニックテキスタイル世界基準のGOTS、有機JAS認証機関のJONA、マイファームから派遣された女性3名。世界とりわけアジア各国のオーガニックの現状と、今後のオーガニック農業が目指す未来について活発な意見交換がなされた

 

 NOAFの第1回定例セミナーは、このALGOA プログラムへの参加者3名からの報告を核に、ワークショップを交えながら、日本の有機農業の未来について参加者と共に考える機会となった。セミナーには、生産者、就農希望者、流通業や外食産業などの実務者から行政担当者、学生、研究者、メディア関係者まで、幅広いバックグラウンドの人たちが集まった。

 

<お知らせ>

◎2016年11月12,13,14日(土~月)、木更津でALGOA オーガニック・リーダー育成研修会(基礎編)開催(主催:木更津市オーガニックシティプロジェクト推進協議会、共催:IFOAM ASIA(国際有機農業運動連盟アジア)。募集要項はブログ文末参照

 

 

NOAF(オーガニック・エコ農と食のネットワーク/Network for Organic-eco Agriculture and Food Lifestyle, Nippon) 定例セミナー(第1回)報告記録

「有機農業をあきらめたあなたへ~

日本の有機農業、世界のオーガニック~
ALGOA オーガニック・リーダー育成プログラム報告」

(事例発表・トークセッション)
参加型ワークショップ(「オーガニックとは」を考える)

日時:2016年9月27日13時15分~15時45分
場所:東京都千代田区市ヶ谷 法政大学経営大学院 301会議室
コーディネーター:次代の農と食をつくる会 木本 一花 さん
登壇者:GOTS(オーガニックテキスタイル世界基準)地域代表 三好 智子さん
NPO日本オーガニック&ナチュラルフーズ協会(JONA) 岡 敬子さん
株式会社マイファーム 久保 亜由美さん

《 報告要旨 》

1.世界の有機農業の沿革
GOTS(Global Organic Textile Standards:オーガニックテキスタイル世界基準)地域代表 三好 智子さん

(1) 自己紹介
私は今日、千葉県の木更津市から来た。木更津市は「オーガニックシティ宣言」を出していて、「生き方がオーガニック」と定義して、街づくりをプロジェクトとして進めている。
私自身は、JONAやIFOAMを経て、現在、GOTSというオーガニックテキスタイルの基準認証を担う団体で働いている。農産物だけではなく、テキスタイルも含め、広い意味でのオーガニックを広める仕事をしている。

(2) ALGOA オーガニック・リーダー育成プログラムの背景:IFOAMについて
① IFOAMとは
2016年7月に韓国で開かれたALGOA オーガニック・リーダー育成プログラムは、参加者20数名、アジア各国の政府関係者がメインだった。プログラムのバックグラウンドについて、説明する。

IFOAM(International Federation of Organic Agriculture Movements (国際有機農業運動連盟)は、オーガニックの国連のような組織で、世界で有機農業が採択されることを目指して活動している団体である。1972年設立、ドイツのボンに本部がある。ボンは、かつて西ドイツの首都だったため、国連ビルがあり、多くの環境系国際NGOが本部を置いている。IFOAMは、現在、100か国以上、800団体がメンバーになっている。個人でも参加できるが、正会員になれるのは団体のみである。企業の場合、事業の半分以上がオーガニックでなければ、正会員にはなれないなどの制約がある。

IFOAMという組織は、大きく3つの部門に分けられる。
最初がボンの本部で、IFOAMアカデミーという教育機関やプロジェクト機関、総務が置かれている。
次に、リージョナル・グループが来る。IFOAMジャパンやIFOAMフランスなどがある。EUグループは特に活動が盛んで、欧州連合へも発言権が強く存在感がある。IFOAMアジアというのもあるが、できては消えということを繰り返し、現在のIFOAMアジアは3代目にあたる。アジアは多様すぎて、団体としての継続が難しかったが、2013年以降、韓国中心に資金も人も付き、現在のIFOAMアジアはいい感じで機能している。
IFOAMにはその他、種子や農法など、課題ごとにグループができている。

② 有機農業の4つの原理
IFOAMは、有機の基準策定、確認方法、有機JASのような認証マークの表示に関わる活動を開発してきた。有機農産物がトレードされるようになると、国や国際機関が基準作りを始め、さまざまな基準ができ、議論になった。そこで、IFOAMは、「そもそもオーガニックとは何か」という原点に立ち返り、「有機農業の原理」を打ち出した(2005年 以下リンク参照(英文)http://www.ifoam.bio/en/organic-landmarks/principles-organic-agriculture)。

「有機農業の原理」には、健康、生態的、公正、配慮という4つの原理がある。
・「健康の原理」
健康であるという状態は、どういう状態か。病がない状態ではない。たとえ病があっても、回復する能力があること、それが健康である。虫も菌も病気もない状態が健康なのではない。菌があっても、きちんと育っていることが大事である。健康とは、生物システムの完全さを指す。
・「生態的原理」
有機農業は、生態系と循環に基づいた農業で、それらと共に働き、維持を助けるべきものである。
・「公正の原理」
共有環境と生存機会に関して、公正さを確かなものとする相互関係を構築すべきである。有機農業は、すべての関係者に良質な生活を提供し、貧困撲滅に貢献したり、動物が自然な行動と健全性の保てる条件を与えられなければならない。
・「配慮の原理」
有機農業は、現世代と次世代の健康・幸福・環境を守るため、予防的で責任ある方法で管理されるべきである。

③ ALGOA オーガニック・リーダー育成プログラムの趣旨
ALGOAとは、Asian Local Government for Organic Agricultureの略で、IFOAMが関与してプログラムの作成と運営を行っている。
実は、私は明日から、第2回ALGOAサミットに出席するため、木更津市長と一緒に韓国に行く(http://organicgovts.com/the-2nd-algoa-summit/ )。このサミットは、地方自治体のトップが集まり、一緒に有機を進めようという趣旨の集まりである。IFOAMは、対国連などを相手に、国際的あるいは国レベルで、政策に異議を申し立てたるような活動が多い。しかし、国は、政権が変われば政策も変わる。また、有機農業推進法のような法律が施行されても、国民レベルにその効果が浸透するには、時間がかかる。有機農業の推進が成功しており、パワフルなのは、むしろあまり規模の大きくない地方自治体においてである。
ALGOAは、そうした自治体を増やすことが大事という考えから、韓国、フィリピンと中国の代表者が集まって、去年(2015年)設立した。ALGOAの中で研修プログラムがあり、自治体間の情報交換の中で、ビジョン、ネットワーク、政策づくりのできる有機農業のリーダーを創ろうとしている。ALGOA研修プログラムでは、IFOAMアカデミーの研修内容を凝縮し、IFOAMの講師を韓国に呼び、アジア各国の政府やNGO関係者向けにトレーニングを行った。2016年7月のALGOAセミナーでは、日本から私たち3人が出席した。

(3) 世界の有機農業
ALGOA研修プログラムでは、世界とアジア各国のオーガニックの現状報告があった。内容は後ほど、岡さんと久保さんから報告があるが、それに先立って、私から補足的に、世界のオーガニックの状況について説明しておく。主な統計は、『The World of Organic Agriculture』(BioFach)から引用している(英文版は以下でダウンロード可能 http://www.organic-world.net/yearbook/yearbook-2016.html)。

① 有機農業者
有機農業者は、全世界で2,300万人いる。BioFachの統計は、基本的には認定取得有機農業者が対象で、有機認証を受けていない人たちは、含まれていない。有機農業者の地域別内分けは、アジア40%、アフリカ26%、ラテンアメリカ17%、欧州15%、オセアニアと北米がそれぞれ1%という割合になっている。圧倒的にアジアが多い。国別では、インド、ウガンダ、メキシコ、フィリピン、などが上位にある。有機農業では、女性や若者の比率が高い。

なお、オーガニック・コットンについては、テキスタイルExchangeでは、調査会社と一緒に統計を取っている。有機なら、慣行品と比べて、地球温暖化ガスは46%、肥料過多は26%削減でき、水の消費は90%減らせることができる。
オーガニックに求められている価値として、食べ物なら健康、環境、動物福祉などが来るが、コットンやテキスタイルでは、社会的ニーズが大きい。肌への影響などの要因は上位には来ない。ファッションを作るのに、誰かが苦しんでいないかということが重視される。
コットンやコーヒーではモノカルチャーになりがちだが、オーガニックに転換すれば、他の作物も作れる。また、90%以上は他で資材を買わずにコンポストで作ることができる。また、女性の参加率も高い。イスラム圏では外に働きに行けない。オーガニックをすることで、社会にフェアの精神が根付く。

② 有機農地
世界では、4億3,700万haが有機農法で耕されている。地域構成比では、アフリカでは3%、北米7%、アジア8%、ラテンアメリカ15%、ヨーロッパ27%、オセアニア40%となっている。有機農法の農地は、世界の全農地の1%にあたる。 耕作地が6割を占めるが、「ワイルド・ハーベスト」(自然採取)といって、山菜や野の葉っぱのように、耕作していないオーガニック農地もある。放牧地も大きい。
日本の場合、JAS有機の格付けを受けている農地は約1万haである。比較的有機比率の高いのはお茶で、3%くらいである。

③ 有機市場と消費者
世界の有機市場は800億ドル(8兆円超)。成長率は2桁台で推移している。成熟市場の英国のような国でも、宅配、ケータリングなどが成長している。
市場調査によると、オーガニックを買い続けているのは30代以下の「ジェネレーションY」と言われる若い人たちだ。オーガニックを広めるには、文化や考え方が大事だ。この人たちは、サステナブルなものが好きで、シングルあるいは、子供がまだ小さい。この世代は、自分が買うことによる社会に対する影響を、物そのものよりも優先する。彼らは、比較的教育や所得水準が高いが、あまりお金を持っていない人でも、納得すれば買う。また10年後には社会を動かす中枢を担っている世代である。

2.ALGOA
NPO日本オーガニック&ナチュラルフーズ協会(JONA) 岡 敬子 さん

(1) JONAの紹介
JONAは、国内外の有機認証業務を手掛けていて、農産物や化粧品、2015年からはレストランの有機認証も行っている。意識としては、認証団体というより、「有機農業を広げる」という気持ちが強い。有機を通じて、国内外の人々とつながる活動をしている。

(2) ALGOA オーガニック・リーダー育成プログラム
① 韓国・Goesan(槐山)という町
このたびのALGOAオーガニック・リーダー育成プログラムは、2016年7月3日から13日までの10日間、韓国のGoesan(槐山、クェサン)で開かれた。ソウルからバスで2時間くらいのところにある。本当に内陸の町で、日本でいえば、北関東に似た雰囲気と言えるだろうか。人口は約4万人である。この町は韓国の有機農業運動発祥の地で、有機関連の主な団体の拠点が集まっている。2007年にエコフレンドリー・カウンティ宣言、その後オーガニック町宣言を出し、2015年には、オーガニック・エクスポが開催され、24日間で100万人もの来場者を集めた。その時、第1回のALGOAサミットも開かれた。
オーガニックな町宣言による経済的効果も感じられる。周辺の工業団地も有機食品関連の加工施設が集積し、コチュジャンなどの調味料やジュース等を製造している。農地では、とうもろこし、じゃがいも、雑穀などの他、朝鮮人参もたくさん栽培されていた。町では、アジアのオーガニックの拠点となるべく、さまざまなイベントが開かれている。

② 研修内容と参加者
研修の内容は、座学、ワークショップ、参加者自身によるプレゼンテーションで、生産や流通の現場も訪問した。ALGOA研修のコアのターゲットの一つは自治体だが、今回は、日本から、自治体からの出席者はなかった。
10日間の研修には、インド、中国、キルギス、インドネシア、スリランカ、日本など、11か国から25人が参加した。

③ プログラム
・自分への問いかけ 「WHY なぜ自分がこれをするのか」
プログラムは、まず自分への問いかけから始まる。なぜ、自分がここにいるのか、誰に、あるいは何にインスパイアされて、オーガニックに関わったのか?自分が関わることの意味について、改めて問い直し、原点を確認する(編注:9月27日のセミナーも、ALGOA研修スタイルで、「有機農業に対して持つイメージ」について、各参加者が書き出し、班ごとに意見を交換し合うワークショップから始まった)。

・オーガニック1.0、2.0の展開
講義では、有機農業の歴史、定義、IFOAMが提唱する「4つの原理」など、有機農業に関わる多面的なコンセプトが紹介される。有機の農法、技術の事例や、「サステナビリティ・フラワー」(IFOAMの考案したコンセプトで、有機農業がサステナビリティの要素を包含していることを示した図)についても学んだ。IFOAMによれば、オーガニックは、パイオニアの時代である1.0の時代、基準や規制システムの生まれた1970年代以降の2.0の時代を経て、現在、ニッチからメインストリーㇺへ向かう3.0の時代に入っている(参考:IFOAM “ORGANIC 3.0-The Next Phase of Organic Phase of organic Development” http://www.ifoam.bio/en/organic-policy-guarantee/organic-30-next-phase-organic-development)。
こうした講義内容は、世界中の人が学ぶのと同じIFOAMのコンテンツが使われている。だが、ヨーロッパの本部の話だけではつまらない。ALGOAでは、アジアの実践者の話を聞く機会もあった。国や市町村レベルの関係者や、実際に長らく地元で有機農業を実践しているスピーカーの話を聞くことができた。

・ワークショップ ワークショップでは、「有機」についてイメージする言葉を、皆でどんどん上げていく。サステナブル、ファン、クリエーション、ライフ、ホリスティックなど、いろいろな言葉が出てきた。
続いて、自分たちで有機圃場をデザインしたり、マーケティング戦略立案を立てる課題に取り組む。参加者によるプレゼンの機会もある。こんなふうに、研修はインプットとアウトプットを繰り返しながら進められる。

(3) 韓国の有機農業
韓国の有機農業についても学んだ。韓国では、1970年代、独裁政権下で都市化・工業化の進行と並行して、農薬や化成肥料を大量に使用する農業が推進された。環境悪化や独裁政権に対する反発が絡み合いながら、有機農業が少しずつ広がっていった。
1993年には有機認証システムができた。1997年には、EFA(Environment-Friendly Agriculture)推進法が成立した。EFAは、有機や特別栽培のような環境に優しい農業全般を包含していたが、2016年からは減農薬は外され、無農薬または有機を推進することになった。EFAの中で、有機だけの統計はないが、おそらく全農業の1%程度だろうと言われている。
韓国はOECDの中でも、最も農薬を多用する国の1つである。2014年には新たにEFAを推進する法律ができ、2020年までに、EFAを全体の8%に伸ばす目標が設定されている。農家への直接支払いも行われている。輸出も促進していくようだ。
有機の国内市場は12億米ドルで、16.2%は給食分野だという。消費者の意識も向上している。

(4) 最後に
IFOAMの有機の原理を見ても、有機JAS制度の文書とは違い、創造性に富んでいることがわかっていただけると思う。自由に発想し、新しいことができる余地がある。
オーガニックではどこの国でも一般の人たちの理解を含めることが課題で、オーガニックを取り巻く「文化」のようなものを刺激していかなければいけない。IFOAMの文書には、未来の世代のために、今の人が資源を使い尽くしていいのか、という問いかけも含まれている。公正の概念は、世代間にも適用されなければいけない。
世界的には、オーガニックは最も進んだ農業と言われるようになっている。そういう意識をもって、ポジティブにとらえていきたい。日本では当たり前と思っていることが、アジアでは新鮮に映ることも多い。皆さんも、いろんな人と出会って、発表して、経験を共有していってほしい。

*11月に、ALGOAセミナーと同じ内容を、凝縮して木更津でも開く。IFOAMからサポートがあり、実費に近い費用で受けられるので、ぜひ参加してほしい(詳細は巻末の案内参照)。
(「木更津市オーガニックシティフェスティバル2016」2016年11月15日~17日
 http://www.city.kisarazu.lg.jp/14,0,58,475.html)

3.カントリーレポート
株式会社マイファーム 久保 亜由美さん

(1)「カントリーレポート」から
ALGOAプログラムでは、『Foundation Course Countries Report』という国ごとのレポートをまとめている。各国・地域の状況について、紹介したい。
研修プログラムには、アジア11か国から参加があった。アジアは広い。中央アジアからインド、日本まで包含され、経済状況も農業の形もそれぞれ違う。講義の中で、コンラッド先生が、アジアは有機農業に適しているという話をされた。一般的には、気候の点でも、意識の面でも、欧州の方が有機に向いていると考えられがちだが、アジアは農地が小さく、家族農業が多い。そういう条件を生かして、有機農業を進めていきたいということだった。

① 韓国
私は現在、マイファームのアグリ・イノベーション大学の事務局を担当している。すでに一定のキャリアを積んでいる多くの社会人が、転身して農業をしようと考えて、アグリ大学に学びに来ている。韓国でも同じ状況があるようだ。
韓国の有機農業については、先ほど岡さんからも説明があったが、環境汚染や公害問題から有機農業が生まれ、1970年代に、生産者と消費者が買い支えながら広がっていった。
韓国での有機の拡大には、生協が大きな役割を果たしているようだ。ハンサリムという韓国の生協は、2012年の会員数は34万世帯だったのが、2015年には50万世帯(人口2.5%)にまで急増しており、それに伴って、有機の生産者グループも増えている。
フクサリムという団体は、幅広く在来種の保存活動を展開している。科学的な農業を標榜して、ラボラトリーで残留農薬のチェックをしている。
以上2つの団体は、韓国の有機農業にとっては外せない団体のようだ。

② ブータン
ブータンからは、政府の方が2人参加されていた。国全体として、2020年までに完全オーガニック宣言を出している。国民の8割が農業に従事している国で、化学農薬、化学肥料を禁止する。輸出もめざしていくようだ。
ブータンだけでなく、インドやキルギスなど、アジアの多くの国が有機と輸出を結び付けて考えていた。日本のオーガニックの周辺では、なかなか輸出というキーワードは出てこないので、そこが新鮮だった。外貨獲得の手法としても、有望ということらしい。マーケットはほとんど欧米のようである。
共通の課題として、担当者が変わると、政策が変わってしまうという問題を抱えている。

③シッキム
インドのヒマラヤ地方にあるシッキム州は、州が完全オーガニックになっている。シッキム州では、2003年に化学肥料・農薬の使用を禁止して、2015年までに完全オーガニックシティにするという政策を進めていった。使用の禁止だけでなく、州内に持ち込ませない、物理的に使えないような状況を作り出しており、化学肥料や農薬は州境でストップがかかる。
シッキムでは、農家にとっては有機以外に「選択肢がない」ような状態に持っていき、有機転換を進めていった。小規模農家が多いので、有機農業はローコストで可能な農業ということで広まっていった。
オーガニック「宣言」から「政策」へという流れを打ち出しているところもおもしろい。シッキムからの参加者の話によると、宣言を出し、その後、政策を出していくことで、実行が深まっていったということだった。日本の状況を見ると、政策がバリバリ出ている状況ではない。こうしてシッキムでは、オーガニック政策を進めるなかで、ムーブメントが生まれ、市民が動き始めた。それが成功の理由とされている。

④ スリランカ
スリランカからは、NGOの人の発表があった。スリランカの有機農業は、他国よりやや遅れて、1980年代に始まった。緑の革命へのリアクションとして出てきて、NGOによって進められたようだ。それまでは近代農業推進だった。
2008年には、企業(teaプランテーションなど)が有機農業化を進め、スモールファーマーズ組合も生まれた。
スリランカでは、慢性糖尿腎臓病が成人病として広がっているという。化学肥料の使い過ぎではないかという研究結果がある。言語障害も健康問題になっている。こうした国の問題を解決する手段の一つとして、有機農業が注目され、オーガニックが国策になっている。
お茶、スパイス、オイル、ドライフルーツなどは輸出もしている。第三者認証の他、ローカルマーケットでは、参加型認証のPGSも導入されている。

⑤ キルギス
キルギスは、中央アジアの内陸国である。農業資材にアクセスすることがあまりない状態で、有機をやっているということのようだ。

(2) 感想
いろいろな国が、それぞれの状況、歴史、文化の中で、政府やNGOの人などが活動して、有機を広げようとしている。地方自治体が地域と一緒になって進めたり、国レベルで取り組んだりしており、オーガニックの普及にはさまざまな可能性があることがわかった。
個人的には、有機農業というと、農産物と結びつけて「付加価値」というイメージを持っていた。しかし、ALGOAの研修を受けて、有機では、農産物だけでなく、生態系や地域での循環が大切だということを学んだ。
私自身は、農業に関わるようになって3年目で、特に有機だけやってきたわけではないが、これからもっと有機農業のことを学んで、自分たちでできる活動をしていきたい。


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~参加者募集~
ALGOA Training Foundation Course
オーガニック・リーダー育成研修会 基礎編

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有機農業とは?仕事に活かしたいけれどもイマイチ理解しにくい。
オーガニックに興味があるけど学ぶ機会がなかった。
長くオーガニックに関わっているが別の角度から考えてみたい。。。そんなニーズにお応えする研修会です。
IFOAMアカデミー講師によるレクチャーと参加型ワークショップで有機農業を様々な角度から学べる3日間集中コースです。農業者だけではなく、行政関係者、有機農産物流通関係者、NPO、検査認証関係者の方にも実践的な情報を学べる機会となるよう企画しております。
ALGOAとは…Asian Local Government for Organic Agriculture (アジア有機農業推進自治体ネットワーク)IFOAM Asiaのプロジェクトとして立ち上がった有機農業を推進するアジア各国の自治体ネットワーク
※IFOAM=国際有機農業運動連盟 http://www.ifoam.bio 
 ドイツ・ボンに本部を置く国際NGO。世界で有機農業の普及啓発に尽力している。

●この研修会で学べること
・有機農業の歴史と背景
・有機農業の原理原則について
・バリューチェーン、価値の流通
・オーガニックムーブメントとネットワーク
・オーガニック基準と多様な認証のあり方
・有機農業推進の政策とサポート

●講師
Konrad Hauptfleisch氏
IFOAM アカデミーマネージャー。Organic Leader’s Course専任講師。南アフリカ出身。世界各国を飛び回り、世界中でオーガニック・リーダーを養成している。

●開催概要
日時:2016年11月12,13,14日(土~月) 9:00~17:00(初日は10時から)
参加費:29,000円(2泊7食付き)
※宿泊が必要ない方は要相談。減額させていただきます。
場所:きさらづみらいラボ(木更津市市民活動支援センター)
木更津市中央一丁目1番6号 両総通運ビル内きさらづみらいラボ http://k-mirailabo.com 
主催:木更津市オーガニックシティプロジェクト推進協議会
共催:IFOAM ASIA(国際有機農業運動連盟アジア)
後援:木更津市(予定)

>>お申し込み・お問い合わせ<< 
 申し込みフォーム 
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 携帯からは
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